北大路機関

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【くらま】日本DDH物語 《第四七回》日米対潜特別演習&環太平洋合同演習リムパック参加

2018-09-22 20:12:15 | 先端軍事テクノロジー
■実任務環境再現し能力評価
 ヘリコプター搭載護衛艦、そのシステムが確立されるまではやはり時間を要しました。

 ヘリコプター搭載護衛艦はるな、はるな型護衛艦は2隻が量産されました。海上自衛隊は、しかし当時対潜ヘリコプターの能力について、完全な共通理念があったわけではなく、中にはヘリコプター搭載護衛艦の能力に懐疑的な一派もいました。もっとも一枚岩ではなく、本格的な対潜空母でなければ能力的に十分発揮は出来ないだろうという視点もあります。

 はるな型の3機のヘリコプターを搭載するのみでは不十分と考える故の懐疑、逆にP2V対潜哨戒機とともに米海軍での運用が開始されたP-3哨戒機のような進出速度と航続距離の大きな対潜哨戒機を重視するべき、という一派、視点は様々でした。一方、外洋作戦を重視する必要性を考える保守層政治家、小型艦のみで充分とする内局、視点は様々でした。

 HSS-2対潜ヘリコプターを揺れる洋上で確実に整備できるのか、4700t型護衛艦として建造され、当時の海上自衛隊では破格の大きさであった護衛艦ですが、同時に当時は第二次大戦型巡洋艦が各国では現役であり、4700tという大きさは各国の巡洋艦と比較した場合にかならずしも巨艦の定義を満たすものではありません。もっとも戦後巡洋艦は稀有ですが。

 洋上対潜哨戒能力については、しかし、陸上航空基地から運用されたHSS-2が対潜哨戒機には搭載出来ないソナーを直接展開できる利点があり、当初案は過小評価であると運用を通じて認識されてゆくのですが。その上でヘリコプター搭載護衛艦の評価を保留し、その運用実績をみてゆこう、という潮流が、妥協といえばそうですが、主流となってゆきます。

 はるな、ひえい、は日米対潜特別演習へ参加、はるな艦載機が偶然にも吊下ソナーを展開した真下に仮設敵原子力潜水艦が展開しており、即座に探知できた、という幸先のよい大規模演習参加となりました。環太平洋合同演習リムパックへ順次はるな、ひえい、も参加、しかしアメリカ海軍の最新鋭原子力巡洋艦をはじめ多くの新鋭水上戦闘艦とともに行動した場合、実際はどうであったか。

 リムパックという非常に優れた演習環境において実戦状況を再現し評価を行った結果、アメリカより早速指摘されたのは静粛性という部分でした。静粛性、潜水艦では水中放音の低減の多寡がそのまま生存性能に直結することは認識されていましたが、既にアメリカ海軍や欧州NATO海軍では水上戦闘艦にも水中放音の低減が設計に盛り込まれていました。

 パッシヴオペレーション、現在では聞きなれないといいますか完全に普及していますので敢えて強調されなくなった、テレビにカラーテレビと明示されない点と似ていますが、このパッシヴオペレーションへの移行でも最新鋭の護衛艦はるな型は後れをとっており、アクティブソナーを常時発振し潜水艦を捜索する方法、時代遅れは過言ですが最新ではない。

 第一に水中放音静粛化への設計、第二にアクティヴソナーを発信し積極的に潜水艦を探すアクティヴオペレーション運用の陳腐化、アメリカ海軍から海上自衛隊護衛艦が空母付近に展開した場合、パッシヴオペレーション展開に支障を来す為、別海域を割り当てられるなど、幸先いいHSS-2潜水艦発見という鏑矢とは裏腹に厳しい技術差が突きつけられます。

 ひえい、を旗艦とするリムパック派遣、技術的には最新鋭ではないと知らされつつ、それを実戦で思い知るのではなく改善事項として提示された事は僥倖といい得ました。そのうえで、ひえい、はるな、非常にスマートな艦容でハンサムな最新鋭艦、という点では米海軍を含め一致した評価とのこと。海上自衛隊はその外見に見合った性能へ改善を急ぎます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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