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【京都幕間旅情】城南宮,梅林は開戦の地-承久の乱勃発の地は二重権力の統一へ向けての現代日本への原点

2023-03-29 20:22:44 | 写真
■梅園の当地に歴史あり
 カメラのホワイトバランスを変えていないのにさっとく尾の中から太陽が光さし情景を一変させる事があり、これが曇天の日の撮影の醍醐味か。

 平安朝末期の時代には有名な治承三年の政変、これにより後白河法皇が平清盛によりここに幽閉され、院政を停止するという一幕はありましたが、やがて鎌倉時代が到来します。歴史的に見て不思議なのは鎌倉幕府、東国武士は瀬戸内など西国に興味を示さなかったこと。

 西園寺氏、藤原家の傍流ですが、そもそも平清盛が栄華を誇ったのは西国の瀬戸内海賊討伐を経て瀬戸内海の制海権を握り海上交易航路を一手に掌握したことにありました、ここを抑えれば得られる巨万の富を以て、福原京造営や関門開発など一気に推し進めている。

 海上交易航路を、鎌倉時代に掌握したのは源氏かと問われますと、鎌倉幕府は一応形式的な掌握は行うものの実益は全て西園寺氏が掌握することとなり、そこにより得られた莫大な富はそのまま宮中行事などの費用として拠出、貴族政治を強力に支える事となった。

 東西では、一応征夷大将軍の襲名を続けていたものの、鎌倉幕府そのものは執権政治による二重権力状態となり、これはいわば今の価値観で知る征夷大将軍、暴れん坊将軍や水戸黄門で無意識下に刷り込まれている価値観、その征夷大将軍とは全く性質が異なるのです。

 承久の乱は、自らは院と朝とに分かれる二重権力状態ではあったのですが、鎌倉幕府が源頼朝の没後、源頼家と源実朝と相次ぐ将軍暗殺による北条氏執権による二重権力状態が醸成されることでの御家人の二重権力状態を突き、院が支配回復を目指したものでした。

 戦闘の経過は、これは墨俣木曽川の戦いや砺波の戦いなど興味深いのですが、動員計画の不得手と指揮系統の不明瞭、恰も関ケ原の戦いの西軍の様な不手際を先取りする形、上皇は敗北しています。ただ、これにより日本社会と統治機構は確かな変容が生まれたのです。

 城南宮、ここは王城鎮護の裏鬼門を守る社殿という平安遷都の頃の造営を経て、鳥羽離宮造営とともに院政が始まりますと離宮鎮守社へ変容し、ここで後鳥羽上皇が開いた流鏑馬揃えの神事、実は当時の鎌倉幕府打倒に向けた兵力集中の一環となり歴史の表舞台へ。

 承久の乱勃発の地、歴史的な転換点となりました遺構です。その戦闘経過は、別の機会などで詳しく議論したいところですが、京都と鎌倉の二つの王都という日本史の分岐点、この戦闘の敗戦処理により一つとなった、という点は実は今のニッポンを形作ったといえる。

 西園寺公経、佐幕派の公家でありました西園寺公経は承久の乱勃発とともに後鳥羽上皇の捕虜となりましたが、逆にこの行動そのものが全く騒乱に無関係であったことを立証、幕府の指示により内大臣へ、西園寺家の朝廷における権力基盤を固めることとなりました。

 後鳥羽上皇に付き従った一条信能、葉室光親、源有雅、葉室宗行、高倉範茂、そうそうたる公家たちはそのまま鎌倉へ送られ、途上で粛清されました。後鳥羽上皇は隠岐の島へ配流となり、しかし朝廷権威は鎌倉幕府に尊重され、今に至る分権体制の下地の一つとなる。

 六波羅探題が幕府により新設され、鎌倉による京都の監視という結果的な行政の一本化が執り行われ、そして名実ともに院政は終焉を迎えます。逆に二重権力と思われた鎌倉幕府の執権と将軍の権力基盤は北条政子による号令とともに一本化、すっきりまとまります。

 権威の朝廷と実権の幕府、海外の理解ではキリスト教民主主義とローマ教皇の制度やスルタンカリフ制のような理解もあるようですが、どことも異なる日本の制度は院政の二重権力のもとで幕府が開かれ機能不随が見えていました、ここに筋が通ったという訳です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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