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【日曜特集】小牧基地オープンベース2019【12】小牧で!ブルーインパルス飛行展示開始(2019-11-09)

2023-09-17 20:17:42 | 航空自衛隊 装備名鑑
■ブルーインパルス!
 ブルーインパルス、小牧基地で飛行展示をみられるようになったのはこの2019年が久しぶりであったように記憶します、国際航空宇宙展に合わせた展示飛行など合間の飛行展示等を経て小牧で展示できるようになりました。

 小牧基地航空祭はブルーインパルス飛行展示という航空祭飛行展示大団円を迎える事となりました。ブルーインパルス、航空自衛隊の看板部隊です。このブルーインパルス、実は小牧基地航空祭と非常に相性が悪く、具体的には市民運動の目の敵にされていました。

 ブルーインパルスは過去、具体的な事故などは小牧基地では発生しておらず、航空機事故が問題というのであれば1994年の中華航空墜落事故などから民航機の乗入れに反対して自衛隊専用飛行場化を主張した方が理に叶うとも思うのですが当然そんな動きはありません。

 松島基地第4航空団のブルーインパルスは元々、浜松基地での戦技研究班として発足した経緯があり、当時運用されていましたのはF-86戦闘機、あの源田実空将が在任していた当時ですので、多分に戦技研究よりは広報というものに重点を置いてはいたものでしょう。

 戦技研究という視点は、ただしかし確かにF-86戦闘機という、索敵レーダーさえ搭載していない朝鮮戦争時代の亜音速航空機を戦闘機として、1960年代以降も運用するにあたって、果たして旧型機をどのように第一線で運用させるかは研究の余地があったところです。

 F-86は、もちろん鳴海章氏の小説“ファイナルゼロ”のような工夫次第でSu-27戦闘機がいてでもなんとかなる、という甘いものではないのですが、1973年の第四次中東戦争などではエジプト空軍がMiG-17を対地攻撃に活用、少なくない戦果を挙げている事も確か。

 F-1支援戦闘機が開発されるまでは航空自衛隊もF-86戦闘機を支援戦闘機に、近接航空支援に充てるという様な意味合いもあるのでしょうが、文字通りF-86はF-104戦闘機の時代には支援任務にしか使えないという意味合いを含めて、第二線ではなく第一線で使った。

 ASM-1空対艦ミサイルなんてものは搭載出来ませんので、500ポンド爆弾を反跳爆撃という、アメリカ陸軍航空隊が1943年のダンピール海峡海戦において用いた方式を航空自衛隊は踏襲していました。驚くべき事ですが、1970年代までこれでソ連太平洋艦隊に備えた。

 支援戦闘機を十全に活用するには戦技研究が必要だ、理解できる。しかしそこまでやるのならばアメリカからA-4攻撃機でも買えよお、攻撃機は憲法違反と反論があるかもしれないがズーニーロケットでMiG-17を叩き落とした事もある正真正銘の戦闘機だぜ、と思う。

 T-2練習機にブルーインパルス運用機は後に代わりますが、T-2練習機は文字通り有事の際には補助戦闘機的に運用される計画があり、96機量産された機体の内後期型はサイドワインダー空対空ミサイルを搭載可能、レーダーと20mm機関砲も搭載はしていましたほど。

 アグレッサー部隊にもT-2練習機は配備されていましたから、いや戦技研究とはいえ航空戦闘は防空管制と連携し視程外空対空ミサイルの投射と戦闘機稼働率や補給体系が勝負を左右する時代、戦技研究と言い張るのは無理があるのではないの、と反論は成り立つ時代に。

 広報重視であったのは否めないなあ、と思いつつ、しかし広報の重要性は理解できるのです。具体的には、国産航空機の水準を世界に示すとともに操縦技術という、いわば目に見える形の練度を誇示する事は義務教育に軍事学を置かない日本としては先ず重要といえる。

 レッドアローズ、西武鉄道の特急電車ではなくイギリスのアクロバットチームの名前です。識者、いや揚げ足取りが多い場合はシキシャか軍事ヒョーロン家というべきか、中にはイギリスのレッドアローズを比較対象として、自衛隊の運用は無駄が有ると指摘する方も。

 ホーク練習機を用いるレッドアローズはホーク練習機が元々軽攻撃機として転用可能であり、レッドアローズも有事の際には48時間以内の爆装した軽攻撃機部隊として転換可能であることを条件に平時にアクロバット飛行部隊として運用しているのだ、というところ。

 トーネード攻撃機など、しかしホークは攻撃機に転用可能であるし実戦部隊に転換できるようにという条件が有ることは理解するのだけれども、イギリスにはもう少し高性能の攻撃機が配備されている訳で、有事の際に練習機を爆装する事は有得るのか、と逆に思う。

 ジャギュア攻撃機も2000年代まで配備されていましたが、トーネードやジャギュアが歯が立たない目標に対してホークを投入する状況が現実に在り得たのかと考えれば、これはイギリスにおいても“建前と本音”というものでレッドアローズを説明したのではないか。

 T-4練習機、ブルーインパルスをじつはわたしは一度だけ、家族に聞けば二度見ている筈なのですが、T-2練習機時代のブルーインパルスを知っています。ただ、超音速のT-2から亜音速のT-4練習機となり、T-4は練習専用機であるとともにアグレッサー任務にも就かない。

 広報専任部隊、という位置づけは確たるものになったのだと思う。一昔、北大路機関草創期にはT-4練習機の軽攻撃機型を開発するべき、と記載したことはありました。無論思われる方もいるでしょう、イギリスのホーク練習機の攻撃機への視点とどこが違うのか、と。

 欧州地域での戦闘が国家の防衛戦略の中心にあったイギリスと、専守防衛により国土での本土決戦主義を2022年まで堅持してきた日本とは条件が異なり、イギリスのホーク練習機行動半径では戦闘は起きないが、日本の場合は相手がT-4行動半径内まで来る点が、異なる。

 亜音速機ですので、近接航空支援を行うには超音速性能は必ずしも必要ではなく、しかも戦闘機よりも軽量で短い滑走路から運用出来る点は本土決戦しか選択肢の無い憲法を国民世論が支持する状況では有用と云い得た。もっとも軽攻撃機型は開発されなかったが。

 JDAM精密誘導爆弾はじめ誘導爆弾全盛となった2010年代以降では、しかしこの軽攻撃機という視点は過去のものとなりました、特に日本有事と成ればSu-27戦闘機水準の機体が確実に待ち受ける戦場へT-4練習機を爆装させ投入したとしても任務遂行は出来ません。

 ウクライナでさえ、アメリカや欧州にF-16戦闘機やJAS-39戦闘機などの供与を求めているのですが、より簡単に操縦でき爆弾を搭載出来るホーク100攻撃機やアルファジェット軽攻撃機、スーパーツカノ対地攻撃機などの供与を求めていない事が全てを物語ります。

 しかし、広報という視点では重要なのですね。そしてなによりT-4練習機そのものの重要性を示している。日本の場合、戦闘機はあるが操縦士がいないので飛ばせない、というNATOでも散見される問題は生じていません、充分な操縦士を航空自衛隊が確保出来ているのだ。

 ウイングマークを有する操縦士は年次技量維持飛行時間を飛行しなければウイングマークを維持できません、そして航空自衛隊は旧陸海軍の反省から操縦士を司令部業務や幕僚業務に充てる事で現場の意見を反映させており、ウイングマーク維持という問題を有します。

 充分な数の戦闘機が有れば良い、と反論されるかもしれませんが定数外の戦闘機をあまり多数持つ事は逆に即応体制を低くします。こうした意味で重要性があるとともに、そしてやはり、広報効果というものの大きさが率直に評価されているのだろうなあ、と思うのだ。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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