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陸上防衛作戦部隊論(第四〇回):装甲機動旅団編制案の概要 後方支援部隊への視座

2015-12-10 21:33:22 | 防衛・安全保障
■装甲機動旅団後方支援部隊
 装甲機動旅団特集は今回で第四〇回を数える事となりましたが、いよいよ最後の要点、後方支援についてその私案を議論する事とします。

 今回から数回に分けて装甲機動旅団の後方支援部隊について、近接戦闘部隊と長距離戦闘部隊や戦闘支援部隊について記載してきましたが、後方支援部隊です。装甲機動旅団は限られた戦車を集中運用する旅団ですが、もともと新防衛大綱での戦車定数削減を受けての戦車をもつ旅団と持たない旅団を分けるという苦肉の策の産物ですので、その装備する戦車はかつての乙師団戦車大隊よりも戦車が少なく、その分、一両と云えど失えないという事情と近接戦闘部隊の損耗に曝される矛盾を両立させねばなりません。

 広域師団は装甲機動旅団と航空機動旅団の二個旅団を基幹として編成する、としましたが、その上で後方支援部隊については旅団が主力を構成し、師団は指揮に重点をおく編成としました、このため後方支援の主力はあくまで旅団が独自に展開しなければなりません、これは、機動旅団が航空機動と装甲機動の進出速度が根本的に異なる点に起因するもので、一方の旅団と一方の旅団、二つは相互に協同するものではあっても、即応性と展開能力が異なる事はこれまでに記した通り。

 故に師団に後方支援を依存した場合にはその機動性に影響が及びかねません、故に旅団は独立した能力を持たなければならないのです。そこで、装甲機動旅団については後方支援部隊を後方支援連隊とし、航空機動旅団は後方支援隊を置く。後方支援隊ではなく後方支援連隊としたのは、装軌車が多く、また航空部隊は航空機を運用する性格上、野整備隊の拠点を大きく動かす必要はありません。しかしながら機械化部隊は別です。

 戦車部隊を含む装甲機動旅団については骨幹戦力にあたる機械化大隊は機動をもって防御力の要諦を為すため、頻繁に段列が機動する必要があります、すると全般支援大隊をおくとともに随伴する直接支援中隊、普通科と特科と機甲科の直接支援部隊を統合した場合混成支援大隊規模の支援部隊が欠かせず、結果的に後方支援部隊は連隊規模となってしまうのです。旅団、装甲機動旅団の最大の課題は大量に装備する装甲車両の整備と稼動率維持にほかなりません。

 そこで、旅団規模の部隊に連隊規模の支援部隊は過大な編成ではないか、との指摘はあるやもしれませんが、例えば履帯破損等は訓練時であれば整備支援を受け即座に第一線へ復帰できるでしょうが、戦闘時であれば撃破される要因となりますので即座に支援する、場合によっては攪乱射撃を受けつつも排除し整備支援を行う必要がありますし、複合装甲などを破損した場合、迅速に再整備し戦闘復帰出来るのか出来ないのかも、戦闘部隊の能力を大きく左右します。

 戦車と装甲戦闘車は文字通り近接戦闘部隊の宿命として重装備同士の殴り合いに近い戦闘に曝される事となりますので、損傷は宿命的なものといえるもの。また、戦車や装甲戦闘車は不通に装甲するだけでも損傷します、しかし、適切な整備支援を行うならば数百kmの自走機動にも耐えられることが実戦で証明されています。つまり、いかに整備するかが、競合地域から第一線までの機動において損耗を抑えるかに繋がる、ということ。

 つまり、近接戦闘部隊として相手との直接照準戦闘という戦闘による損耗と共に不整地突破能力が大きな機動力の反面複雑な構造を有する装軌式車両を運用するが故の移動による車体の損耗、後方支援部隊はともに対処しなければならないわけで、もちろん戦車小隊と整備小隊を1:1で配備する訳にはいかないのですが、可能な限りの自動化と整備支援による戦闘稼動率の向上は、そのまま部隊の戦闘力に繋がります。そして、機動旅団としての装甲機動旅団ですので、戦略機動が念頭となり移動という負担は元より多くとる必要がある。

 装甲機動旅団は旅団型普通科連隊を基幹とした編成部隊をもち、特にその三個普通科中隊のうち一個普通科中隊を軽装甲機動車中隊としつつ二個普通科中隊を装甲戦闘車中隊、として、このうち二個の装甲戦闘車中隊に戦車中隊をあわせ、機械化大隊として運用する方式を提示しています、このため、装軌車については250kmごとのC整備を行う必要があり、移動一つとっても整備を、もちろん有事の際にはこの限りではないのでしょうが、この負担が軽くはありません。

 C整備は74式戦車の場合で20名程度の整備小隊で十時間近くを要し、10式戦車はある程度自動化されているという視点、しかしアクティヴ懸架装置の整備負担増大などの視点、電子装置整備の比率増大というものがあります、もっともC整備は走行系統の整備に重点がおかれているのですが。装備定数ですが、戦車中隊は13両編成、装甲戦闘車は14両編成、と普通科連隊の項目と戦車大隊の項目で、稼動率や戦術機動性と運用面から適正数を提示しましたが、機械化大隊はこれにより41両の装軌車両を装備することとなります。

北大路機関:はるな くらま
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2 コメント

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Unknown (ドナルド)
2015-12-11 00:35:25
はるなさま

おっしゃるように、機械化旅団には相応の整備部隊が必要と思います。弾薬や燃料も大量に消費する(それだけの火力を発揮できる)ので、兵站部隊も重要かと。

#ただし、兵站部隊は、次回以降でしょうかね。。。
返信する
兵站部隊は、語ると長い (はるな)
2015-12-20 12:27:08
ドナルド 様 こんにちは

ご指摘の通り、兵站部隊は、語ると長い、です

忘年会の重なる時期に酩酊と戦い兵站を語ります
返信する

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