北大路機関

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超駆逐艦ズムウォルト公試開始 アメリカ海軍14000tの先進ステルス駆逐艦一番艦

2015-12-09 23:13:48 | 先端軍事テクノロジー
■ズムウォルト公試開始
 アメリカ海軍の将来駆逐艦、ズムウォルト級駆逐艦の一番艦ズムウォルトが、バス鉄工所を公試に向け初出航しました。

 ズムウォルト級駆逐艦一番艦のズムウォルトは、現在のタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦を上回る満載排水量14000tという、我が国全通飛行甲板型護衛艦と並ぶ規格外の大きさの駆逐艦ですが、最大の特色は徹底したステルス性を持つ船体に一体化した強大な打撃力です、新型レーダーSPY-3を搭載、先進誘導電動機を搭載した統合電電機推進方式が採用され、艦砲は155mmで射程118kmという強力な対地打撃力を有すると共に、80セルのVLSを搭載します。

 新駆逐艦、1988年にジェームズメカトーフ退役大将が発表した打撃巡洋艦構想に起源をもち、ステルス実験艦シーシャドウを建造、1995年にステルス大型船体へ500発の巡航ミサイルを搭載するアーセナルシップ構想へは転します、1997年にこの構想をSC-21海洋火力支援実証艦構想として対地攻撃力の大きなステルス巡洋艦とする案に転換されました。

 これらの研究を元にアメリカ国防調達委員会が将来駆逐艦とする案に纏められ、各種ミサイルを搭載する80基のVLSを装備する将来駆逐艦DD21計画と250基のVLSを装備する発展型に当たる将来巡洋艦構想が示され、2000年には一番艦にズムウォルト大将を冠しDD1000ズムウォルト級として建造される事となりました。

 駆逐艦と云いますと、しらね型護衛艦のような形状の艦艇が一般的ですが、ズムウォルトはことなり、レーダーは絶壁の如く築かれたタンブルホーム型船体に搭載され、イージスシステムのSPY-1後継を期して開発された系譜にあたるレーダーSPY-3を搭載、SバンドXバンドのデュアルバンドレーダーDBR方式を採用、イージス艦の苦手とする低空の小型超音速を含め320km圏内の制空権を握るもので、海軍先進データリンク NIFC-CAと連接する事でイージス艦の長射程SM-6艦対空ミサイルの誘導も可能という。

 船体部分は主要部にHSLA-65特殊高張力鋼が採用され、上部構造物には炭素繊維複合素材を採用、従来の水上戦闘艦よりも船体防御への装甲部分が意識されているほか、徹底したステルス性により船体のレーダー反射面積は、ステルス性を考慮したアーレイバーク級ミサイル駆逐艦と比較しても二十分の一程度と、ミサイル艇程度の大きさに抑えられ、大型船体ですがレーダーでは見つからず、そしてミサイル攻撃を受けた場合でも生存性を確保した一隻として完成しています。東郷電機推進方式を採用し、現在155mm単装砲2門を搭載していますが2020年代にはこの艦砲をより長射程で発射速度の大きなレールガンへ換装する計画があり、これにより250km程度先の内陸目標を艦砲射撃の圏内に収められる。

 ズムウォルトは、ステルス性を活かし沿岸へ接近し陸上へ艦砲による大打撃を与える任務から、空母機動部隊防空の最大戦力としての機能も期待されます、一番艦ズムウォルトに続き、二番艦マイケルモンスーア、三番艦リンドン・B・ジョンソン、が建造中、しかし建造費44億ドルと、ニミッツ級原子力空母50億ドルに並ぶ高価な先進艦となり、イラクアフガニスタン戦費が嵩む時期に建造が重なったためアメリカと云えど数を揃えられないのが難点です。当初は十数隻、18000t級の派生型が計画されましたが、2010年の時点で建造費見積が30億ドルを超えるとされ、縮小されました。その分アメリカ海軍の期待は大きく、就役後は海上自衛隊との合同演習などでもその雄姿を見せる事となるでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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