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【京都幕間旅情】建仁寺,臨済宗哲学観と世界観のみ記した興禅護国論の歴史的意義

2024-05-22 20:00:38 | 写真
■臨済宗とは禅宗とは
 理念や概念は紹介する事だけならば簡単なのかもしれませんが定着させるとなりますと大きな課題が突如たちはだかるものです。

 栄西さん、数多ある功績の一つの茶の文化を再度普及させたというものがありまして、いや、奈良時代に一度伝来しているものの貴人の嗜好品という以上に普及しなかったという歴史がある、だから再度普及させたというのは功績で山内にも茶葉は数多い。

 禅宗、しかし最大の功績はやはり宗教が個人や社会と政治の価値判断に影響を及ぼす時代にあって禅宗を持ち込み定着させたことにあるとおもう、その栄西さんは幼少より優秀で、久安4年こと1148年、8歳にして倶舎論、婆沙論という哲学書をを読んだとされている。

 倶舎論、婆沙論、いや小学校の頃にカントを読んだぞとかヴェーバーを読んだとか、ハーマンカーン読んで中学受験したとか反論が出そうですが、栄西さんは続いて久寿元年こと西暦では1154年に14歳をむかえたさいに比叡山は延暦寺へと出家得度しています。

 天才は最初から天才か、と思われるかもしれませんがそうではなくこの栄西さんはブレなかったということで、延暦寺につづいて、今の岡山県にある吉備安養寺、そして今は鳥取県の伯耆大山寺などで天台宗の教学と密教を学んでいまして、真言宗についてもふかく。

 最澄と空海のそくせきを辿った訳でして、仁安2年こと西暦1167年には伯耆大山寺の基好より両部灌頂を受けています。栄西の研究は龍谷大学あたりでかなりの研究が有ると聞いたのですが、末法元年から百余年を経て、やはり栄西さんが考える程のことがあったよう。

 新しい仏教をもとめ、仁安3年こと1168年4月、日本天台宗を立て直すべく、新しく台頭した武家の平氏から支援を得て南宋に留学することとなりました。ただ、この頃には南宋では禅宗が一種の流行となっていて、留学僧も玉石混交であったとつたわっています。

 南宋留学、なにしろ南宋だ、モンゴル帝国の影響により分断した宋帝国という状況があり、いっぽうで栄西さんが留学したのは天台宗の建て直しが目的なのですが、この頃はとりあえず南宋に留学すると箔がつく的な感覚で、中国語の出来ない留学僧さえすくなくない。

 日本からの留学僧は多いもののなにをしているのかわからない留学僧が只寺に入り浸って惰眠を云々、と当時の南宋の僧侶が日記に記したり、日本国内でも問題視されていた時代なのですが、栄西さんはこのなかで禅宗と天台宗の補完関係について考える訳です。

 禅宗を普及させた、ここが重要なところでして建仁寺が日本最初禅寺と大書して扁額を掲げているのは。禅宗そのものを日本に持ち込む事は簡単なのですが、天台宗と真言宗、そしてもともとの南都六宗の仏教界に両立させる事が実のところ保守的な日本では難しい。

 興禅護国論、栄西さんはこの著書を著す事で、そもそも禅宗と天台宗は同質のものである、と先ず融合を独自理論として構築しています、これが臨済宗の日本における始まりなのですが、臨済宗の中国での展開と異なり、日本における禅宗独立宣言の書ともよばれるもの。

 臨済宗とは、臨済さんが開いたから臨済宗というのですが、悟るまで師匠と弟子が殴打連発の試行錯誤を経て、いわば生みの苦しみが大きい宗派だなあ、とおもったものですが、それは中国における臨済宗であり、哲学観と世界観のみを栄西さんは日本へ持ち込んだ。

 経・律・論、既に日本にある天台宗をもとに、こころの融和性と寛容というようなものを解くことにより、鎮護国家という天台宗の目指すところが叶うとし、一つの哲学体系のようなものとして日本に紹介した事で、波を建てる事無く定着させられた、ということです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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