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【京都幕間旅情】大豊神社,医薬祖神少彦名命祀り大国社の狛鼠迎える干支の社で振り返る一年

2020-12-30 20:15:07 | 写真
■鼠年は哲学の道のその奥に
 年の瀬という風情を感じる今日この頃に改めて干支というものを感じる社殿を紹介しましょう。

 狛鼠の大豊神社。ここは京都市左京区鹿ケ谷宮ノ前町、銀閣寺や南禅寺に程近く、有名な哲学の道、その静かな清流と石畳の小路を進んだ先に静かに鎮座しています社殿です。鹿ケ谷と南禅寺一帯の産土の神であり氏神という、鼠年に参詣者が増える不思議な社殿だ。

 大豊神社に参詣を思い立ちましたのは、鼠年がそろそろという時節であるとともに、この社殿が大病平癒を願い創建されたというものでして、今年いっぱいに世界を覆う百年ぶりといえる流行禍、COVID-19祓い、こうしたものを祈念しようと、歩み進めましたしだい。

 宇多天皇の御悩平癒祈願、神社は仁和3年こと西暦887年に女官である藤原淑子の命により創建されました、贈正一位尚侍で権中納言藤原長良の子である藤原淑子は右大臣藤原氏宗の後妻、清和天皇の時代から醍醐天皇の時代まで後宮を司り藤原北家を中興しました。

 東山三十六峰の椿ヶ峰を御神体とする社殿は上掲の哲学の道から、東の山手に決して大きくは無く華美でも無いながら律として存在感ある鳥居を潜り、こう、山に往くのだ、という細い参道の先に鎮座しています。佇む、とはこういう風情をいうのだ、という気風が。

 医薬祖神の少彦名命を祭神とした社殿は、創建当時にはもう少し奥深い椿ヶ峰山中の立地に在ったといいまして、社殿によれば平安朝後期の寛仁年間、西暦1020年前後に現在地へと遷座されたという。創建当初は椿ヶ峰天神と奉じられており、創建の地を物語ります。

 藤原淑子の創建した社殿、淑子が発願した円成寺の鎮守社という創建当初には、実のところ神域も今からは考えられるほど広かったといい、多分に山中故に参詣には難渋注う名立地ではあったのでしょうが、当時には貴人の参詣も多かったと、社殿には記録されます。

 椿ヶ峰天神と有る通り、菅原道真を祀るほかに応神天皇も合祀され、治病健康、福徳長寿、縁結び、安産祈願、学業成就、こうした御利益があるといいます。しかし、鹿ケ谷の立地もあり鎌倉時代末期の南北朝時代、1331年からの建武の動乱により社殿を焼失してしまう。

 建武の動乱から再建を果たしました社殿は、しかしやはりといいますか定番と云いますか、1467年からの応仁の乱にて兵火の煽りを受けまして、やはり焼失します。狛鼠を祀る社殿ですが、創建の後に二度も兵火に焼かれた厳しい歴史があるのです、しかし、復興する。

 狛鼠とは兵火に二度にわたり焼かれるというところが一つ、不思議な御縁があるものでして、そもそも何故神社に狛犬ではなく、狛鼠なのか、という。もちろん社殿の入り口には狛犬様も鎮座し威容を示しているのですけれど、境内末社大国社に狛鼠が迎えてくれる。

 狛鼠と兵火、これは神話の時代に日本建国の父という大国主命が国を預かる大任への試練として素戔嗚尊により広大な平野ごと野火に囲まれるという修験があり、この際に大国主命を窮地から救ったのが、野火に囲まれない経路を案内した鼠、という古事記の記載が。

 古事記に記された鼠と大国主命、その所縁を感じる風情とともに、やはり鼠と云えば十二支の一員、鼠年には参詣者が増えるという次第です。もっともこの境内末社大国社は古いものではなく、平安朝でも江戸期でもなく戦後、応仁の乱後ではなく第二次大戦後です。

 境内末社大国社が造営されたのは1969年といいまして、しかし、こう考えますと難しい造形の鼠様ながら彫像当時の可愛らしい姿にて拝む事が出来るものでして。さて、こう干支送りのようになりました今年もあと僅か、来年の丑年も趣き深い一年を願いたいですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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