北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

国連制裁反発の朝鮮半島休戦協定破棄宣言と中国の尖閣諸島測量員上陸検討

2013-03-10 23:51:48 | 国際・政治

◆重要なのは予防外交の展開

 3.11を前にしてブルーインパルスの松島基地帰還実現決定など嬉しい報道も為されるのですが、我が国周辺は非常に気になる事案が生じています。

Img_4817 第一の懸念は朝鮮半島です。北朝鮮は先日の核実験を契機とする国連安保理制裁決議への報復として、朝鮮戦争休戦協定の白紙撤回を宣言し、米本土への核攻撃を含めた軍事行動を示唆しています。もちろん、宣言だけの攻撃は北朝鮮の常とう手段であり、“口撃”と揶揄されるものですが、金正恩新指導体制下ではどういった強硬措置が取られるか、現時点では未知数であり、特に韓国の軍事上の準備体制の欠如がこの地域の安定に際し大きな問題となる懸念があります。

Img_3528 韓国軍はあたかも我が国を最大の脅威として想定しているような装備体制を特に1990年代後半から転換し、隣国に大量の魚雷艇とミサイル艇に小型揚陸艇と小型潜水艦を有する海軍がありながら、大型水上戦闘艦やドック型揚陸艦にイージス艦とAIP潜水艦の整備を行い、陸軍でも千両単位でT-62とその改良型を運用する脅威があるのに対し、過度に高性能を意図しつつ技術的稚拙により使えない新型戦車や、機動力と火器管制装置に問題点がある装甲戦闘車、連続射撃能力と間接照準射撃制度に問題がある自走榴弾砲を揃えてきました。

Img_7080 自衛隊の装備体系は問題が指摘されつつも、昨今のNATOの実任務等を見れば、何処も似たようなものか、と考えさせられたものですが、韓国は上記の通り装備体系と運用体系に問題を抱えています。空軍も酷く、導入した戦闘爆撃機の維持費の大きさがほかの空軍訓練運用体系に支障を来し、訓練ではミサイル整備の手抜きにより誘導弾が電池劣化でそのまま自由落下、戦闘爆撃機用長射程誘導弾は一機一発の確保さえ成らず、見栄えはするものの実戦力としての能力には少々疑問符を点けざるを得ません。

Img_0002a 無論、高度な装備を導入しつつ使い切れていない点については我が国にも聞き覚えがあり、耳が痛くないかと問われれば難しいところではありますが、実運用で大丈夫かと問われた場合に、余りに想定脅威から離れた装備体系を構築してしまっているのが韓国軍で、もちろん北朝鮮人民軍の装備は総じて旧式が主体であり、観閲式に供される一部部隊を例外としても通信能力や視程外戦闘能力に大きな問題はあることも確かですが、動くのか怪しい装備を揃えてしまった韓国軍では五十歩百歩と言わざるを得ないことも確か。

Img_7007 日韓関係では元来同じ自由主義圏の国として価値観を共有する隣国同士ではありますが、竹島の不法占拠を行い半世紀以上を経て、過度に竹島問題を掲げて我が国に対する不可解な行動と防衛装備体系を構築しています。我が国は繰り返し国際司法裁判所での解決を希望し、自衛隊には確かに能力的には竹島を奪還する装備を有していますが国内政治の観点からそれを実行する可能性は現実的ではありません。しかし、過度に竹島防衛を掲げ、表玄関の先にある北朝鮮への防衛を疎かとしているのは不可解の一言に尽きます。

Iimg_0354 特に徴兵の兵員への供給する装備が柄こそ迷彩ながら実態はヴェトナム戦争時代のものという事で、朝鮮半島情勢について、華美な正面装備の導入と共に基盤となる防衛力の低下をまねている韓国軍の現状を見る限り、例えば局地戦を展開された場合への準備については疑わしいものがあり、他方で朝鮮半島有事は対岸の火事と言いつつも川幅が対馬海峡に日本海と非常に狭いのも事実であり、我が国としても重大な関心と共に予防外交を展開する必要性があるでしょう。

Aimg_24370 中国と日本の軍事衝突は、現在世界経済に与える最もおおきなリスクの一つに数えられている、こうした論調が一部にはありますが、その焦点となっている尖閣諸島に対し、中国政府は正確な測量を行うために調査要員の上陸を検討していることが、朝日新聞などの報道により明らかとされました。測量とはいえ、係争地域の姿勢圏外呼ばない地域へ上陸させるのですから、仮に強行された場合、我が国としては拘束せざるを得ず、これは尖閣諸島での緊張を一挙に突沸させる緊急事態に他なりません。

Oimg_3838 防衛省自衛隊では尖閣諸島近海には敢えて艦隊を展開させず、中国海軍の動向を公海上において警戒していますが、最前線には海上保安庁が巡視船多数を持って警戒に当たっています。先日中国国家海洋局が除籍された旅大型駆逐艦の海洋監視船転用を発表した際に、海上保安庁も護衛艦はつゆき型の巡視船転用を発表しました。今回、調査要員上陸を示唆した中国に対し、我が国が撮り得る対応策としては海上保安分署の設置など、尖閣諸島への陸上要員配置などが考えられます。

Himg_5267 中国側が求める日本政府への自制について、その定義は不明確ではありますが、少なくとも施政権が及ぶ領土でありながら隣国との摩擦を避けるよう常駐要員を置かず緩衝地帯のように扱い、周辺へは軍隊に当たる自衛隊を展開させることなく法執行機関である海上保安庁が展開していますが、対して行われるのは繰り返される領海侵犯に加え領空侵犯、公海上での護衛艦に対する武力行使に当たる火器管制レーダー使用、自制を求めるとは主権放棄を呼びかけているようにしか解釈できません。

Img_0392 国家である以上、日本は主権の放棄はできません、領土領域とはそういうもので、一方の強制力により奪取されることを認めては国家が成り立たなくなってしまいます。ここ数年間の過度な対中融和政策と一貫性を欠いた対米政策も中国へ誤ったメッセージを送ってしまったと批判されるべきところかもしれませんが、現状の中国の行動は、例えば別の国が海南島などに対し同等の行動を行えば、戦争となり、少なくとも自制を求めている国が行う事とは考えられないのではないでしょうか。

Img_1057 日本側が行い得る最大の妥協点は、日本側が日中学術調査を主宰し、自然科学を一義的に行う目的の項目に定点を定めない測地調査を含め、日本側の公船を用いて尖閣諸島の合同調査を行う、というところでしょうか。絶対条件として、一旦我が国に入国する、日本政府が主催する、杭などの基準点設置は日本側が行う、この条件を満たしているならば測量は認め得るところですが、そもそも中国側が対内的観点から引けないのか、実際に奪取する事が建前では無く戦略目標であるのかで、かわってきます。

Himg_6118 しかし、我が国の国是である憲法九条に依拠し、過度に防衛力を外交政策の展開において軽視し、我が方が軍事行動を行わない事が我が国に対し軍事行動を行わない、という政策に問題の根源があり、即ち相手に誤った印象を与える事は認識しておかなければなりません。尖閣諸島は周辺に豊富な海洋資源を有し、台湾有事には沖縄の米軍と台湾を結ぶ戦略的重要地域で、これを日本が維持できなければ台湾をめぐる戦争さえも誘発させかねません。

Bimg_8692 相手の立場に立って、ということばは様々な場面でなされるところですが、今回の場合も然り。日本列島は日本人だけのものではない、という言葉を発した政治家がいましたが、まさにその通りで、日本が日本列島を管理することで保たれる日本周辺国の平和があるのです。上面の文面だけの教条的な平和主義は、かえって戦争を誘発する、過度な無防備が戦争を誘発した事例は世界史に多く記録されているという事実の上で、如何に予防外交を達成するか、慎重に考えてゆく必要があるでしょう。

Gimg_4419 北朝鮮の核武装については、核不拡散体制の堅持こそ核戦争回避の唯一選択肢と考え、加えて核不拡散条約が核兵器国に核兵器削減義務を課している現状に逆行するものとして、制裁に妥協の余地はありませんが、北朝鮮が国家と体制存続の唯一手段に核兵器を見出しているところに誤りがあります。体制を維持しつつも、核放棄を実行し、順次民主化を進めて行ったならば、ミャンマーが不可能と言われた民主化により新しい発展と投資の入り口を築いたような、本当の意味での強勢大国への道を開く可能性はあると思うところ。

Img_0490 中国については、アメリカの予算均衡法による歳出強制削減により軍事的な抑止力が低下している現状が長期化したならば、次の一歩に出てくる可能性があります。現状では在日米軍の訓練予算は大きく削られていませんが、その母体である本土の総力が削られることは有事の際の増援を制限することにもなりかねません。ただ、中国の海洋進出が領域拡大の目的ではなく、海洋の自由航行に依拠した経済発展のための手段として行われているならば、海洋の自由航行は独占では無く共有するもの、として理解を図り、日中の共栄へ繋げることが出来るかもしれません。 

北大路機関:はるな

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