◆決定すれば初の防衛用機海外輸出
産経新聞の報道によれば海上自衛隊の救難飛行艇US-2について、インドへの輸出が事実上決定する方向で調整されているとのこと。
インド洋を防衛警備するインド海軍は、広大なインド洋を前に迅速に展開し、救難及び警備任務を行うことが可能な飛行艇として、かなり以前から我が国の救難飛行艇US-2に着目していました。US-2は競合機の四分の一の離水距離にて運用可能で、競合機の倍の波浪を前とした場合でも運用が可能な国産機です。日本は第二次大戦中からこの種の飛行艇を継続的に開発してきており、戦後はソナーを搭載し機動運用する対潜飛行艇PS-1が開発、これをもとに救難飛行艇US-1が開発されました。
最新型のUS-2は操縦系統にフライバイワイヤを導入し、機内を与圧するなどの改良を加えて完成しています。我が国では救難飛行艇は陸上のヘリコプターの行動圏外で生起した航空遭難や離島での急患輸送に無くてはならない活躍を続けてきました。救難飛行艇はヘリコプターによる航空救難の倍以上の行動半径を有し、速度も非常に大きいと同時に飛行艇そのものの取得費用も大きく、これまで幾つかの島嶼国がUS-1の時代から導入を模索してきましたが、取得費用と維持費の大きさにより、実現はしていません。
今回のインド輸出は、産経新聞報道によれば救難任務と海賊対処任務を主眼として政府が輸出手続きに入ったという内容で、これによりUS-2を製造する新明和工業がインドへ現地事務所を設置したとのことです。防衛用航空機輸出はこれまで、武器輸出三原則への定食という観点から実現はしておらず、音階が初の事例となります。実は昨年名古屋で実施された国際航空宇宙展の頃にもほぼ輸出が内定した、と報じられており、一方確定はしていない、との報道がなされていましたが、今回の報道はこれが決定した、というもの。
初の防衛用航空機輸出となりましたが、問題はあります。一つは新明和工業の工場が有する生産能力で、今後大口の注文などがあった場合には工場規模を拡大しなければならなくなる可能性があり、他方で拡大したとしても継続的に往生を稼働させる安定発注を受けられるとは限りません。もう一つは、アフターサービスで、飛行艇は特殊な航空機であり、運用支援や定期整備などを民間の新明和工業だけで可能なのか、ということ。しかし、輸出が続けば単価が下がり、防衛省も安価に調達が出来る事を意味します。これらの問題は、防衛用航空機の輸出には国家の関与と支援、防衛産業との連携が試される最初の一歩となるでしょう。
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