害虫屋の雑記帳(ブログ人の保存版)

ブログ人のサービス停止に伴い、gooに過去記事を保管させてもらうことにした。

虫の味と進化論

2008-08-10 23:57:00 | 自然観察

今日は昼間に寺まいり、当たり前だが法事なので昼行性のヒトとして活動した。
暑い中でご先祖に手を合わせた。せめて食虫目あたりのご先祖までは感謝の祈りを捧げたいところだが、体力が持たないので短時間で切り上げた。そういえばダーウィン展が長居公園で開かれていたな・・・・。
ダーウィンはコウチュウが好きだったそうだ。かの偉人は、素手でムシ採りしていて両手が獲物でふさがったとき、なお別のムシを捕獲するために自分の口の中をムシの一時保管場所として利用したと自叙伝で書いていた。結局、防御物質を味わうことになって苦しみ、すべてを逃がしてしまったそうだが・・・・。この話を読んだとき、私は全く驚かなかった。ムシ屋なら特に突飛な発想とはいえないだろう。本当に欲しい虫と巡り合ったとき、それまでの獲物を歯ではさんでおいて手を自由にしようというのはごく自然な思いつきだとおもう。

私の畏友の中には、「ムシの特徴を知るには味わうことも必要である」といいながらシロアリを生きたままモグモグ食べていた人物がいる。これはひとつの化学的分類といえるが、シロアリの体表炭化水素による分類なんて、日本でまだおおやけになっていなかった20数年前の話である。残念ながら、官能テストに基づく昆虫分類学は、論文にされることもなく埋もれたままになった。うまくいけば、遺伝子の分析結果を凌駕する系統分類を解き明かす手法になったかもしれなかったのに(追試が困難という難点を除けばだが)。本人もたぶん今頃は忘れているのかもしれない。しかし、昆虫に向かい合うにあたり、知力のすべてでは足りず、味覚を含めた感覚まで用いるべきだという主張には強く心を動かされたものである。情けないことに、私はムシを味わって区別するということを、まだ一度も試みていない。
先日お寺の森から持ち帰ったツノキノコバエ科のウジをジッとみていると、このネバネバって無味っぽいよなあ、でも意外に甘くて小さな虫をおびき寄せたりして、なんてアブナイ考えが頭をもたげてくる。Keroplatidae_vs_drosophila

飼育中のコナチャタテの一種 Embidopsocus sp. 有翅虫を、ウジのそばの粘液に付着させてみると予想どおり食べた。キノコ以外にも、小型のムシなら食べるようである。キイロショウジョウバエなら捕食シーンが絵になりそうなので与えてみた。もがいている小バエにウジはおびえるように逃げ、小バエも粘液の上で起きなおり飛んで逃げた。キイロショウジョウバエが凄いのではなく、粘液がショボイのだろうか・・・・。
ウジが作った粘液のマユは、ガラス細工みたいでキレイ。なんか「祝!北京オリンピック!」な外観。Keroplatidae_cocoon