コガシラコバネナガカメムシがきっかけで、いろいろな場所に行くたびに、タケの節の中をのぞくようになった。おかげで、ライトトラップに結構よくかかるヌカカについても、幼虫の居場所が分かるようになったり・・・とか、いいながら仕事と関係ない昆虫を調べることを、正当化する言い訳をあれこれ考えている今日この頃である。しかし、仕事と遠い関係にあるほど、えてして好奇心を強く揺さぶるのでしかたがないってのは・・・逃避行動やな。
よく調べるとタケの節間の生き物について、文献がいろいろ出てくるのに驚く。日本の蚊の研究の途方もない蓄積というものをすっかり忘れていた。ファイトテルマータなんて、水たまりをエラくムズい言い方するなあと思いながら、敬遠している世界でもあった。今からだと、文献の重要っぽいものだけを読むのも、時間的に無理ありまくりだ。
害虫駆除業界に身を置きながら、膨大な数の蚊やらヒメマキムシやらの論文を書いているT先生も、ルーチンワークでじっくり虫を見てられないとかいっておられたが、どの論文の長い文献リストをみても目まいがする。きっと、脳神経の伝達速度が一般人のレベルと違う数倍速になっているのだろう。次にお会いしたときに爪の垢をもらうことを忘れないようにしよう。
さて、先週に採集した海岸のダニの簡易プレパラート。 色合いが同じなのに、科が違うとかいっていたが、標本作製の処理を進めるにつれ、さまざまな色合いになった。ハシリダニの一種 Eupodidae gen. sp. などは、赤→黒→緑と変化した。あっという間に黒くなってボロボロに崩れていくので、大型甲虫でも上手に標本をつくれない人間にはツライ。
つぎに、ハシリダニをいれたフイルムケースに、いつの間にか吸虫管で一緒に多数採集して入っていたハマハネトビダニ Nanorchestes amphibius( ハネトビダニ科)。
最初は「あれ?ハシリダニが赤ちゃんをいっぱい産んでいる!」とかわけのわからんことをいっていた。0.3mmを切る大きさのダニを現場で肉眼で見つける能力は私に無い。このダニは、タイドプールに浮かんでいることがあると図鑑に書いてあったが、どんだけ目がええねんS先生は! 胴体には植物の星状毛みたいな形の毛が生えている。