ツメダニなんか決して落ちてこないと分かっていても、死んだ小猿を抱える母猿のごとく、採集してきた枯れ草のカタマリを未練たらたらイジっていると、体長5mmくらいのハエがふわっと草の中から現れた。
どの虫も明るい窓側へ飛んで逃げるのに、ソイツは暗い側に立つ私の腕に止まった。
繰り返し追い払っても、戻ってきて腕に止まる。
人間になつくとは、変わったハエである。
一瞬、人と虫のユウジョウ!とか考えた。
でも室内を飛び回られると他の部署から苦情がでるので、カワイソウだが毒ビン行きだ。
死んだ個体を同定してみると、インドサシバエ Stomoxys indicus Picard, 1908 だった。神戸市北区有野町にも、こんなハエがいるのか。
腐った枯れ草で発生するとは知らなかった。カラダがかたまってなかったので、乾くとヘロヘロな標本になった。
このハエが人を刺すのなら、貴重な体験を逃してしまったことになる。
参考文献:原色ペストコントロール図説第Ⅲ集(1990)