大阪や兵庫の野外で、もっとも普通にみつかるツメダニの一種を同定してみた。
野外にしかいないと思っていたけれど、食品工場内でも採集できたので真剣に調べる気になった。
Cheletomimus (Hemicheyletia) gracilis Fain, Bochkov and Corpuz-Raros, 2002 と同定した。小型(0.35mm前後)で背中にワヤワヤした剛毛がある種。
この属に含まれる種は、みな似たような外観なので本当にややこしい。幸いにも住宅室内で多発生することはなく、害虫相談業務において同定が必要となったことは今までなかった。
日本産土壌動物(1999)では、Hemicheyletia にヒメツメダニ属の和名があてられている。
いまのところ、日本で記録されている ヒメツメダニ属 Cheletomimusは、以下の2種だけ。でも今後もっと種数が増えるはず。
ウロコツメダニ Cheletomimus (H.) bakeri (EHARA, 1962)
ハマベツメダニ Cheletomimus (H.) wellsi (BAKER, 1949)
wellsiとgracilis は、体型や胴背板の内側にワヤワヤ剛毛が並んでいる点などでよく似ている。wellsiは、第I脛節の剛毛が4本(うち2本が扇状毛)で、gracilis は5本(うち3本が扇状毛)という違いがある。さらに、C. gracilisには 肛門付近の毛(a3)が扇状であるという特徴がある。この仲間は若虫と成虫の体表毛の形状が違っていたり、オス成虫の形態は多型的だったりするので、基本的に分類にはメス成虫しか使えない。
C. gracilisのタイプ標本はハワイでタマネギ(日本産)から採集されたらしい。
記載文では、本種の分布に日本を含めていなかった。今のところ、ハワイ、フィリピン、ペルー、ブラジルで記録されている。
採集の仕方に問題があるのかもしれないが、私が野外で採集できるのはコレばっかりで、枯れたタケやササ、ヨシの立ち枯れ茎からみつかる。ずっと前に書いたブログ記事でハマベツメダニとしていたのも実は本種だった。
参考文献(ネットで無料閲覧可能):
Fain A, Bochkov AV, Corpuz-Rarus LA. 2002. A revision of the
Hemicheyletia generic group (Acari: Cheyletidae). Bull Inst
Roy Sci Nat. 72:27?66.