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害虫屋の雑記帳(ブログ人の保存版)

ブログ人のサービス停止に伴い、gooに過去記事を保管させてもらうことにした。

チャタテムシ的ノミバエ

2013-09-14 13:05:00 | 自然観察
Kawara

河原に刈り取った雑草が積んであった。その下の方から、湿った腐りかけの部分を抜き取り、会社に持ち帰って簡易ツルグレン装置にかけた。

神戸市北区有野町の枯れ草から分離されたのは、ダニやらミジンムシやらムクゲキノコムシばっかり。なかでもコナダニ団のヒポプスの多さは驚くばかりで、受け皿の落下物の大部分を占めていた。コンビニの小さな袋一つ分の枯れ草から、軽く数万個体は発生していたと思う。

集めた微小な生き物たちをシャーレに入れて観察していると、小さなチャタテムシみたいなのが、ダニの間でジッとしているところに目が止まった。

体長約0.8mm、カラダの表面にはケアリのような灰銀色がかったテカりがある。

みている間に急に動き出した。目で追うのがやっとの素早さで、間欠的に走り回るその動きは、食器にたかる類いのノミバエを思わせた。
立てばアリンコ、座ればチャタテ、歩く姿はノミバエさん、というハエの名前を調べてみた。

Chonocephalus_01a_2
ノミバエの一種 Chonocephalus sp. だった。頭部は扁平で、頭部前縁が触角基部より前方に出ていて、目は触角より小さい、胸部背面に大きめの剛毛を欠く、というあたりが本属の無翅メスの特徴とされる。

Chonocephalus_01_3
Chonocephalus_03
Chonocephalus_04
以前にも、食品工場の捕虫器に同属のペアが捕獲されているのをみたことがあるが、生きたのをみるのは初めて。

オスはメスをぶら下げて飛んでいるらしい。メスを腹部の上に乗せてたら面白いなと思って想像図を描いたこともがあるが、交尾姿勢から考えて少しムリがありそう。

枯れ草を採集したのはツメダニ科と、ミフシタマキノコムシモドキ狙いだったが失敗だったようだ。今度はもう少し乾き気味の枯れ草を探すか、ワラ束でトラップするかしてみたい。

参考文献:Bohart GE, JL Gressitt. (1951) Filth-inhabiting flies of Guam. Bulletin of the Bernice P. Bishop Museum 204: 1-152.

ノコギリヒラタアリガタバチ

2013-09-11 12:36:33 | 自然観察
臀部のななめ横あたりに小さな丘疹が二つ並んで生じたのは、先週の水曜日あたりだが、いまだに痛がゆい。二つ咬み口をつくるムシについて考えを巡らせてみたが、たいていの刺すムシが該当しそうだ。でも今回、私が被った虫刺されの原因は、アリガタバチで間違いないと思っている。なぜなら仕事場でコッソリと、ノコギリヒラタアリガタバチ Cephalonomia tarsalis (Ashmead, 1893) を飼育しているから。
本種は、ノコギリヒラタムシ幼虫の体表に卵を産み付ける。
Cephalonomia_tarsalis_adult


Cephalonomia_tarsalis_egg
南西諸島のカミキリ材由来の各種アリガタバチ類に刺されて来た経験から考えても、患部の状態や痛みが共通な感じがする。
同僚たちが、足とかをポリポリやってるのをみても、すばやく目をそらして知らん顔するしかない。逃げたのは少数なので、私とは絶対関係ない(と思いたい)。

ツブトゲダニの一種

2013-09-10 07:41:46 | 自然観察
先頃、日本各地のオサムシ類からコウチュウダニを探しているときには、まったく別の分類群のダニのほうが多かった。
サドマイマイカブリのさやばね下の後胸背板あたりにいたトゲダニ目は、ブドウの実のようなまん丸い体型だった。
オサムシ類は外側から鑑賞するだけというのが正しい虫なので、さやばねをメキョッとはずれかけるまで持ち上げたりするのは、自分の心にも何かが引き裂かれたような痛みが走るので、もうなんかツライ。
一度解体した甲虫の標本は、ニカワなどで元通りの外観に戻せば、ガクジュツ的には問題ないだろう。けれど、コレクターズアイテムとしては格下の「修理品」となり、「完品」とは呼んでもらえなくなる。どうでもいいことだが。
コナダニ団以外は観察するつもりはなかったけど、捨てるとバチが当たりそうだし、ナニやら気になるので球状トゲダニもプレパラートにしてみた。
カラダから中身を押し出して除去したあと、背板と体下面に分離した状態で標本にした。先のまるい棘が体下面のあちこちにみられた。
Iphidosoma_01



調べてみるとツブトゲダニの一種 Iphidosoma sp. (ツブトゲダニ科 Ologamasidae)の第二若虫だった。ツブトゲダニ科は成虫になると自由生活して、トビムシや線虫を捕食するらしい。

害虫駆除業務とはマッタク縁がないことがハッキリしているこんな科を、なにゆえ観察しているのか自分でもナゾである。

ナゾといえば、甲虫に便乗しているとされるツブトゲダニ若虫だけれども、何を食べてあんな超肥満児体型になったのだろう?
ブっといカラダで、さやばねと腹背板の間のキチキチな隙間をどうやってくぐり内部に入り込めたのだろう?最初はガリガリに痩せていたが、腹背板上に侵入した後に太ったとしたら、それは便乗ではなく寄生になるのでは?と疑問だらけ。
Iphidosoma_02


Iphidosoma_03


Iphidosoma_04

タカアシガニ的ハリクチダニ

2013-09-06 23:50:00 | 自然観察
Neophyllobius_01

カビが少し生えたデンプン混じりの室内塵を実体顕微鏡で観察していると、小刻みにカラダをふるわせている体長0.3mmくらいのタカアシガニみたいなのがいた。
食品工場の室内で、カツブシチャタテに混じってみつかる赤いハダニ?・・・野外から迷い込んできたのだろうか?
プレパラートにするとハダニにしては違和感があり、しかもドコカで図をみたことがあるような気がした。
「A Manual of Acarology 第3版」を開くと、やっぱり図があった。
Camerobiidaeってナニ?・・・・・少なくとも室内塵検査では馴染みがない科だ。
和名なさそう。高足針口ダニ科と勝手に呼んでおく。捕食性らしい。
過去には室内塵検査でハダニ科を普通に検出していたが、掃除機から回収した潰れて丸まった個体のなかに、高足針口ダニ科の個体が混じっていたとしたら区別できる自信はない。
食品工場にいた種は、Camerobiidaeの文献をいくつかあたってみたが、第I脚ふ節の感覚毛(ω)の位置などからNeophyllobius sp.と考える。A Manual of Acarologyに示されたCamerobia sp.の全体図も、Neophyllobiusじゃないかと思うけれど、編集者が細分主義にムカツイているだけとか?
Neophyllobius_02

Neophyllobius_03_3

みんな砂にしかみえない

2013-09-01 23:30:32 | 自然観察
Phyrrhocoris_antlion

逆立ちしているカメムシを見た。正午の強い
日差しを浴びながら、河原の砂中へ頭から潜ろうとしているが、何がさえぎっているらしい。
激しくジタバタしているのに、いつまでも同じ位置だった。
近寄って写真を撮っても逃げないので、ようやくオカシイと気がついた。
指でつついてみると、カメムシは逆立ちをやめて逃げていった。
そのあと、砂しかないと思っていた位置に急にアリジゴクがみえた。
最初はみえなかったので、光学迷彩か、なにかのジツを使っていたとしか思えない。
あとで写真をみて、やっとのことでアリジゴクがフタモンホシカメムシをはさんでいたと気がついた。自分の観察力にも驚きを禁じ得ない。禍々しいおおあごのヤツは体長が1cmとチョットくらいで、アリジゴク本(松良俊明 (1989) 砂丘のアリジゴク)の図とみくらべてみたが、コカスリウスバカゲロウの幼虫に似ていた。