憲法記念日雑感
憲法改正手続きで、新憲法を制定しようとする姑息さ
改憲手続き法案が、参議院で審議されている。なんとか廃案になってもらいたいと思っているが、11日にも強行採決ということが、危ぶまれているそうだ。
そうした状況のなかで、中東歴訪最終日の5月2日午後、安倍首相はカイロのインターコンチネンタルホテルで内外記者会見。
記者の「憲法改正の国民投票について」の質問に答え、「改正の内容については、自民党としての案をすでにお示し、ご議論をいただいている」と回答。
おいおい、それは自民党新憲法草案だろう。現行憲法を否定し、新憲法を制定することを、憲法改正とは言わないんだ。
96条で予定している改正とは、「承認を経たときはこの憲法と一体を成すものとしてこれを公布する」とされており、現憲法を否定することなどは、まったく予定していないんだ。
だから現在の動きが、権力側からの「右翼クーデターだ」などといわれているのだが、暢気なものでこの御仁は、憲法改正と新憲法制定の違いもわかっていないようだ。
自民党内部でも、96条改正に見合う粉飾をどう施すのか、改憲手続法で改憲のハードルをできるだけ低くし、明文改憲をどう実現するか、などなどの検討がされているはずだが。
安倍首相は、任期中の憲法改正を公言しているが、(再選されることが決まっているのか?)任期は?人気は?…
この能天気な御仁が日本の首相とは、恥ずかしいやら情けないやら。
改憲投票法であって、国民投票法ではない
現在参議院で審議されている改憲手続き法案は、単に憲法の改正承認を得るための手続きを定めようとしている法案である。
現状から判断すると、一方的に権力側からの、憲法改悪の承認を、国民が求められるだけの投票といえる。そんなものを国民投票とはいわない。
現状と憲法に大きな乖離(違憲状態)がある、「現状を踏まえた9条改正を」と迫られ、国民が何とかそれを否決したとして、結果は現状維持であり、なんら違憲状態の改善とはならない。主権者にとって分の悪い投票法であるといえる。
国民投票というのはそんなものではないはずだ!
朝日新聞 提言 日本の新戦略 憲法60年
5月3日の朝日新聞、昨年4月から展開してきたシリーズ「新戦略を求めて」の集大成として、提言 日本の新戦略 憲法60年 私たちはこう考えます 社説21 が示された。
「地球貢献国家」をめざそう。 これが「新戦略」のキーワードだ。
地球温暖化や人口激増、グローバル化による弊害……。さまざまに迫る地球上の困難に対し、省エネ、環境技術をはじめとする得意技で貢献する。さまざまな国際活動の世話役となって実りを生む。それが、日本の国益にも直結する。
「戦争放棄」の第9条を持つ日本の憲法は、そのための貴重な資産だ。だから変えない。これも私たちの結論だ。
ただし、準憲法的な「平和安全保障基本法」を設けて自衛隊をきちんと位置づけ、「専守防衛」「非核」「文民統制」などの大原則を書き込んではどうか。憲法の条文から自衛隊が読み取れないという「溝」を埋めるための工夫である。
「戦争放棄」の第9条を持つ日本の憲法は変えない。これも私たちの結論だ。
朝日新聞の社説21、これを評価するというよりも、こうした提起がなされたことに、なぜかほっとしたという感じだ。この21の社説に全面的に賛同・同意はできかねるものの、こうした真摯な問題提起の姿勢は、やはり評価したい。
(追記) 社説21を踏まえての、真摯な姿勢での紙面作成がなされることを期待して、紙面を注目してきたのですが。
積極的な特集や記事もありますが、如何なものかと思わざる記事もあり、姿勢というか立場を明確にしての報道ではないように、思えてなりません。「ほっとしたという感じ」と書きましたが、「ガッカリとかヤッパリという感じ」といわざるを得ない、というのが、この間みまもってきての実感です。
もう少し姿勢や立場、スタンスをハッキリさせたほうがいいと思います。
たとえば、日経新聞は「資本の側の立場」にたって紙面を作成し報道しています。その読者も、「資本の側に立って働いている」ということで購読しています。それは、本意であれ不本意であれ、そうした新聞であることを前提に、発行され読まれているのです。
朝の通勤電車のスーツ姿の女性・男性(とりわけハッキリわかるのは、熱い暑い夏ですが)、車内で読んでいる新聞は日経新聞です。
家で読む新聞ではなく、仕事のために読む新聞なのです。したがって、日経新聞の姿勢やスタンスには揺るぎはありません。
ひたすら資本のための、資本の側に立って働く人のための、情報を・紙面を・記事を作っているのです。
朝日新聞も、自らの立場やスタンスをハッキリさせなければ、読者の信頼を得られないのではないでしょうか。
しかし、日経新聞は購読部数(駅売りが大きな数字を占めています)を増やしてはいますが、その数を飛躍的増大させていないのは、仕事上必要だから、もしくは雇用主から強制されているからであり、その必要などがなくなれば、すぐに購読を止めるからです。
公正中立な報道、そんな建前はタテマエと、読者は看破しているのですから、朝日新聞も腹をくくって、自らの立場を鮮明にして、真摯な姿勢で、その紙面づくりに、まっとうな報道に、邁進してもらいたいと思っているところです。
2008・1・19 harayosi-2
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