法律の周辺

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金銭をめぐる探偵トラブルについて

2008-07-20 20:18:33 | Weblog
毎日jp 探偵トラブル:苦情6年連続1000件超

 記事には,概略,探偵業を巡るトラブルの背景には,料金設定の基準がないという事情があり,法の規制強化だけでは防止は難しい,とある。
日本調査業協会が料金設定の基準を設ければ問題は解決しそうだが,そうもいかない。独禁法が事業者団体に禁止する「一定の取引分野における競争を実質的に制限すること。」(第8条第1項第1号)や「構成事業者(事業者団体の構成員である事業者をいう。以下同じ。)の機能又は活動を不当に制限すること。」(同第4号)に該当する可能性が高いからだ。
公取委のHPには,興信所等の団体から出された,概略,「料金に係る苦情が多いため,拘束力のない料金設定の目安として標準料金表を作成したいが,独禁法上問題ないか」との相談事例が掲載されている。以下は,そこで示されている「独占禁止法上の考え方」と「回答の要旨」。

3 独占禁止法上の考え方
(1) 事業者団体が,標準価格,目標価格等価格設定の基準となるものを決定することにより,市場における競争を実質的に制限することは,独占禁止法第8条第1項第1号の規定に違反する。また,市場における競争を実質的に制限するまでには至らない場合であっても,原則として独占禁止法第8条第1項第4号の規定に違反する。
[団体ガイドライン1-(1)-3(標準価格等の決定)]
(2) 調査料金は,本来,個々の会員が自主的に決めるべきものであり,団体が標準料金表を作成して価格設定の基準となるものを示すことは,価格制限行為として,独占禁止法上問題となる。特に,団体が価格などの重要な競争手段を制限することは,顧客の保護又は業界の信用確保といった理由のいかんを問わず独占禁止法上問題となる。

4 回答の要旨
 団体が,標準料金表を作成して価格設定の基準となるものを示すことは,独占禁止法上問題となる。


「顧客の保護又は業界の信用確保といった理由のいかんを問わず」と解説するあたり,公取委の断固たる姿勢・調子が窺える。

さて,探偵業法を覗くと,第8条柱書には「探偵業者は,依頼者と探偵業務を行う契約を締結しようとするときは,あらかじめ,当該依頼者に対し,次に掲げる事項について書面を交付して説明しなければならない。」とあり,その第7号に「探偵業務の対価その他の当該探偵業務の依頼者が支払わなければならない金銭の概算額及び支払時期」,第8号に「契約の解除に関する事項」とある。書面不交付など,本条に違反した者は,30万円以下の罰金に処せられる(探偵業法第19条第3号,第20条)。
公安委員会は,業法違反の業者に対しては,必要な措置をとるべきことの指示や営業停止を命ずることもできる(探偵業法第14条,第15条参照)。契約内容の確認などの自己防衛は肝に銘ずるとしても,公安サイドには,立入検査(探偵業法第13条)も含め,適切な対応をお願いしたいもの。

なお,高額な違約金や口止め料等に係る契約条項は,消費者法第9条・10条により無効となる場合もある。

公取委 興信所の調査に関する標準料金表の作成 [団体ガイドライン1-(1)-3]


「探偵業の業務の適正化に関する法律」の関連条文

(目的)
第一条  この法律は,探偵業について必要な規制を定めることにより,その業務の運営の適正を図り,もって個人の権利利益の保護に資することを目的とする。

(定義)
第二条  この法律において「探偵業務」とは,他人の依頼を受けて,特定人の所在又は行動についての情報であって当該依頼に係るものを収集することを目的として面接による聞込み,尾行,張込みその他これらに類する方法により実地の調査を行い,その調査の結果を当該依頼者に報告する業務をいう。
2  この法律において「探偵業」とは,探偵業務を行う営業をいう。ただし,専ら,放送機関,新聞社,通信社その他の報道機関(報道(不特定かつ多数の者に対して客観的事実を事実として知らせることをいい,これに基づいて意見又は見解を述べることを含む。以下同じ。)を業として行う個人を含む。)の依頼を受けて,その報道の用に供する目的で行われるものを除く。
3  この法律において「探偵業者」とは,第四条第一項の規定による届出をして探偵業を営む者をいう。

(探偵業の届出)
第四条  探偵業を営もうとする者は,内閣府令で定めるところにより,営業所ごとに,当該営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)に,次に掲げる事項を記載した届出書を提出しなければならない。この場合において,当該届出書には,内閣府令で定める書類を添付しなければならない。
一  商号,名称又は氏名及び住所
二  営業所の名称及び所在地並びに当該営業所が主たる営業所である場合にあっては,その旨
三  第一号に掲げる商号,名称若しくは氏名又は前号に掲げる名称のほか,当該営業所において広告又は宣伝をする場合に使用する名称があるときは,当該名称
四  法人にあっては,その役員の氏名及び住所
2  前項の規定による届出をした者は,当該探偵業を廃止したとき,又は同項各号に掲げる事項に変更があったときは,内閣府令で定めるところにより,公安委員会に,その旨を記載した届出書を提出しなければならない。この場合において,当該届出書には,内閣府令で定める書類を添付しなければならない。
3  公安委員会は,第一項又は前項の規定による届出(同項の規定による届出にあっては,廃止に係るものを除く。)があったときは,内閣府令で定めるところにより,当該届出をした者に対し,届出があったことを証する書面を交付しなければならない。

(重要事項の説明等)
第八条  探偵業者は,依頼者と探偵業務を行う契約を締結しようとするときは,あらかじめ,当該依頼者に対し,次に掲げる事項について書面を交付して説明しなければならない。
一  探偵業者の商号,名称又は氏名及び住所並びに法人にあっては,その代表者の氏名
二  第四条第三項の書面に記載されている事項
三  探偵業務を行うに当たっては,個人情報の保護に関する法律 (平成十五年法律第五十七号)その他の法令を遵守するものであること。
四  第十条に規定する事項
五  提供することができる探偵業務の内容
六  探偵業務の委託に関する事項
七  探偵業務の対価その他の当該探偵業務の依頼者が支払わなければならない金銭の概算額及び支払時期
八  契約の解除に関する事項
九  探偵業務に関して作成し,又は取得した資料の処分に関する事項
2  探偵業者は,依頼者と探偵業務を行う契約を締結したときは,遅滞なく,次に掲げる事項について当該契約の内容を明らかにする書面を当該依頼者に交付しなければならない。
一  探偵業者の商号,名称又は氏名及び住所並びに法人にあっては,その代表者の氏名
二  探偵業務を行う契約の締結を担当した者の氏名及び契約年月日
三  探偵業務に係る調査の内容,期間及び方法
四  探偵業務に係る調査の結果の報告の方法及び期限
五  探偵業務の委託に関する定めがあるときは,その内容
六  探偵業務の対価その他の当該探偵業務の依頼者が支払わなければならない金銭の額並びにその支払の時期及び方法
七  契約の解除に関する定めがあるときは,その内容
八  探偵業務に関して作成し,又は取得した資料の処分に関する定めがあるときは,その内容

(報告及び立入検査)
第十三条  公安委員会は,この法律の施行に必要な限度において,探偵業者に対し,その業務の状況に関し報告若しくは資料の提出を求め,又は警察職員に探偵業者の営業所に立ち入り,業務の状況若しくは帳簿,書類その他の物件を検査させ,若しくは関係者に質問させることができる。
2  前項の規定により警察職員が立入検査をするときは,その身分を示す証明書を携帯し,関係者に提示しなければならない。
3  第一項の規定による立入検査の権限は,犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

(指示)
第十四条  公安委員会は,探偵業者等がこの法律又は探偵業務に関し他の法令の規定に違反した場合において,探偵業の業務の適正な運営が害されるおそれがあると認められるときは,当該探偵業者に対し,必要な措置をとるべきことを指示することができる。

(営業の停止等)
第十五条  公安委員会は,探偵業者等がこの法律若しくは探偵業務に関し他の法令の規定に違反した場合において探偵業の業務の適正な運営が著しく害されるおそれがあると認められるとき,又は前条の規定による指示に違反したときは,当該探偵業者に対し,当該営業所における探偵業について,六月以内の期間を定めて,その全部又は一部の停止を命ずることができる。
2  公安委員会は,第三条各号のいずれかに該当する者が探偵業を営んでいるときは,その者に対し,営業の廃止を命ずることができる。

第十九条  次の各号のいずれかに該当する者は,三十万円以下の罰金に処する。
一  第四条第一項の届出書又は添付書類に虚偽の記載をして提出した者
二  第四条第二項の規定に違反して届出書若しくは添付書類を提出せず,又は同項の届出書若しくは添付書類に虚偽の記載をして提出した者
三  第八条第一項若しくは第二項の規定に違反して書面を交付せず,又はこれらの規定に規定する事項を記載しない書面若しくは虚偽の記載のある書面を交付した者
四  第十二条第一項に規定する名簿を備え付けず,又はこれに必要な事項を記載せず,若しくは虚偽の記載をした者
五  第十三条第一項の規定に違反して報告をせず,若しくは資料の提出をせず,若しくは同項の報告若しくは資料の提出について虚偽の報告をし,若しくは虚偽の資料を提出した者又は同項の規定による立入検査を拒み,妨げ,若しくは忌避した者

第二十条  法人の代表者又は法人若しくは人の代理人,使用人その他の従業者が,その法人又は人の業務に関し,前三条の違反行為をしたときは,行為者を罰するほか,その法人又は人に対しても,各本条の罰金刑を科する。

「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」の関連条文

第一条  この法律は,私的独占,不当な取引制限及び不公正な取引方法を禁止し,事業支配力の過度の集中を防止して,結合,協定等の方法による生産,販売,価格,技術等の不当な制限その他一切の事業活動の不当な拘束を排除することにより,公正且つ自由な競争を促進し,事業者の創意を発揮させ,事業活動を盛んにし,雇傭及び国民実所得の水準を高め,以て,一般消費者の利益を確保するとともに,国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする。

第二条  この法律において「事業者」とは,商業,工業,金融業その他の事業を行う者をいう。事業者の利益のためにする行為を行う役員,従業員,代理人その他の者は,次項又は第三章の規定の適用については,これを事業者とみなす。
2  この法律において「事業者団体」とは,事業者としての共通の利益を増進することを主たる目的とする二以上の事業者の結合体又はその連合体をいい,次に掲げる形態のものを含む。ただし,二以上の事業者の結合体又はその連合体であつて,資本又は構成事業者の出資を有し,営利を目的として商業,工業,金融業その他の事業を営むことを主たる目的とし,かつ,現にその事業を営んでいるものを含まないものとする。
一  二以上の事業者が社員(社員に準ずるものを含む。)である社団法人その他の社団
二  二以上の事業者が理事又は管理人の任免,業務の執行又はその存立を支配している財団法人その他の財団
三  二以上の事業者を組合員とする組合又は契約による二以上の事業者の結合体
3  この法律において「役員」とは,理事,取締役,執行役,業務を執行する社員,監事若しくは監査役若しくはこれらに準ずる者,支配人又は本店若しくは支店の事業の主任者をいう。
4  この法律において「競争」とは,二以上の事業者がその通常の事業活動の範囲内において,かつ,当該事業活動の施設又は態様に重要な変更を加えることなく次に掲げる行為をし,又はすることができる状態をいう。
一  同一の需要者に同種又は類似の商品又は役務を供給すること
二  同一の供給者から同種又は類似の商品又は役務の供給を受けること
5  この法律において「私的独占」とは,事業者が,単独に,又は他の事業者と結合し,若しくは通謀し,その他いかなる方法をもつてするかを問わず,他の事業者の事業活動を排除し,又は支配することにより,公共の利益に反して,一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。
6  この法律において「不当な取引制限」とは,事業者が,契約,協定その他何らの名義をもつてするかを問わず,他の事業者と共同して対価を決定し,維持し,若しくは引き上げ,又は数量,技術,製品,設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し,又は遂行することにより,公共の利益に反して,一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。
7  この法律において「独占的状態」とは,同種の商品(当該同種の商品に係る通常の事業活動の施設又は態様に重要な変更を加えることなく供給することができる商品を含む。)(以下この項において「一定の商品」という。)並びにこれとその機能及び効用が著しく類似している他の商品で国内において供給されたもの(輸出されたものを除く。)の価額(当該商品に直接課される租税の額に相当する額を控除した額とする。)又は国内において供給された同種の役務の価額(当該役務の提供を受ける者に当該役務に関して課される租税の額に相当する額を控除した額とする。)の政令で定める最近の一年間における合計額が千億円を超える場合における当該一定の商品又は役務に係る一定の事業分野において,次に掲げる市場構造及び市場における弊害があることをいう。
一  当該一年間において,一の事業者の事業分野占拠率(当該一定の商品並びにこれとその機能及び効用が著しく類似している他の商品で国内において供給されたもの(輸出されたものを除く。)又は国内において供給された当該役務の数量(数量によることが適当でない場合にあつては,これらの価額とする。以下この号において同じ。)のうち当該事業者が供給した当該一定の商品並びにこれとその機能及び効用が著しく類似している他の商品又は役務の数量の占める割合をいう。以下この号において同じ。)が二分の一を超え,又は二の事業者のそれぞれの事業分野占拠率の合計が四分の三を超えていること。
二  他の事業者が当該事業分野に属する事業を新たに営むことを著しく困難にする事情があること。
三  当該事業者の供給する当該一定の商品又は役務につき,相当の期間,需給の変動及びその供給に要する費用の変動に照らして,価格の上昇が著しく,又はその低下がきん少であり,かつ,当該事業者がその期間次のいずれかに該当していること。
イ 当該事業者の属する政令で定める業種における標準的な政令で定める種類の利益率を著しく超える率の利益を得ていること。
ロ 当該事業者の属する事業分野における事業者の標準的な販売費及び一般管理費に比し著しく過大と認められる販売費及び一般管理費を支出していること。
8  経済事情が変化して国内における生産業者の出荷の状況及び卸売物価に著しい変動が生じたときは,これらの事情を考慮して,前項の金額につき政令で別段の定めをするものとする。
9  この法律において「不公正な取引方法」とは,次の各号のいずれかに該当する行為であつて,公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち,公正取引委員会が指定するものをいう。
一  不当に他の事業者を差別的に取り扱うこと。
二  不当な対価をもつて取引すること。
三  不当に競争者の顧客を自己と取引するように誘引し,又は強制すること。
四  相手方の事業活動を不当に拘束する条件をもつて取引すること。
五  自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引すること。
六  自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引を不当に妨害し,又は当該事業者が会社である場合において,その会社の株主若しくは役員をその会社の不利益となる行為をするように,不当に誘引し,そそのかし,若しくは強制すること。
10  この法律において「子会社」とは,会社がその総株主(総社員を含む。以下同じ。)の議決権(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株式についての議決権を除き,会社法 (平成十七年法律第八十六号)第八百七十九条第三項 の規定により議決権を有するものとみなされる株式についての議決権を含む。第四章において同じ。)の過半数を有する他の国内の会社をいう。

第八条  事業者団体は,次の各号の一に該当する行為をしてはならない。
一  一定の取引分野における競争を実質的に制限すること。
二  第六条に規定する国際的協定又は国際的契約をすること。
三  一定の事業分野における現在又は将来の事業者の数を制限すること。
四  構成事業者(事業者団体の構成員である事業者をいう。以下同じ。)の機能又は活動を不当に制限すること。
五  事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせるようにすること。
2  事業者団体は,公正取引委員会規則の定めるところにより,その成立の日から三十日以内に,その旨を公正取引委員会に届け出なければならない。ただし,次に掲げる事業者団体は,届け出ることを要しない。
一  特別の法律の規定に基づき設立された事業者団体のうち,次のいずれかに該当するものとして政令で定めるもの
イ 当該法律で定められた目的,事業又は業務等に照らして,前項各号の一に該当する行為を行うおそれがない事業者団体
ロ 小規模の事業者若しくは消費者の相互扶助を目的として設立された事業者団体又はその健全な発達を目的として設立された事業者団体
二  小規模の事業者の相互扶助を目的として設立された事業者団体であつて,前項各号の一に該当する行為を行うおそれが少ないものとして政令で定めるもの(前号に掲げるものを除く。)
三  手形法 (昭和七年法律第二十号)及び小切手法 (昭和八年法律第五十七号)の規定により指定されている手形交換所
3  事業者団体(前項各号に掲げるものを除く。次項において同じ。)は,前項の規定による届出に係る事項に変更を生じたときは,公正取引委員会規則の定めるところにより,その変更の日の属する事業年度終了の日から二箇月以内に,その旨を公正取引委員会に届け出なければならない。
4  事業者団体が解散したときは,公正取引委員会規則の定めるところにより,その解散の日から三十日以内に,その旨を公正取引委員会に届け出なければならない。

第八条の二  前条第一項の規定に違反する行為があるときは,公正取引委員会は,第八章第二節に規定する手続に従い,事業者団体に対し,当該行為の差止め,当該団体の解散その他当該行為の排除に必要な措置を命ずることができる。
2  第七条第二項の規定は,前条第一項の規定に違反する行為に準用する。
3  公正取引委員会は,事業者団体に対し,第一項又は前項において準用する第七条第二項に規定する措置を命ずる場合において,特に必要があると認めるときは,第八章第二節に規定する手続に従い,当該団体の役員若しくは管理人又はその構成事業者(事業者の利益のためにする行為を行う役員,従業員,代理人その他の者が構成事業者である場合には,当該事業者を含む。第二十六条第一項及び第五十九条第二項において同じ。)に対しても,第一項又は前項において準用する第七条第二項に規定する措置を確保するために必要な措置を命ずることができる。

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