法律の周辺

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片木晴彦教授の「「新会社法」について」と題する巻頭言について

2005-10-23 22:13:03 | Weblog
 広島大学の片木晴彦教授が執筆された法律時報9月号の巻頭言「「新会社法」について」を興味深く読ませていただいた。
片木教授は,ジュリスト1295号の江頭教授の論稿を引用しつつ,新会社法は公開会社中心主義から脱し,「取締役会を置かない非公開会社から出発し,株式の公開,会社の規模に応じて次第に複雑な企業組織へと規定を展開している」と評されている。そして,率直に,「この形式面の改正については,法制審議会の議論からは想像しえず,筆者も,新会社法の法案が示されてから戸惑いを覚えた1人である。」と告白しておられる。

 虚を突かれた点がいくつかある。非公開会社の名目的取締役等の責任に関する部分もその1つ。片木教授は,非公開会社について,「新会社法の下で取締役会および監査役の設置を選択した会社,またそのような会社の取締役や監査役に就任することを承諾した者は,「名目的」であるという言い訳が通用する余地はない。」と断じておられる。
なるほど,新会社法下の大会社以外の非公開会社は,あらゆる統治形態が選択可能となる。もはや,「員数あわせのために就任しました」との言い逃れは成り立たない。裁判所としても,名目的取締役等の責任につき,「悪意又重大な過失」(会社法第429条)の認定を躊躇しなければならない理由はないといえよう。現行商法を踏襲した安易な「取締役会+監査役」型の選択は要注意である。

 上記は,会社法施行後に設立した株式会社や,特例有限会社から移行した株式会社にはいえても,会社法施行時に現に存する株式会社にはいえない,という考えもあろう。しかし,果たしてそう言い切れるのかどうか。

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