法律の周辺

核心ではなく, あくまでも物事の周辺を気楽に散策するブログです。

拉致問題等に議論をすり替えた差別的発言について

2006-07-31 15:31:30 | Weblog
在日差別発言で顧客提訴/積水ハウス,社員を支援 - さきがけonTheWeb

 人権は,通常,国民の対国家防禦権としていわれるが,資本主義の高度化に伴い出現した国家類似の大規模な企業,職能団体等との関係でも保護の必要性がいわれる。
本件は,一個人の事実行為による人権侵害が関係する事案。歴史的経緯からすれば,人権の私人間適用が問題になる典型事例というわけではない。
しかし,そうは言っても,人権は全法秩序の基本原則。私人といえど周囲の人の人権に敬意を払うべきは当然である。

 本件,工事代金に対する不満を拉致問題等にすり替えた執拗なものだったらしい(ただ,相手方は差別的発言をしたことを否定している模様)。
会社の支援は工事代金が絡むだけに「会社偉し」の美談とするのには躊躇もないではない。しかし,雇用管理,あるいは企業の果たすべき社会的責任といった観点からの従業員に対する支援は,評価されるべきものと思う。

 なお,本件とは直接の関係はないが,朝鮮語による呼称と氏名権については,有名なNHK氏名日本語読み訴訟があり,この最判は,概略,氏名は個人の人格の象徴として人格権の一内容を構成し,他人から氏名を正確に呼称されることは不法行為上保護される人格的利益にあたる,とした。


日本国憲法の関連条文

第十三条  すべて国民は,個人として尊重される。生命,自由及び幸福追求に対する国民の権利については,公共の福祉に反しない限り,立法その他の国政の上で,最大の尊重を必要とする。

第十四条  すべて国民は,法の下に平等であつて,人種,信条,性別,社会的身分又は門地により,政治的,経済的又は社会的関係において,差別されない。
2  華族その他の貴族の制度は,これを認めない。
3  栄誉,勲章その他の栄典の授与は,いかなる特権も伴はない。栄典の授与は,現にこれを有し,又は将来これを受ける者の一代に限り,その効力を有する。

民法の関連条文

(不法行為による損害賠償)
第七百九条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は,これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

(財産以外の損害の賠償)
第七百十条  他人の身体,自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず,前条の規定により損害賠償の責任を負う者は,財産以外の損害に対しても,その賠償をしなければならない。

(損害賠償の方法及び過失相殺)
第七百二十二条  第四百十七条の規定は,不法行為による損害賠償について準用する。
2  被害者に過失があったときは,裁判所は,これを考慮して,損害賠償の額を定めることができる。

(名誉毀損における原状回復)
第七百二十三条  他人の名誉を毀損した者に対しては,裁判所は,被害者の請求により,損害賠償に代えて,又は損害賠償とともに,名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。

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