法律の周辺

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逃亡を防ぐための強制貯金について

2008-05-30 22:18:01 | Weblog
asahi.com ベトナム人研修生「強制貯金」被害,200人で1億円超

 労基法第18条第1項には「使用者は,労働契約に附随して貯蓄の契約をさせ,又は貯蓄金を管理する契約をしてはならない。」とあるほか,同第2項には「使用者は,労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理しようとする場合においては,当該事業場に,労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合,労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし,これを行政官庁に届け出なければならない。」とある。

記事によれば,帰国時に貯金を返す契約が多いとのこと。「強制ではない」が本当だとしても,労基法第18条第2項に照らせば,企業側が労働者の通帳等を管理するには,労働組合等との協定及び行政官庁への届出が必要になるのではなかろうか。所管省である厚労省の「好ましくない」との談話,随分と控えめなものに思える。

なお,労基法第3条には「使用者は,労働者の国籍,信条又は社会的身分を理由として,賃金,労働時間その他の労働条件について,差別的取扱をしてはならない。」とある。


労働基準法の関連条文

(均等待遇)
第三条  使用者は,労働者の国籍,信条又は社会的身分を理由として,賃金,労働時間その他の労働条件について,差別的取扱をしてはならない。

(強制貯金)
第十八条  使用者は,労働契約に附随して貯蓄の契約をさせ,又は貯蓄金を管理する契約をしてはならない。
2  使用者は,労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理しようとする場合においては,当該事業場に,労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合,労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし,これを行政官庁に届け出なければならない。
3  使用者は,労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理する場合においては,貯蓄金の管理に関する規程を定め,これを労働者に周知させるため作業場に備え付ける等の措置をとらなければならない。
4  使用者は,労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理する場合において,貯蓄金の管理が労働者の預金の受入であるときは,利子をつけなければならない。この場合において,その利子が,金融機関の受け入れる預金の利率を考慮して厚生労働省令で定める利率による利子を下るときは,その厚生労働省令で定める利率による利子をつけたものとみなす。
5  使用者は,労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理する場合において,労働者がその返還を請求したときは,遅滞なく,これを返還しなければならない。
6  使用者が前項の規定に違反した場合において,当該貯蓄金の管理を継続することが労働者の利益を著しく害すると認められるときは,行政官庁は,使用者に対して,その必要な限度の範囲内で,当該貯蓄金の管理を中止すべきことを命ずることができる。
7  前項の規定により貯蓄金の管理を中止すべきことを命ぜられた使用者は,遅滞なく,その管理に係る貯蓄金を労働者に返還しなければならない。

(賃金の支払)
第二十四条  賃金は,通貨で,直接労働者に,その全額を支払わなければならない。ただし,法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては,通貨以外のもので支払い,また,法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合,労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては,賃金の一部を控除して支払うことができる。
2  賃金は,毎月一回以上,一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし,臨時に支払われる賃金,賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(第八十九条において「臨時の賃金等」という。)については,この限りでない。

(非常時払)
第二十五条  使用者は,労働者が出産,疾病,災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては,支払期日前であつても,既往の労働に対する賃金を支払わなければならない。

(休業手当)
第二十六条  使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては,使用者は,休業期間中当該労働者に,その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。

(出来高払制の保障給)
第二十七条  出来高払制その他の請負制で使用する労働者については,使用者は,労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない。

(最低賃金)
第二十八条  賃金の最低基準に関しては,最低賃金法 (昭和三十四年法律第百三十七号)の定めるところによる。

第百十九条  次の各号の一に該当する者は,これを六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
一  第三条,第四条,第七条,第十六条,第十七条,第十八条第一項,第十九条,第二十条,第二十二条第四項,第三十二条,第三十四条,第三十五条,第三十六条第一項ただし書,第三十七条,第三十九条,第六十一条,第六十二条,第六十四条の三から第六十七条まで,第七十二条,第七十五条から第七十七条まで,第七十九条,第八十条,第九十四条第二項,第九十六条又は第百四条第二項の規定に違反した者
二  第三十三条第二項,第九十六条の二第二項又は第九十六条の三第一項の規定による命令に違反した者
三  第四十条の規定に基づいて発する厚生労働省令に違反した者
四  第七十条の規定に基づいて発する厚生労働省令(第六十二条又は第六十四条の三の規定に係る部分に限る。)に違反した者

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