法律の周辺

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成年後見人に就任してから1週間で横領する人について

2007-06-10 18:52:05 | Weblog
秋田市の男に猶予付き判決,秋田地裁 成年後見人制度を悪用 - さきがけ on the Web

 民法第853条第1項本文には,「後見人は,遅滞なく被後見人の財産の調査に着手し,一箇月以内に,その調査を終わり,かつ,その目録を作成しなければならない。」とある。
記事によれば,後見人が横領行為に出たのは就任してからわずか1週間。財産目録作成前,いや,調査着手前の犯行かもしれない。
宣告は,懲役3年,執行猶予5年(求刑懲役3年)。動機に酌むべき点はないが,介護の努力等に酌量すべきものがあるとして執行猶予がついている。しかし,成年後見人にとって身上監護は財産管理とともに本来的職務のはず。初犯だとは思うが,何だか釈然としない。
現行制度では,旧制度と異なり,後見事務等の多様なニーズに応えられるよう後見人等は複数選任が可能である(民法第859条の2ほか参照)。報酬面で被後見人等の負担は大きくなるが,後見人の複数選任の積極的な活用,もっと考えられてよいように思う。この種の事件には,複数選任 → 権限分掌あるいは共同行使による相互監視,は有効な方策。


民法の関連条文

(成年後見人の選任)
第八百四十三条  家庭裁判所は,後見開始の審判をするときは,職権で,成年後見人を選任する。
2  成年後見人が欠けたときは,家庭裁判所は,成年被後見人若しくはその親族その他の利害関係人の請求により又は職権で,成年後見人を選任する。
3  成年後見人が選任されている場合においても,家庭裁判所は,必要があると認めるときは,前項に規定する者若しくは成年後見人の請求により,又は職権で,更に成年後見人を選任することができる。
4  成年後見人を選任するには,成年被後見人の心身の状態並びに生活及び財産の状況,成年後見人となる者の職業及び経歴並びに成年被後見人との利害関係の有無(成年後見人となる者が法人であるときは,その事業の種類及び内容並びにその法人及びその代表者と成年被後見人との利害関係の有無),成年被後見人の意見その他一切の事情を考慮しなければならない。

(後見人の解任)
第八百四十六条  後見人に不正な行為,著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由があるときは,家庭裁判所は,後見監督人,被後見人若しくはその親族若しくは検察官の請求により又は職権で,これを解任することができる。

(後見人の欠格事由)
第八百四十七条  次に掲げる者は,後見人となることができない。
一  未成年者
二  家庭裁判所で免ぜられた法定代理人,保佐人又は補助人
三  破産者
四  被後見人に対して訴訟をし,又はした者並びにその配偶者及び直系血族
五  行方の知れない者

(財産の調査及び目録の作成)
第八百五十三条  後見人は,遅滞なく被後見人の財産の調査に着手し,一箇月以内に,その調査を終わり,かつ,その目録を作成しなければならない。ただし,この期間は,家庭裁判所において伸長することができる。
2  財産の調査及びその目録の作成は,後見監督人があるときは,その立会いをもってしなければ,その効力を生じない。

(財産の目録の作成前の権限)
第八百五十四条  後見人は,財産の目録の作成を終わるまでは,急迫の必要がある行為のみをする権限を有する。ただし,これをもって善意の第三者に対抗することができない。

(成年被後見人の意思の尊重及び身上の配慮)
第八百五十八条  成年後見人は,成年被後見人の生活,療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては,成年被後見人の意思を尊重し,かつ,その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。

(財産の管理及び代表)
第八百五十九条  後見人は,被後見人の財産を管理し,かつ,その財産に関する法律行為について被後見人を代表する。
2  第八百二十四条ただし書の規定は,前項の場合について準用する。

(成年後見人が数人ある場合の権限の行使等)
第八百五十九条の二  成年後見人が数人あるときは,家庭裁判所は,職権で,数人の成年後見人が,共同して又は事務を分掌して,その権限を行使すべきことを定めることができる。
2  家庭裁判所は,職権で,前項の規定による定めを取り消すことができる。
3  成年後見人が数人あるときは,第三者の意思表示は,その一人に対してすれば足りる。

(支出金額の予定及び後見の事務の費用)
第八百六十一条  後見人は,その就職の初めにおいて,被後見人の生活,教育又は療養看護及び財産の管理のために毎年支出すべき金額を予定しなければならない。
2  後見人が後見の事務を行うために必要な費用は,被後見人の財産の中から支弁する。

(後見人の報酬)
第八百六十二条  家庭裁判所は,後見人及び被後見人の資力その他の事情によって,被後見人の財産の中から,相当な報酬を後見人に与えることができる。

(後見の事務の監督)
第八百六十三条  後見監督人又は家庭裁判所は,いつでも,後見人に対し後見の事務の報告若しくは財産の目録の提出を求め,又は後見の事務若しくは被後見人の財産の状況を調査することができる。
2  家庭裁判所は,後見監督人,被後見人若しくはその親族その他の利害関係人の請求により又は職権で,被後見人の財産の管理その他後見の事務について必要な処分を命ずることができる。

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