法律の周辺

核心ではなく, あくまでも物事の周辺を気楽に散策するブログです。

衆議院の解散権行使について

2005-08-06 16:13:29 | Weblog
 小泉首相は,2003年9月,自民党総裁選で,持論の郵政民営化を掲げ再選された。その後,10月10日,衆議院を解散。自民党は,11月9日の総選挙で,国会運営を安定的に進めるのに必要な数の議席を獲得した。

 ここで時間を8カ月程巻き戻したい。
同じ年の1月,綿貫民輔衆議院議長(当時)と小泉首相との間で,衆議院の解散についてやり取りがあった。ご記憶の方は少ないかも知れない。
このとき,綿貫衆議院議長の「7条解散は,政府が勝手に解散をやることを意味するが,そのようなルールはない。国民主権の現憲法では,行政府が立法府に[解散を]命令するのは考えられない。」との発言に対し,小泉首相は,「これまで慣例でほとんどが7条解散だった。国会で内閣不信任案が可決されたときも69条じゃなく,7条解散だったのではないか。いずれにしても[今]解散する考えはない。」と反論していた(1月21日,同22日付けの読売新聞参照)。

綿貫氏は,現在,議長の地位を離れている。しかし,現在も,お2人の考えは変わっていないものと思われる。

 解散権の所在については,憲法に明文の規定は存しない。しかし,争いはあるものの,憲法第7条を根拠に実質的解散権は内閣にあると解するのが多数であろう。
解散権行使の限界論については,7条説は無限定説(非限定説)と親和的,と見るのが条文解釈としては自然だ。
しかし,これについては,解散の民主的契機,国会と内閣の対立(紛争)解決機能などのバイアスがかかり,以下の場合に限定されると説かれることが多いように思う(芦部信喜『憲法』(第3版高橋和之補訂)の306頁参照)。

1 衆議院で内閣の重要案件(法律案,予算案)が否決され,または審議未了に なった場合
2 政界再編成等により内閣の性格が基本的に変わった場合
3 総選挙の争点でなかった新しい重大な政治的課題(立法,条約締結等)に対 処する場合
4 内閣が基本政策を根本的に変更する場合
5 議員の任期満了時期が接近している場合

 さて,8日(月)の参議院本会議での郵政民営化法案の採決はどうなるのだろうか。また,その結果を受けて,小泉首相はどのような判断をされるのか。

それにしても,「良識の府」などといわれた参議院の今の惨状はどうだ。

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『一問一答 新・会社法』 雑感 7

2005-08-06 12:24:31 | Weblog
 『一問一答 新・会社法』の第2章第3節「株式」(Q58~Q60),同第4節(Q61~Q67)にザット目を通してみた。精読は後日ということで,感想というか,気付いた点を少し。

1 株主名簿管理人の創設

 Q59の2に,「会社法においては,名義書換代理人が,名義書換業務のみでなく,名簿の作成,備置きをも行うものであることから,これを「株主名簿管理人」と称することとした(会社法123条)。」との記述がある。
単なる役名の変更というのではなく,職務の実質にあわせた変更のようだ。
また,取得条項付株式(会社法第107条第2項第3号ホ,同第236条第1項第7号ニ)の関係で,株主名簿管理人は,株主名簿と新株予約権原簿に関する事務を共通しておこなうこととされた(会社法第251条)。 

2 基準日後に株式を取得した株主の議決権行使

 Q60の1に,「株式会社は,基準日後に株式を取得した者の全部または一部を議決権を行使することができる者と定めることができる(会社法第124条4項)。」との記述がある。
また,後段には,概略,「この決定については,基準や要件が定められておらず,株式会社の裁量に委ねられることとなるが,株主平等原則の規律には服する」旨,記述がある。
ただ,124条4項但書の「ただし,当該株式の基準日株主の権利を害することができない。」は,具体的にはどのように機能するのだろうか。基準日後の新株発行,自己株式の処分などが,この規律の対象外であることは明らかだが・・・。

3 株式譲渡に係る承認手続

 現行法の下では,株式譲渡制限は例外→法の定めより制限を加重することはできない→株主総会を承認機関とすることはできない,と考えるのが一般的である。
しかし,これについては,商法第232条第1項,同第236条等の改正により,反対説も勢いを増しつつあった。
Q61の1には,「株式の譲渡に係る承認手続については,譲渡を承認する機関について,定款で別段の定めができることとしている(会社法139条1項ただし書)。」との記述がある。
会社法では,承認機関は,原則,

 取締役会設置会社の場合  取締役会
 上記以外の場合        株主総会

となるが,定款の定めにより,例えば,承認機関を代表取締役とすることも可能となった。
要綱第2部「株式会社関係」第4「株式・新株予約権・新株予約権付社債関係」の1(1)の(注2)には,別段の定めにつき,その他の例示がある。

4 自己株式の取得

 自己株式の取得のケースについては,会社法第155条が規定している。
大幅な見直しがされたのは,同第3号の「株主総会の決議によって,市場取引・公開買付(会社法第165条参照)以外の方法で自己株式を取得する場合」である。Q62及びQ63もこれに関する問いである。
これについては,

a すべての株主からの申込を受ける手続(会社法第158条)
b 特定の者から買い受ける際の手続(会社法第160条)

に整備したうえ,bにつき,会社法第161条,同第162条,同164条において,他の株主が自己を売主に加えるよう請求できないケースを規定している。

5 親会社・子会社概念の見直し

 会社法では,親会社・子会社概念につき,a 対象となる法人を株式会社に限定しない,b 判断基準として実質基準を採用する,といった見直しがされた。
Q65の注書きに,「実質的な支配の基準としては,連結計算書類の連結対象となる法人の範囲と同等のものとする予定であるが,具体的には法務省令で定めることとしている。」との記述がある。

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