天気の変わりやすい秋、
この日は久しぶりに一日快晴でした
風に飛ばされた落ち葉を踏みしめながら
もうすぐそこまで、来ている冬を感じたりもします。
土門拳記念館で今 開催中の
企画「出会いの結実----- 女優と文化財」
を見るのがこの日の目的
昭和39年から40年にかけて 月刊誌「婦人公論」
の表紙を飾った 女優と文化財をテーマにした写真です。
この頃 東京オリンピックの開催もあって
外国人に日本の文化財を紹介したい。。。という
目的があったようです。
一流女優と国宝級文化財----こんな興味深いテーマがあるでしょうか?
土門の写真の中でも この仕事は異質だったようです。
古典と現代の融合、女優の美しさと文化財の威風堂々たる
佇まいが
スバラシイのです!
「浜美枝さんと信楽の大壺」
鑑賞目的でなく焼かれた あくまで
農民の日用雑器としての壺
豪快で原始的な存在感と
浜美枝の若さと美しさ-----対比のおもしろさに目を奪われます
素焼きの素朴な土色と 彼女の鮮やかなグリーンのワンピース
ボリュームのあるネックレスといい、
観た後の
強いインパクトがいつまでも脳裏から離れません
他にも印象的な写真がいくつもあります
たとえば
「若尾文子さんと千手観音」
この時の撮影エピソードを土門はこういいます
シャッターを切るときの「閃光の明るさ、千手観音に劣らない
若尾文子のあでやかさに
撮影を見学していた群衆は一斉に嘆声をあげた-----」
そのシーンを想像しただけで、鳥肌が立つようです。
千体の同じ千手観音が並ぶさまは、
一大交響楽を見る思いだったようです。
しかしその後に、
「冷たいレンズは、その感激の一瞬を
十分に捉え得てくれないようだ-----」とも続けています。
真っ赤なドレスを身に着けた若尾文子と
暗がりに重厚な輝きを放つ千手観音----黒をバックにした
二つの被写体の存在感は 言葉にするのも
難しいのですが、土門ですら、レンズではその
すべてを表現しきれていない、、、というのですから
どれほどの美しさだったのか、はかりしれません
「岩下志麻さんと日光東照宮本殿唐門扉」
これも非常に印象的です
土門は日光東照宮を、神社というより「廟」である。と言います
装飾過剰な手法は建築物というより工芸品であるとも----
しかし、そんななかでも、この唐門は簡素な白と黒で構成され
抑えた華やかさが、むしろ一際、目を惹くのです
それをバックに佇む 岩下志麻は
黒地の着物に白い帯
アシンメトリーにまとめたヘアスタイル-------
何とも言い難い 滲み出るような美しさが
唐門と見事にリンクしています。
あえて引く事の美学-----過剰になり過ぎない
表現が、最大限の魅力を表しているのですから、
その潔さの前に、身動きできなくなるような威光すら、感じてしまうのです。
そして女性なら、きっと気になる
当時の女優のヘアメイク
目尻を跳ね上げたアイラインや
後頭部をふんわりさせたセンターパートの前髪
など
今に通じる かわいらしさがあるんです。
そういった点も楽しめるかもしれません。
日本の歴史そのものといえる国宝級文化財の前に
一流女優が立った時、
威厳ある東寺の帝釈天ですら
むっつりした表情が、照れ隠ししている様にみえるのですから
何とも不思議です(笑)
秋晴れの日差しが 気持ちイイ お部屋で
古典と現代の対比の妙を楽しんでみてはどうでしょうか?