Heart and heart

ありきたりになりがちな毎日をオンリーワンな一日に

箱入り息子の恋

2013-09-29 18:12:22 | 映画

     市役所勤め、彼女いない歴=年齢
     お昼は、家が近いのでそこで昼食をとり
     仕事仲間との付き合いも無く----
     無遅刻・無欠席ではあるが、13年間
     仕事の異動も昇格もなし・・・・


     そんな 天雫健太郎(あまのしずく けんたろう)
     が初めて本当の恋をしたら・・・・


     見た目がイケてないだけに、おそらくたくさん損をしてきたであろう
     彼----見た目だけで判断されれば、おのずと対人関係にも
     臆病にもなり、気づけば、親が本気で心配するほど
     恋愛や結婚というものとは縁遠くなっていました。


     しかし、初めて恋をした相手は盲目の女性----菜穂子

     健太郎はどんどん 菜穂子の事が好きになっていきます

     盲目の娘の将来を心配し、結婚相手にはハンデを補うにふさわしい相手を---
     と思うあまり、ナーバスになる菜穂子の両親

     35年 彼女なしの息子、しかも家計図が残るほどの天雫家の血筋を
      自分の代で、絶やせないと躍起になる健太郎の両親-----

     一見 親離れ 出来ない子供二人のようですが、
      実は 親が子離れ出来ていなかったのかもしれません。

     それは、二人が出会ってからは、どんどんお互いの思ったように
      行動を 起こし自分の意見をしっかり 互いの親にも言えるように
      なる事からも分かります。。。




     とにかく 健太郎の一生懸命さと菜穂子のかわいらしさが
      時におかしく、切なく、映画の全面にちりばめられています。

     母親の車を待っている雨の中の菜穂子を
      傘が無くて 雨宿りしている女性と思った健太郎は、菜穂子に自分の傘を
       差し出し、何も言わずにその場を立ち去ります。。。。

     傘に書いてあった名前で、それは結局、
     後日二人が出会うきっかけになったのですが。。。。。
      それからしばらくして、ある事情で骨折してしまった健太郎は
      会社のかえり 急な雨に降られ傘を差そうとして
      松葉づえのせいで バランスを崩し 道で倒れてしまいます。

     こんな時 傘を差して一緒に隣りを歩いてくれる菜穂子がいたら。。。
      と、
      健太郎は彼女の存在を強く感じたのかもしれません

     目が見えなくても 菜穂子は自分の本質を見抜いてくれて
      自分を一番に理解してくれると思った健太郎。

     目が見えない、菜穂子のハンデ・・・こうして一時的に
     あしが不自由になってしまった自分----互いが必要としているもの
      を補い合える、存在である事を確信したのだと思います

      アスファルトに 仰向けに倒れる 健太郎に
      雨のしずくが容赦なく打ち付けます・・・・


     全編 笑って 泣けてキュンとくる映画です
     
     まるで 自分のこころの汚れも雨に洗い流されていくようです。(笑)

     人を好きになるだけで 世界がこんなにも 広がり
      自分がこんなにも変わるなんて。。。聞くもの、触れるもの、そこに漂う空気すら
      違ってしまうのです。。。

    

       
    

     
      

     
      
   
        

アメリカ通り

2013-09-28 15:34:49 | 映画

      芸術の秋
      各地で音楽やアートなどのイベントが目白押し
      の季節-----
      10/10~10/17まで、いよいよ
      「山形国際ドキュメンタリー映画祭」が始まります。

      山形の街の中心部
      9つの会場で1週間にわたって
      毎日 世界のドキュメンタリー映画が上映されます。

      せっかく今、山形に住んでいるので
       行ってみたいと思ったのですが、
       スケジュールが合わずがっかりしていたところ。。。


      山形挙げての最大の映画のイベント
      に先駆けて、地元でプレイベントを
      行うとの事で行ってきました

      この日は2009年の映画祭で
      小川紳介 賞を受賞した「アメリカ通り」の上映です


      監督はキム・ドンリョン


      米軍基地が面積の40%を占める
      東豆川(トンドゥチョン)市の一角にある
      「アメリカ通り」ここで、ロシア人やフィリピン人の女性たち
       が働き、「不法就労」の摘発や強制送還が絶えない
       現在を映します。

      カメラは、米軍のナイトクラブで働く女性たちの
       プライベートをそのまま、映しだし
      あえて、仕事をしている様子では無いところ
       に彼女たちの本音が見えてくるのです。

      アメリカ兵の子供を3回中絶しているロシア人の女性
      アメリカ通りに40年住み続ける身寄りのない韓国人のあばあさん
      アメリカ兵との間に生まれた子供の親権をめぐって戦う
       フィリピン人女性-----
      実にたくさんの、アメリカ通りに暮らす
       女性たちの生き様を見せてくれます。

      彼女達は皆 生きるために働いているのです
      
      監督のキムさんは、
      「この作品を企画したのは、社会的現実を知らせたいからではありません。
       ---------私が感じた彼女たちの生活のリズムや
         抱えている感情、彼女達から受けた感動を伝えたいと
          思ったからです---------」と言います

        あるロシア人の女性は、働いていたクラブを辞め
        工場に勤めるのですが、そこで知り合った男性に性的暴力とDV
         を受け、逃げるようにアメリカ通りに戻ってきます。。。。
        そして、彼女は「生きてさえいれば、また働ける・・・・」
        といってカメラに笑顔を見せてくれます

       別の女性は、大学に進学したかったが家庭の事情でそれも
       かなわず、こうして、自力で生きている事を・・・
        「決してやりたい仕事ではないけれど
         納得してやっている事と嫌だけれど仕方なくやっていること
         の区別は出来る--------偏見で人を見る事は辞めてほしい-------」と
         語ります。

       たくさんのそんな 女性の生き方に監督同様 
        見ている側は感動をうけます。
 
       時には こころの奥をグッと掴まれるような
        気分になる事もあるのですが、彼女たちの寂しさや、悩み
         生きがいは、どの女性も同じである事が分かります。

        誰にも、親がいて、子供がいて 愛するひとがいます。
         さらに彼女たちは今、置かれている現実にしっかり向き合い
          逃げずに生きているのです。生まれた場所から
         遠く離れた韓国「アメリカ通り」で
        命を繋いで生きていこうとする、その覚悟が

         私たちのこころを強く揺さぶってきます
       
        そして寂しい時には涙を流し
         友人を想い、子供を守るために全力を尽くします

        「人生はタイヤと同じだ・・・転がりはじめたら止める事ができない----」
         劇中そんな言葉が出てきます。。。そして毎日がクリスマスではない。。。とも。。。

        アメリカ通りに暮らす彼女たちが、人生はそうたやすく
         思い通りにいかない事を あらためておしえてくれているようです

        そして、私自身、自分の往生際の悪さに苦笑いしてしまうのです。。。。


        ドキュメンタリー映画は見終ったあと、どっと疲れる事があります
         現実から目を背けるな・・・・と必ず言われるのですから。。。

         しかし同時に、
         また観たいと思わせるのがドキュメンタリー映画なのです。

         ノンフィクションの人生ほど興味深いものはありません
         
         ちなみに今年はキム監督の「蜘蛛の地」という作品が上映予定だそうです

        「山形国際ドキュメンタリー映画祭」楽しみです!!!
       
         
          

      
       
        

山王アートキャンパス 2013

2013-09-26 18:44:23 | アート

     鶴岡の中心市街地、山王通り
     かつて、繁華街として栄えた通りも
     今は、車が通過してしまう通りになってしまったようです

     そこで、この街をアートで盛り上げようと
      始まったのが「山王アートキャンパス」

     東北芸工大の学生さんや卒業生、山形県内で活躍している
     アーティストが、ここで作品展示を行います。
     それは、日枝神社だったり空き店舗だったり
     映画館だったり。。。。


     たまたま、行った映画館で
      こんな作品を目にしました。。。




     こんな風に描かれていたんですね。。。
     大作です。


      外だけでなく
      エントランスにも大きな作品が・・・・
      タイトルは、「アニマルパレード」

      鮮やかな色使いが特徴です。

      『アニマルパレード』

      「動物も植物も空想上の生き物も等しく友達だった子供の頃
      あの頃は世界のすべてが味方だった。
      その世界では魔法も使え動物とも話せるのだ。
      誰にも教えない、私だけの密やかな世界---------------土井沙織」


     アーティストの土井沙織さんは
      東北芸工大の卒業生-----
      上野の森美術館大賞展で入選したり
      アートフェア・トリエンナーレなどに作品を出品したり
       精力的に活動なさっているようです。

      映画もある意味、現実逃避
       木をふんだんに使った 素敵な映画館のエントランスに
       ぴったりの夢のある作品です。
       森に迷い込んだ気分になりますよ。。。

      他の作品も見てみたかったのですが
       今回は難しいようです。。。来年また違う作品を見てみたい!

      街を愛する人々の気持ちが熱く伝わってきます
       ホントに素敵な通りです。。。。
      


     
     

かもめ②

2013-09-25 11:06:04 | アート

      今回の「かもめ」----キャストが贅沢です

      主人公の「トレープレフ」----生田斗真
     
      父親がいない環境での
      母親へ対する愛の大きさも、今回のお芝居の鍵

      恋人ニーナへの失恋で最後には命を自ら断つのですが
      もしかすると それはだれかに愛されたい思い
       の強さによる究極の自己愛ではないかと
      思われます・・・

      生田斗真さんがまた純真に、悩めるトレープレフを演じています。


      トレープレフの母親「アルカージナ」-----大竹しのぶ
      
      本能に素直な女性----それは、息子より愛人トリゴーリンへ
       常に意識が向いている事からも分かります


      トレープレフの恋人「ニーナ」------蒼井優
    
       女優志望で、アルカージナの愛人、作家トリゴーリンに恋をして
       しまいます。最後はトリゴーリンとその子供も失い
       トレープレフにも自ら別れを告げるのですが
        女優として生きる、自分の人生の目的を全うしていく
         強さを見せてくれます


       そして「トリゴーリン」-----野村萬斎
        作家である彼は、
        書かなければ・・・という意識にいつも囚われ
         取り憑かれています
        アルカジーナやニーナの愛以上に
        彼にとっては、大切なものがあるようです。。。

        これは、チェーホフ自身の分身です

        かもめの登場人物には大抵、実在のモデルとなるひとがいます 

       トレープレフはニーナと母親が大好きで 母親とニーナはトリゴーリン
        に夢中になり----その他の登場人物も
        思いが空回りし、まったく噛み合うことがないのです。。。。

       生田斗真演じるトレープレフ、蒼井優演じるニーナ、いずれも
      (かもめ)のように
         若くて自由に空を飛び回りながら
         まったく違った人生を選択していきます。。。
       

        医学部を卒業したチェーホフは、医師として働きながら
        作家活動を続けるのですが、30代に手がけた「かもめ」
         がぺテルブルクで大失敗します。

       「たとえ700年生き永らえようとも
         もう戯曲は書かない」とその時、
         彼はこころに決めたといいます
        しかし、2年後、モスクワの前衛的、演劇集団の公演で
        「かもめ」が演じられ、それが大成功をおさめるのです

       そこからは周知のとおり、伝説的 劇作家チェーホフの誕生でした。

       44歳で亡くなった若き作家はそれまでに
       言わずと知れた
        多くの名作を生み出します。

      「人生をあるがままに描く」と言っていた作家は
        医師として働く傍ら「孤独と自由」を
        人生の本質と捉え、そこに必要なものが「ユーモア」
        であると感じていたようです。。。

       これが「かもめ」が喜劇といわれる所以であり
        人生は一生懸命生きるほど滑稽なのかもしれません。

        しかし、どうせ生きるなら少し 滑稽なくらいがいいですよね。。。。

       登場人物の一部分に、自分や周囲の人物を重ね合わせ
        ------100年以上にもわたって、観客はこの
          戯曲に夢中になってきたのかもしれません
       
       

                             

かもめ

2013-09-24 11:44:37 | アート
     Bunkamuraシアターコクーンで上演されていた
     舞台「かもめ」


     原作は言わずと知れたロシアの劇作家チェーホフ----
     ドストエスキー・トルストイ・ツルゲーネフらと
      ともにロシアを代表する
       作家です。。。

     そのチェーホフの「かもめ」---彼の初期の作品ですが
      現在でも、世界で繰り返し再演されている事からも
       その人気の高さがうかがえます。

     「芸術家のなすべきことは、
        問題の解決を見出すことではなく
        問題を正確に提示することです------チェーホフ」


     一見、悲劇と思えるこのお話。。。しかしチェーホフは喜劇である
      と言い切ります。
     
      登場人物はいわば皆 自己中心的、それぞれが向ける愛情の方向も
       また一方的で一向に噛み合う事がないのです。

      しかし、皆 真剣であればあるほど、その姿に
       「生きていく事の滑稽さ」を感じる事が出来るのだと思います

       作品を観た誰もが、そこに
       自分と照らし合わせられるところがある------
        という事が、
       100年以上も前の作品であるにも関わらず
       今もこうして上演され、支持されている
       理由なのかしれません。。。

      「人生には筋はありませんよ。
        人生にはすべてがまざり合っています-----
        深いものと浅いもの、偉大なものとくだらないもの、
        悲劇的なものと滑稽なものとが。--------チェーホフ」


      舞台の上で起こっている事を 客席から俯瞰していると
       いたって真剣であるが故の登場人物の
       滑稽さに思わず笑いが起きますが

       実際 劇場を出れば それと同じくらい滑稽な日常が
        そこに存在しているのです。