友人のF氏から枝豆と柿をもらってきた。
彼の家は先祖伝来の畑があるのだ。
もらった枝豆は黒枝豆と言うそうだが、見た感じは
緑色のまったくの枝豆だ。剥いてみると、豆がちょっと
黒ずんだ薄皮に覆われていた。ほっとくと鞘ごと
黒くなるそうである。
「殺虫剤使ってないから虫食いが多いよ」と彼が言った通り、
お見事な虫がお先にむさぼっていたのが多々あったので
みんな剥いて食べた。
冷凍の枝豆しか食べてなかったので、ワイルド
だったが、生の採りたてはやっぱり旨かった。
「柿はまだちょっと早いんだよね」と彼が言う通り
そばに生っていた柿は全体には熟れていない。
それでも、色づきがいい柿を選んで7~8個
いただいた。
家へ帰って、1個だけ完熟で柔らかくなったのが
あったので、台所で食べてみると、「うんま~!」と
思わず叫んでしまった。
すると、その声を聞いた身内が飛んできて、
「あ~何食べてるの」と発見され、「美味しそう~」
と言うが早いか、パクリと残りを口に入れ「旨~い!」
同じく絶叫した。
しかし、一口ではもの足りなかったのか、「あ~こんなにある」
と、もらってきた柿を袋から取り出している。
「そっちはまだ早いよ」というと、「けっこう熟れてるの
あるよ」と言って何やらゴソゴソ…。
しばし、間があって…「ん~むあ~!!!」と人間の声とも
思えないうめき声に近い声が聞こえてきた。
見れば顔が梅干しばあさんになっている。「エ~、何なんだ…」
とわたしも同じのをパクリ!「んごお~!!!」
同じような声がしぼり出て、梅干し爺さんになってしまった。
ものすごく渋いのである。
彼の一家は、柿が嫌いでほとんど食べないせいか
渋柿かどうかも知らなかったらしい。
しかし、食べた熟柿は、「こんなに旨いのもらっていいの?」
とマジで思ったほどで、甘柿の比ではなかったのだ。
調べてみると、甘さは渋柿のほうが勝っているという。
だから渋みの取れた干し柿などは、あんなに甘いのだ。
ということは、そのまま熟れさせればあの旨さが
得られるに違いない。
しかし、我ら凡庸のつらさは、じっと待つという崇高な
時間を過ごせないところにある。
目の前に青いニンジンをぶら下げられた駄馬の
ごとくなので、何とか早く甘くできないかとネット検索で探した。
干し柿は出来そうもないので、他の方法を探すと
一番簡単なのが、柿のヘタの部分にアルコールを
垂らす、というのがあった。
全部の柿をひっくり返し、愛飲の焼酎をヘタに垂らした。
翌日見てみると、気のせいか一番赤かったのが
すっかり深紅近くになっている。
「アハ…柿が酔ってる」何だかおかしかったが、すぐに
パクついてみると「旨い!」渋みは全然感じなかった。
早くても2~3日はかかると思っていたので、
焼酎の効果を実感した。
これを勝手に「酔い柿」と命名し、「次はお前さんかな…」
残りで一番赤くなっている柿を指差した。