鯛の胡散くささが正解だったのか、それとも日頃のイワシ腹には高級すぎたのか…。
鯛を食べたその夜、全身にジンマシンが出たのである。何だか痒いなあ…と首筋、両腕、お腹、両足、と
掻いていて、ふと袖をめくって見ると、蚊に刺された様な膨らみの帯が、やや赤みをおびて
広がっているではないか。それが全身に及んでいるのだ。
「ゲッ何だこりゃ!」どうみてもジンマシンである。わたしは掻くのを止めてジッと我慢した。
ジンマシンなど滅多に出たことはなく、思い出すだけでもン十年前に生サバを食べた時出たっきり
なのである。つまり、生涯に一度っきりだけなのだ。
まさしく、鬼のかく乱か…。原因を思い巡らしたが、鯛以外に生っぽいものは食べていないのである。
その鯛とて、皮目に熱湯をサーっとかけて、身がシュルシュルっと縮んだらサッと氷水に浸けて
キュッと身が締まったところで、取り出して水気を拭きとって刺身にするのである。
皮つきのコリコリっとした食感がたまらない一品に仕上がるのだ。もちろん中は生のミディアム仕立てなので、
アタッたとしても不思議ではないのだが…、家族全員が同じものを食べているので、わたしだけにジンマシンが
出るというのも釈然としないのだった。
翌日、病院に行って診てもらうころには、腫れもかなり引いていたのである。皮膚科の女医先生によると、
このように1日で腫れが引くのは、明らかにジンマシンだと思うが、原因が鯛かどうかはわからないと
言うのである。そして、高名な大学病院のその先生が「正直、ジンマシンの原因は医学的にはわかっていない
のです」と、のたもうたではないか。「しばらく、様子をみてください」で、薬も何も出ずに、おしまい…
だったのである。
まあ、大したことなくて良かったのだが…、はてさて、すると原因は一体…あれやこれと考えつつ
家路についたのだった。