つぶや句

夢追いおっさんの近況および思うことを気まぐれに。

又あいつがやってきた

2006-11-12 03:50:59 | 動物ウオッチング
工場での仕事を終え、三階のロッカーで着替えをすべく、
外階段をトントンと登っていくと、作業帽の
つばが何かに当たった。「ン…」と顔を上げると、な・なんと
カラスがトントンと手摺りに飛び跳ねたではないか。

つまり手摺りに止まっていたカラスに私の作業帽のつばが
当たったのである。「ゲッあいつか」とっさにそう思った。

もう1年になるか、かなり近づいても逃げないカラスが
やって来て、話しかけた私にサンマの頭のプレゼントを
置いていったのである。(そう思っている)

帽子のつばが当たるような距離でも逃げないのは、以前
このブログでも書いた「カラスなあいつ」に違いない。

やつは二三跳びしただけで、手摺り近くのフラットな屋根に
乗り移っている。距離にして2~3メートルだ。

「おまえかあ」私は例によって話しかけた。「この前も
言ったがここは人間の行き来するとこなんだ、
そんな近くに来てどうするんだ、邪魔だから
とっととあっちへ行きな!」と言ってシッシと手で払う格好をすると、
くちばしをコシコシっと屋根の角にこすり付けると
「ウガーウガー」と何だか反論でもするように、声をあげた。

「うっさいぞ!もう知らん!」と言い放つと
私は階段を登って三階のロッカーで着替えした。

着替えをしつつ、あんまり冷たくしても可哀相だな、
と少し反省した。

丁度この日会社を休んでいた人が出勤して来て、団子の
お土産を貰っていたので、「あいつにやろうかな…」とふと、
頭をよぎった。

着替えして更衣室を出ると、まだあいつはいた。
工場の二階と同じ高さの屋根に居座っている。
まるで待ち構えているかのようだった。「おい!おまえなあ
人間とカラスの間には深くて暗い川があるんだ、と言おうとして
つい深くて黒い川があるんだ」と言ってしまった。

「だからなあ、それを踏み越えちゃならねえんだよ」と妙なやくざ口調を
口走って、自分でも何を言っているのか分からなくなってきた。

やつは「ウガウガガガー」と返事らしきものを返してきた。
私はこの時と、手提げバッグに忍ばせた団子をやろうかと
バッグに手を入れたら、なにを思ったのかやつはトントントンと
こっちに向かってくるではないか。

「ちょ、ちょっと待った!」さすがにあのくちばしが目の前に
迫って来た時、おじけづいて身を引いた。

バッグに入れた手はそのままに、後ずさりするように階段を降りた。
降りた後、ほっと一息ついてやつの方を見ると、やつは、何か
口に咥えているではないか。以前サンマの頭を咥えてきたので
またそれかと目を凝らしたが、何やら白っぽいものだったので、
どうやらサンマではなさそうだったが、いずれにしろ又
何かを持って来たのである。やつを振り返りつつ会社を後にした。

家へ帰ってきた後、咥えていたあの白い物は何だったんだろうか?
もし…あの時やつに団子をあげていたら、
渡ってはいけない黒い川を渡ることになったのか…。
そうなると、やつとはだんご二兄弟になってしまったのか、
それとも、やくざな義兄弟になってしまったのだろうか…
などと、団子を食べつつカラスなあいつのことを思い巡らすのだった。

コメント
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