武本比登志の端布画布(はぎれキャンヴァス)

ポルトガルに住んで感じた事などを文章にしています。

190. パンツの修繕、パンの修繕 Conserto de cuecas e conserto de pão

2021-11-01 | 独言(ひとりごと)

 パンツの修繕をした。穴が開いたところに別の布を充てて縫った。それだけのことだがパンツの修繕など今まではしたことがない。穴が空くまで使えば充分、捨てるだけだ。

 僕は以前から結構裁縫はやる。ジーンズの裾上げだったり、Tシャツやジーンズに刺繍を施したりパッチワークをしたり。暇つぶしにごそごそと裁縫箱を引っ張り出し、針に糸を通して手縫いをする。運針縫いや返し縫い、かがり縫いなど大抵は出来る。

 中学生や高校生の頃にはミシン掛けもしていた。実家にはミシンがあったからだ。南米を旅行中にも刺繍をしたり、文字や絵柄の印刷された米の木綿布袋を市場で貰って、それでズボンを作ったりもしながら旅行を楽しんでいた。ヒッピーはそういったズボンを穿いていたから真似てみたのだ。セーターを編んだこともある。女の子みたいだが、工作も好きで何でも作ることが好きなのだ。『下手の横好き』と言うものだが。

 今はコロナ禍で帰国が出来ないでいる。帰国出来ても空港近くのホテルで2週間待機。そんなことまでして帰国しなければならない理由はない。

 それまでは毎年2~3か月の帰国をしていた。その時に日本製、特にグンゼのパンツや靴下を仕入れてくる。それが今は出来ない。日本製はヨーロッパ製に比べて頑丈だ。ヨーロッパ製の2倍も3倍も長持ちがする。ゴムが良いのだ。ヨーロッパ製は生地は未だ大丈夫でも先にゴムが伸びてしまって使い物にならなくなる。<VALENTINO CHRISTY>などとロゴ文字が書かれたゴムが伸びきっている。だからヨーロッパ製のパンツは買う気がしない。

 僕が言うパンツは昔の言い方で最近ではブリーフと言うものだ。パンツとはパンタロンから変化した単語で、本来はスラックスのことらしく、元々日本人は間違った使い方をしていたのだろう。アンダーパンツなら良いと思うが、アンダーをなくしてただ単にパンツならズボンになってしまうのだろうか。そもそもズボンも語源が曖昧ではっきりしない。

 その日本製のパンツに綻びが出始めたのだ。ゴムはしっかりとしている。穴塞ぎに別のゴムの伸びたパンツの未だ生地の良いところを切り取って接ぎ当てをした。これから冬を迎えるにあたって二重になったところは温かいだろうし、暫くはまた使える。これは他言は無用に願い候。

 俳優のアレックス・ボールドウインが10月21日、西部劇『Rust』の撮影中に誤って実弾の入った銃を発射、監督の肩を掠めて撮影監督に命中。死傷事故を起こした。小道具係が誤って撮影用の銃ではなく実弾の入った銃をアレックス・ボールドウインに手渡したものらしい。アレックス・ボールドウインにも刑事訴追の可能性も残されている。

 一方、マフィアの雇われ殺し屋で1968年と1978年に殺人を犯し(1978年の事件は連邦判事を銃殺)、終身刑となり、服役中に死去。と言う父親を持つ俳優のウッディ・ハレルソンは映画『カウボーイ・ウェイ/荒野のヒーローN.Y.へ行く』の中でニューヨークの滞在費用を稼ぐため男らしさを前面に出したパンツの宣伝モデルとなっていた。悪役、変質者やポルノ雑誌の創始者『ラリー・フリント』から大統領『LBJ ケネディの意志を継いだ男』までこなす個性派だが僕は好きな俳優の一人だ。

 ポルトガル語でパンツのことを<Cuecas>と書き<クエカ>と発音する。パソコンに<くえか>と入力し、カタカナに変換したいと思い、変換ボタンを押すと<喰え可>などと出てくる。パンツを喰うことは不可だが、パンなら喰うことが可だ。

 

 パンの修繕をした。ポルトガルのパンには時折穴が空いている。食パンやコッペパンではなく田舎のどっしりパンだ。どっしりした底には煤が付いていたりもする。風車小屋で挽かれた小麦粉で炭火のパン焼き窯で焼かれたパンだ。

 ポルトガルのパンは旨い。ポルトガルのパンの味に慣れれば他のパンでは頼りなくなってしまう。焼き立ては勿論旨いが、大きめを買って帰り残りをビニル袋に入れ冷蔵庫で寝かせると更に旨味が増す。

 そのパンに穴が空いている。僕は焼いてからバターを塗るので穴があっても一向に構わないのだが、MUZはゴーダチーズを乗せて焼くことにこだわっている。朝にゴーダチーズパンを食べないと一日が始まらないのだそうだ。パンの穴から、温められ、とろけたゴーダチーズが滴り落ちる。

 それを防ぐためにパンの欠端をパンの穴に押し込んで修繕する。これは針も糸も糊も不要だ。

 パンのことをポルトガル語で<Pão>と書く。発音は<パン>だ。多くのポルトガル語が日本語になっているがパンもその一つだろう。ちなみに日本のことを<Japão>と書いて<ジャーパン>と発音する。コロナ禍で、そのジャーパンに未だ帰国の目途はたたない。VIT 

 

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