武本比登志の端布画布(はぎれキャンヴァス)

ポルトガルに住んで感じた事などを文章にしています。

189. 左手で絵を描く Pintura a óleo com a mão esquerda

2021-10-01 | 独言(ひとりごと)

 2021年9月30日現在『速報』エンジェルス・大谷選手、5打数2安打1得点2盗塁! 『45本塁打25盗塁100得点のアリーグ初の記録』を達成!投手としては:9勝2敗、防御率:3,18、奪三振:156、試合数:23、と大谷翔平選手の大リーグでの活躍は心躍らせる。大谷選手の二刀流?或いは、武蔵の二刀流ではないが、上の絵は右手で半分、左手で半分描いた油彩。

 左手で絵を描く。右利きだが、左手で絵を描く。

 実は、もう10年も前から右手にペンダコならぬ、絵筆ダコが出来ている。痛くも痒くもないのだが、ふとした時に気になる。きょうはテレビのニュースを見ながらついついいじってしまっていた。そして普段より少し飛び出し、タコ主張している様にも思へた。10年も前から身体の一部と化しているのだが別に愛着はない。

 切除してしまおうと急に思い立った。

 爪切りを用意した。オキシフルも用意した。それにメンソレータム。バンドエイド。

 右手だから左手に爪切りを持った。出来るだけ根元まで押し込んでパチンと切除した。いや、爪ではないのでパチンとは言わない。でも爪切りだから簡単に切除が出来た。血が少し滲み出てきたがそれ程でもない。オキシフルで消毒をして、メンソレータムをたっぷりと塗った。思った程は痛くはない。四角いバンドエイドがあったので、それを貼った。左手でテープを剥がして患部の真ん中に貼ったつもりがかなり横っちょにズレて貼ってしまった。左手は右手に比べてかなり不器用なのが判る。仕方がないが血が少し滲み出てきている。

 概ね旨くいったように思う。でもほんの少しだがいつまでも血が滲み出ている。水仕事は出来ない。

 油彩を描こうとしたが絵筆がバンドエイドに触る。

 それで左手に絵筆を持った。

 左手で油彩を描くのは初めてではない。気が向けば時々はやる。いや、気が向かない時に時々はやる。

 自分では思いもよらないところに絵筆が向かったり、思いもよらない線が現れたりする。気に入らなければ消せばよい。それが面白くて時々は左手に絵筆を持つ。

 絵筆も真っ新な物よりも使い切って捨てる寸前の様な既に只の棒の様な絵筆を使う。それもまた面白い。

 ラウル・デュフィは右利きだが常に左手で絵を描いた。右手は器用すぎて面白味がないので左手で描いたのだそうだ。ラウル・デュフィの絵は面白くてそれがうなずける。

 好きな画家のひとりだ。

 僕は器用でもないし、巧くも描けない。下手くそだ。別にラウル・デュフィの真似をしているわけではない。

 右手ではその下手くそがもろに現れる。左手なら誤魔化しが効く様な気がする。誤魔化すために油彩を描く訳ではないが、油彩は何でもありなのだ。

 ラウル・デュフィは左手で描いたが、白髪一雄さんは足で描いた。カルバン・クラインは女体に青い塗料を塗ってキャンバス上を泳がせた。ポロックは絵の具を垂らした。

 どれも面白い。好きな画家ばかりだ。

 切除した筈の絵筆ダコがもし再び現れたら、その絵筆ダコで描いてみようかと思う。憎しみを込めて。いや、愛着を込めて。

 

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