武本比登志の端布画布(はぎれキャンヴァス)

ポルトガルに住んで感じた事などを文章にしています。

046. カレーのレシピ Receita da Caril

2018-11-09 | 独言(ひとりごと)

 我が家ではカレーを欠かしたことがない。
 カレーは夏には夏ばて防止、冬は風邪予防になる。食欲のない時でも食べ始めると結構喉を通るし、身体が温まり、血液の循環が良くなり、手足の先までもがシャキッとして、これほど元気になる食べ物はない、とひたすら信じきっている。

 毎日昼食は必ずカレーにして、1度に1週間から10日分ほどを仕込む。
 ポルトガルのこの場所に住み始めてしばらくたった頃からそれをずっと続けている。お蔭で風邪も寝込むほど引くことはないし、夏もエアコンなしでなんとか過ごしている。病気らしい病気もしたことがない。

 実は以前も同じようなことをやっていた。それは古く1969年から1971年の頃だ。
 僕たちははじめ海外に住むのに「インドで暮らす」のを計画していた。

 ガンジーの無抵抗平和主義。なんとも知れない未知の大地。
 サリーを身にまとい、ターバンをかぶり、往来を行く牛を神と崇め、インダス文明の湧きあがった土地に、東西の文明が交じり合い、仏教やヒンズーの遺産と共に何億もの人々が暮らす。
 赤褐色、モスグリーン、ターメリックイエローなど僕の好きな色彩に満ち、夜も昼も音が溢れ、香辛料の匂いが鼻をくすぐる。
 ジョージ・ハリソンに共鳴し、聞くレコードはラヴィ・シャンカール。

 70年の大阪万博ではインド館にしか行かなかった。そこで初めて本場のカレーを食ったのだった。
 ひと足先に友人がマドラスの近くで染織の勉強をしていたことも、僕に大きなインパクトを与えた…

 ヨーロッパを3ヶ月程で見て回り、中東を通ってインドに入り、そこで先ずは1年程暮らしてみるつもりであった。インドで暮らすのだから、朝昼晩カレーばかりを食べて身体を慣らしておく必要があると考えたのだ。
 それで出発前の布忍(ぬのせ)に借りた新婚の住いではカレーしか作らなかったわけである。まあ、幸い2人ともカレーは好物であったから、さほど問題にもならなかったし、不都合も起こらなかった。

 そしていよいよ、新潟港から船に乗り、ナホトカ、ハバロフスク、モスクワを経由ストックホルムに入った。ヨーロッパを3ヶ月で通過してインドに行くつもりがそんなに人生甘くはない。ヨーロッパとアメリカに6年を費やすことになるわけで、結局インドには行かずじまいである。
 これは良く言えば進路変更とも言うが、あるいは一種の挫折と言うべきか?

 その間は色々な事情もありカレーは欠かさず…とはならなかった。
 1年間はマクロビオティックで全く肉類や刺激物を食べる事はなかった。これも進路変更といえばそうなのかも知れない。その他は、まあ普通の一般家庭並みの食べ方だったろうと思う。

 そして日本に1次帰国した時に、ひょんなことから宮崎で飲食店を経営することにあいなった。また大きく進路変更に迫られたわけである。
 しばらくしてその飲食店のメニューをカレーのみにしてしまった。その代りカレーのバリエーションをたくさん作った。
 カレーとコーヒーとジャズの店である。時たまラヴィ・シャンカールも流した。どこかに夢がくすぶっていたのかも知れない。
 そのカレーが案外と評判(?)になり思いがけず長く続けることになった。

 その宮崎では今、2年ごとに個展を開催させてもらっている。会期中にはその頃の友人たちが訪ねてくれる。そして複数の人たちから、「あの時のカレーが旨かった」とか「忘れられない」とか「レシピを教えて」とか、お愛想にもお世辞に嬉しいことを言ってくれる。そのお世辞に悪乗りしてレシピを作ってみようかと思う。
 その頃は大量に仕込んでいたし、その頃も今も自分たちの感覚で作っていてレシピなるものもない。

 今は自分たちの食べる分だけの少ない仕込みだし、作るたびに毎回微妙に違う。そんなのも楽しんでいる。
 幸いポルトガルでは珍しい香辛料がたやすく手に入る。
 かつては香辛料を求めて世界に漕ぎ出した国である。マレイシアのマラッカやインドのゴアとも繋がっている。思いっきりスパイスを効かせてみたい。
VIT

 

01.MUZVIT カレーレシピ Receita da Caril

材料(約 14 食分) Ingredientes

02. 肉 500g(牛、豚、鶏、羊と何でもOK。宮崎では都城産若牛のばら肉を使っていましたが、現在は狂牛病事件以来、牛は控えていますので、ここでは豚の三枚肉を使う)
玉ねぎ大3個、セロリ2本、マッシュルーム10個、人参2本、ニンニク10片、生姜75g、
スパイス(ターメリック、鷹の爪6本、ローリエ10枚、黒コショー、コリアンダー、パプリカ、クミン、クローブ、バジル、タイムなど何でもぶちこむ)
オリーヴ油、マーガリン、小麦粉、塩、コショー、コンソメ、醤油少々、ポートワイン少々、カラメル微量。

 

03. トマト、キュウリ、ニンジン、ショウガ、リンゴなどの皮それにパセリの芯、セロリの硬い部分などは普段から捨てないで、良く洗って汚れや農薬をきれいに洗い流し冷凍保存しておく。この野菜くずが多い場合は上記野菜は加減する。(リンゴやニンジンの皮が多い場合は上記ニンジンは入れなくても良い。多い場合甘味が出すぎるので注意)

作り方 Modo de preparação

 

04. 肉は一口大、玉ねぎは縦にスライス更に3切り、セロリは斜めスライス、ニンニクも縦にスライス、生姜はみじん切り、人参はケンツキですりおろす。マッシュルームはスライス、じゃがいもは入れても良いが夏場は足が早くなるのでここでは入れない。入れる場合は4等分。

 

05. 中華鍋に油を引きニンニクを炒める。香りたったら引き上げ圧力鍋(8㍑)に移す。その油のまま塩、コショーした肉を焼き色が付くまで充分炒める。炒めた肉は圧力鍋に入れる。強火にし中華鍋に水を入れ洗う。洗った湯も圧力鍋に入れる。
再び油を引き玉ねぎをキツネ色になるまで炒める。マッシュルームやじゃがいもも同様に。

冷凍保存しておいた野菜の皮などに水を加えミキサーにかける。(この場合かなり充分にミキサーしなければ出来上がりで舌にざらつく場合があるので注意)その他冷蔵庫の整理を兼ねて眠っているものは何でも使う。

 

06. 圧力鍋に鷹の爪を細かくちぎって、ローリエはそのまま入れる。ここで圧力鍋の8分目までなるように。(足りなければ水を加える)

 

07. 強火で約20分、更に弱火、沸騰状態のままで半日火にかける。最低2時間は必要。

 

08. その間にルーを用意しておく。
熱したフライパンにマーガリンをたっぷり溶かし(唐揚げなどに使った油を混ぜてもOK)、小麦粉をいれキツネ色になるまで中火で炒める。それにターメリックを加えさらに焦げ色がつくまで炒める。(冷蔵庫に保存しておくと次回に使えるので多めに作る)

半日火にかけた後、鍋の圧力を抜き、蓋を開ける。水分が減っている分、水を加える。ローリエを取り出す。スパイスを入れる。塩、コショーで味を調える。コンソメを加減をみて少し入れるのも良い。

 

09. 一旦火を止め、作ったルーのとろみを見ながら、少しずつかき混ぜながら圧力鍋に入れる。仕上げは少しゆるめに。一晩寝かせると少し硬くなる。

 

10. 強火にし、醤油、ポートワイン、更にブラウンソース用カラメルがあれば入れる。照りが出るまで木べラでかき混ぜでき上がり。
ズンドウに移して冷めたら冷蔵庫に。
空いた牛乳紙パックに入れ、ぴっちりと蓋を閉め、冷凍保存しておいても便利に使える。

MUZVIT のカレーバリエーション

ガーリックカレー、エッグカレー、ベジタブルカレー、シーフードカレー、米ナスカレー、ジンジャーカレー、トマトカレー、ナッツカレー、ヨーグルトカレー、セサミカレー、カレードリア、カレーオムライス等々カレーとの相性は無限にあります。勿論カツカレーは定番。

11.米ナスカレー
米ナスは一口大に回し切りし、フライパンにマーガリンを溶かし強火で3方焼き色を付け中火で芯まで火が通るまで炒め、それにカレーを加える。

12.カレードリア
ライスとカレーをボールで混ぜあわせ、グラタン皿に移す。さらにカレーをかけ、刻んだサルサを振りかけ、上にモッツアレラ・チーズをかぶせオーブン・トースターで焼く。

13.トマトカレー
完熟トマトの皮をむき、一口大にざく切り、フライパンにマーガリンを溶かし強火で焼き目を付け、ついで中火で芯まで良く焼き上げる。別鍋で暖めておいたカレーを加える。

14.エッグカレー
フライパンにマーガリンを溶かし強火ですばやく卵をスクランブルしそれにカレーを加える。ゆで卵を刻み込むエッグカレーも旨い。とにかく卵とカレーは相性が良い。

15.カレーオムライス
ボールでカレーとライスを混ぜ合せておく、温めたフライパンにマーガリンを溶かし、2個の溶き卵を流し込む、フライパンの先の方に移動させ、へりのところ卵の中央に混ぜ合わせたカレーライスを乗せる。卵の元の方を少し折り曲げ、フライパンの持ち方を変え、皿にかぶせる様に乗せる。

16.ベジタブルカレー
玉ねぎ、ピーマン、ニンジン、セロリ、インゲン豆など野菜は全て一口大にザク切りし、フライパンにマーガリンを溶かし強火でさっと炒め、それにカレーを加える。その他ナスやトマトなど季節の野菜を好みに応じて。

ガーリックカレー
ガーリック2片の皮をむき、縦にスライス、フライパンにマーガリンを溶かし、中火で香り立つまで炒め、カレーを加える。

ジンジャーカレー
ショウガの皮をむき、縦に千切り、フライパンにマーガリンを溶かし中火で火が通るまで炒め、それにカレーを加える。時期には新ショウガも旨い。

ナッツカレー
塩味のないナッツ類(アーモンド、クルミ、カシューナッツ、ピーナッツ、松の実など)をフライパンで空焼きし、カレーを加える。それにレーズンを加えても旨い。

シーフードカレー
海老は殻をむき背わたを取り除く。イカは一口大、貝柱、白身魚も一口大にし唐揚げをしておく、フライパンにマーガリンを溶かし強火ですばやく焼き色を付け、それにカレーを加える。

(C)調理協力・MUZ


以上、カレーのレシピを作ってみましたが、肝心の水の量、スパイスの量、小麦粉の量、マーガリンやオリーヴ油の量など明確には書けませんでした。
これは毎回感覚で作っていますし、例えばチリ・ペッパー(鷹の爪)などでも、物によって(産地、収穫年)かなり辛さも違います。
又、玉ねぎの個体差(新、旧)によっても違いますし、肉の脂身のつき具合によっても違ってきます。
それによって油の量、塩の量、硬さなど味を確かめながら分量を調節しなければなりません。
上記エッセイにも書きましたが、それでも大量に仕込む場合はある程度安定はするのですが、家庭で作る量ではどうしても、一定にはなりません。
でもそんな毎回違う味を楽しんでいます。

 

(この文は2006年8月号『ポルトガルの画帖』の中の『端布れキャンバスVITの独り言』に載せた文ですが2019年3月末日で、ジオシティーズが閉鎖になり、サイト『ポルトガルの画帖』も見られなくなるとの事ですので、このブログに少しずつ移して行こうと思っています。)

 

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