武本比登志の端布画布(はぎれキャンヴァス)

ポルトガルに住んで感じた事などを文章にしています。

004. 蜂蜜

2018-10-06 | 独言(ひとりごと)

 ポルトガルの蜂蜜はいい。と言う話をどこかで聞いたことがある。
 ポルトガル国内ではアラビダ山の蜂蜜が最も上質とされている。

 アラビダ山はポルトガルで最初に指定された国立公園でセトゥーバルの西側にあり、我家からもその頂上を望むことができる。
 その中腹にはアラビダ修道院があり、かつてはそこでも蜂蜜を作っていたのだろう。

 家から広場に出てまっすぐ西へ延びている道は「ルア・ノッサ・セニョーラ・ダ・アラビダ」と言う。
 ノッサセニョーラとはノートルダム(我らが母)つまりマリアさまを指す。
 なんだかありがたいような、恐れ多いような道である。
 両側は庭付きの家が並んでいて、ホウセンカ、矢車草、薔薇、ブーゲンビリアと様々な花が咲きみだれる。
 レモンの大きな木も何本かあって、一年中実がついている。花の時期にはいい香りがする。
 その道の突き当たりにロータリーがあり、それに面した一軒の家に「自家製蜂蜜あります」という張り紙がしてある。が残念ながらそこで買ったことはない。わざわざノックしてまで買うほどは我家では使わない。
 メルカドで買う。メルカドで売っているのも同じくアラビダの蜂蜜である。

 いつも同じ場所で売台の上に 300 グラム入りの小さいビンからインスタントコーヒーの空きびんに詰め替えた1リッター入りの大きなビンまで、様々な形の違うビン 30 個程をならべて商売をしている。
 普通の蜂蜜以外にも蜂の巣をそのまま切ってビンに入れたものや、花粉をビンに詰めた物なども一緒に並べてある。
 蜂蜜のビンにはそれぞれ花や木の名前がそまつに印刷されていて「ローズマリーとその他の花」等と書かれてある。
 そのお花畑の中に巣箱を持って行くのであろうが、なるほど花によって蜂蜜の味が違って当然と言えば当然なのかも知れない。
 そう言えば色というか濃さも違う。
 その中に「ユーカリとその他の花」と言うのもある。
 ユーカリの大木の林を通り過ぎる時はいい香りがする。
 ドライブをしていても閉め切った車内までその香りは漂ってくる。
 花は見た事はないが、きっとその花もいい香りなのだろう。
 セニョーラはユーカリの蜂蜜を勧める。

 メルカドで店を出しても、野菜や魚の様に次から次に売れるものでもないらしく、そこのセニョーラはいつも暇そうに手持ち無沙汰で前を通り過ぎる人々をただ眺めている。
 毎週日曜日どこかここかで開かれる露店市でも店を出しているがやはり暇そうである。

 我家は2人家族でそれ程は使わないのだが、最近は毎朝のヨーグルトに少しだけ垂らす。
 ヨーグルトは自家製である。
 自家製と言ってもただ牛乳を暖めて 50 度に冷やした中に市販のプレーンヨーグルトを混ぜ合わせ、魔法瓶で24時間程寝かせる。と言うだけのもの。
 これが場合によってはかなり酸っぱく出来上がってしまう。
 酸っぱい物は好きな方だがそのままでは胃が飛び上がって縮こまってしまう程酸っぱい。
 それで蜂蜜をほんの茶さじ半分ばかり垂らす。その程度使うだけでめったには買わないのだが、その蜂蜜売りのセニョーラとは顔見知りになっていて、いつもあいさつを交わす。

 日本からニラの種を仕入れてきてプランタで作っている。
 毎日の味噌汁の具になったり、お好み焼きやかきあげに入れたり、春巻きや餃子を作ったりといろいろと使いみちも多くて便利である。
 結構使っているつもりでも、2人では使いきれない程よく繁る。
 そして毎年、たくさんの白い可憐な花をつける。
 その花も天ぷらにしたりもする。
 ニラの葉と同じ味だが香ばしくて食卓に彩りを添える逸品になる。

 そのプランタのニラの花にミツバチがやってくる。

 アラビダ山の方からやってくるのだろうか?マリアさまの道を通って。

 ニラの花の香りは何と言うか、食欲をそそる臭いではある。
 だが決してユーカリの様に蜂蜜に向く匂いとは思えない。
 蜂蜜のラベルで言えば、その他の花には違いないが…

 さてアラビダブランドの蜂蜜、
 最上質の味が変化してしまいませんように!VIT

 

(この文は 2002年11月号の『ポルトガルの画帖』の中の『端布れキャンバスVITの独り言』に載せた文ですが 2019年3月末日で、ジオシティーズが閉鎖になり、サイト『ポルトガルの画帖』も見られなくなるとの事ですので、このブログに少しづつ移して行こうと思っています。)

 

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