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「海洋天堂」 試写会

2011-04-15 | 映画
香港、中国で話題だった
「海洋天堂」の試写会に行く。

手一つで育ててきた自閉症の
一人息子より先に先に死ぬことが
わかった父が、何をおこなったか。
親子と周囲の人達の物語。

海洋天堂 予告篇


震災後に映画公開はことごとく延期になる。
映画館へいく観客が激減しているからだ。

映画館や映画にたずさわっている
人達にとって映画の興業を再開し、
興業を成功させなければ、極端な話
閉鎖や倒産に追い込まれる。

ミニシアター系の経営が難しくなって
いるなかで、とても難しい舵取りだ。

そのなかで「海洋天堂」は興業の成否を
占うにはとても可能性のある試金石だ。



父を演じるのはアクションスターの
ジェット・リー。脚本に魅せられた彼が
ノーギャラで参加したという話。

彼はスマトラ沖大地震に現地で遭遇したことを
きっかけに設立した「ワン基金」(壹基金)の存在。
四川大地震にもこの基金が活躍し、
今回の震災にも早速支援に動いているからだ。

それとは別に前売りチケットを買うことで
震災と障害者団体への寄付につながる
仕組みも用意されている。



この映画の魅力の一つは物語に
誇張がないことだと思う。

無理したフィクションも感じられない
ことがかえって親子や周囲の人の物語の
ドラマ性がより際立つ。

それは監督、脚本のシュエ・シャオルーが
自閉症の施設で14年間ボランティアをして
いたことが大きい。

驚くことに、この自閉症施設は
偶然「ワン基金」の第一回目の
最優秀団体に選ばれ、100万元の
寄付を受けている・・巡りあわせの
不思議さを映画をこえて感じる。

撮影のクリストファー・ドイル
(ウォン・カーウェイ監督作品の撮影)も
音楽の久石譲もとても抑制がきいている。



もう一つ不思議に感じていたのが
登場人物に描かれれている中国人の
感覚や人情が、日本人(ちょっと昔のと
いえばいいのだろうか)にとても近いこと。

身に降り掛かった不幸を自分のなかにしまい込む、
黙っても伝わるという人情の機微。

仕事場の水族館が最新式なので
日本映画を見ているような錯覚に
陥るときがある。



「海洋天堂」は海の天国の意味。
海の水、海辺の水、水族館の水、
雨の水、涙・・全編水で覆われているのも
海岸線が大変になっている東北地方と
オーバーラップする。

この夏、シネスイッチ銀座を皮切りに
全国の単館系で公開予定。