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ねがうこと、ゆだねること

故大島渚監督 63年放送『忘れられた皇軍』

2014-01-31 | 歴史
1月12日の深夜、日テレNNNドキュメント’14で、
反骨のドキュメンタリスト ~大島渚 『忘れられた
皇軍』という衝撃~」が放送された。

去年1月に亡くなった大島監督。映画・テレビのドラ
マの人と思ってたから、ドキュメンタリーも撮って
はったのが意外。



1963年8/16放送のフィルムが日テレに保存されて
おり、60年ぶりの再放送。加えて、制作スタッフ(
カメラ、音響など)、夫人で同志で女優の小山明子
さん、田原総一朗さんへのインタビューもあり、今
日の意義を問う形にもなっている。

是枝監督もインタビューに応じていて、

衝撃的でした。何かに対する否応のない怒りに
よって番組が作られることは強いんだなという
ことを学びました。

第二次大戦中に日本軍として戦った在日朝鮮人が、
日韓両政府から保障を受けられずに困窮。街頭募金
でしのいでるが、政府や議員が動かないので、直接
世論に訴えかける過程を取材している。

街頭演説のあと、彼らには酒がはいる。大島監督が
ナレーションで告げる;

心配していた通りだ。いつもこうなる。この悲しい
争い。仲間にしかぶつけることができない、やり場
のない怒り。これは醜いか。可笑しいか。




全編怒り。大島監督が書いている;

この人たちの体の傷口や生活よりも、もっと無残で
もっと悲惨なこの人たちの心の傷口であった。



どうして、彼ら(番組にでるのは10数人)には恩給などの
障害年金が補償されないのだろう。民主党の有田芳生参院
議員もこの番組をみて、

「昔話ではない。今年89歳になる李鶴来さんたちは、サン
フランシスコ講和で日本国籍を失い、恩給法の支給対象外
となる。99年に最高裁が立法解決を促すが、いまだ進まず。
要請書提出は安倍首相で29人目になる」とツイッターで
語る。

少数は置いてきぼりか。靖国神社に参拝するのだから、彼
らへの救済する立法化へ安倍首相は動いているのだろうか。
是枝裕和監督が番組で最後に語る;

やはり多様性・・・。 だから8割の人間が支持するので
あれば、2割の側で何ができるかということをきちんと
考えるメディアだと僕は思っているので、テレビというの
は。(中略)だから、支持されなくてもやる。視聴率がひ
どくても作る。

日テレの番組作りに拍手を送りたいし、1社スポンサーの
東京ガスにも敬意を払いたい。

フォトグラファーハル/新作展「雜乱」

2014-01-30 | photo
フォトグラファーハルさんの待望の新作展「雜乱」が
銀座ニコンサロン
で開催中。2/11まで。ハルさんは在
廊中でお話も伺える。



これまでカップルの愛のパワーを表現するために、ユ
ニットバス→真空パックへとカップルの閉じ込め方が
究極へと進化。次はどうなるのかと期待が高まったが
そう簡単にでるものではない。

悩んだ時期もあったろうと推察するけど、そこを突破
できるのはアーティスト本人だけだ。

一生を終えた星が収縮してブラックホールになり、あ
らゆる物を吸い寄せるという話を思い出した。そこで、
二人の生活上で身の回りにある彼らが愛してやまない
物たちを、もろごと真空パックしてみた。


カップルが好きなものが、身体に吸いつくイメージを表
現したかったそうだが、これはブラックホールなんや。
人がモノ化してるというか、人もモノも渾然一体。それ
ぞ宇宙かも。

吸いつく好きなモノは多種多様。何を持ってくるかはカッ
プル任せ。柔らかい布もの(洋服やぬいぐるみ)のたぐい
は外してもらったそうだ。



カップルの愛のエネルギーが宇宙のブラックホールとシン
クロするって世界観は好きだなぁ。写真は彼のサイトから。

エバレット・ブラウン「日本の面影展」

2014-01-29 | photo
エバレット・ブラウンさん「日本の面影:Echoes of Tradition展」
竹中工務店東京本店ギャラリーエークワッドで始まり、内覧会に行く。
3/31まで。無料。



竹中工務店が収集している昔の大工道具や、職人を初期の写真機を再現
して撮影してきたもの。湿板写真といって撮るときに、写真機の蓋をと
り、露光に20分かかる、悠長なもの。ここで書いたことがある。

竹中工務店が大工道具の収集を始めたのは1960年台からのことだそうだ。
電気工具の普及がはじまり、このままでは昔からの大工道具が失われる
という危機感が出発点だったとか。

今では日本を代表するコレクションとなり、2万5千点を超える道具が、
神戸の竹中道具館中心に収集、展示されている。写真展という形でこの
道具を発表するのは初めてだそうだ。


鉋刃 千代鶴是秀(1874-1957)  大正13年(1924)の作

職人や匠が使ってきたものばかりだから年季も入ってるけど、手入れ
もいいんやろう、最高の状態にしてあったことがうかがい知れる。

写真に写り込んだ様々な跡は風か葉っぱか砂なのだろうか?ファインア
ートの写真たち。エヴァレットさんによれば、まだまだ撮っていき、2年
後に、神戸で集大成を発表できればとのこと。


大入鑿:作/三代目善作 昭和初期 エントランスの吹き抜けに展示



写真に写ってる職人が目の前にいらしたでご挨拶したら、淡路島のカワ
ラマンこと山田脩二さんだった。カメラマンから転職した方で、その存
在は知っていたけど、東京でお会いできるとは。淡路島での再開を約束w

有野 永霧「マイナスの人景 砕石場」

2014-01-28 | photo
1994年に「空蝉の都市・ヨーロッパ編」で第19回伊奈信男賞を受賞され、
2012年に大阪芸術大学の教授を退任された写真家・有野永霧さんの「マイ
ナスの人景 砕石場展」
を新宿ニコンサロンで見る(1/21~1/27 )。



トスカーナ地方と中心としたイタリア各地の大理石の砕石場。現役で採掘さ
れているところもあれば、採りつくして放置されているところもある。いず
れどこも掘り尽くされる日がくるのだろう。



トスカーナ地方をドライブしたことがあるんだけど、石材屋をたくさんみか
ける。日本の様に墓石ばかりではなく、庭園など屋外用の大理石ものが多い
記憶がある。

大理石の彫刻家、安田侃さんがアトリエを構えているのが、やはりトスカー
ナ地方のフィレンツェ郊外ピエトラサンタ。



大理石の砕石場は、多くの写真家のテーマになってきた。Robert Mariって
いう写真家が、やはりトスカーナのカッラーラにあるアプアーネ・アルプス
という採掘場を撮った写真展(2012)からの一枚。



写真家、アーティスト、職人、建築家、いろんな人達が大理石採掘場に惹か
れる。人々に大理石好きが多いからだろう。

バナナの品種改良が必要なわけ

2014-01-27 | 農・生物
昨日に続いてNHK-BSで放送されたドキュメンタリー
番組「フルーツハンター」のこと。前後編の2回に分
かれて放送されたんだけど、後編はバナナの話。

まず驚いたのが、輸出用に栽培されるバナナが昔も
今もほぼ1種だということ。沖縄島バナナとか、台
湾バナナとかもあると思うんだけど、大半は一種ら
しい。



20世紀中期まで栽培されてたのが、グロスミッチェル
種。戦後高価で、バナナの叩き売りとして高嶺の花だ
ったのは、この品種かも。

世界で栽培輸出されてたけど、パナマ病という伝染病が
流行り、壊滅したそうだ。1960年頃の話。

これに耐性があるキャベンディッシュ種が世界的に広く
栽培されるようになったとか。いまよく食べてるのはこ
の品種なんだね。

ところが歴史は繰り返す。2001年頃に発見されたパナマ
病の変異体はキャベンディッシュ種にも感染。マレーシア
・フィリピンおよびアフリカ諸国のバナナ栽培に損害を与
え始めていて、対処法は見つかっていないそうだ。



毎日の様に食べているバナナにそんな危機が迫ってたとは。
驚きの連続だったけど、ここまでは前フリ。番組では新しい
品種を生み出しつつある研究を紹介。

ホンジュラスの研究者フアン・アギラール博士という方が、さ
まざまなバナナを集め、新品種の育種にとりくんでいる。遺伝
子組換えはおこなわないで、掛け合わせによって、いわゆる品
種改良を行ってはる。



バナナの種をとるのも一苦労。数多くのスタッフが、たくさんの
バナナを剥いて、濾して、やっと一粒の種がとれるかどうか。博
士はみんなに、ダイヤモンドだと思って扱ってくれと頼んでいる
そうだ。気の遠くなるような、地道な作業。

病気への耐性、流通に乗り、なによりも味のいい品種を生み出し
つつあるそうだ。



この素晴らしいドキュメンタリー映画を作った監督は、Yung Chang。
予告編は英語だけど;

写真は">カナダの制作会社のサイトより。


マンゴーを採取・生育するフロリダ熱帯植物園

2014-01-26 | 農・生物
NHK-BSで放送されたカナダのドキュメンタリー番組
「フルーツハンター」が、とても面白かった。NHKも
共同制作みたい。

プラントハンターっていうのは聞いたことがあったけ
ど、フルーツハンターってなんか響きがいい。

果物の魅力にとりつかれ、その原種やまだ知られて
いない品種を探し、栽培する“フルーツハンター”

を紹介していく前編後編、という宣伝文に惹かれたんだ
けど、内容はちょっと違って、果物も生物多様性を失わ
れつつあって、それをなんとか保護・維持しようとして
いる人達の紹介だった。その方が面白かった。

前編はフロリダのフェアチャイルド熱帯植物園が舞台。
キャンベル博士とレズマ博士がマンゴーの採集と栽培に
かける情熱を紹介している。



番組ではインドネシアのボルネオ島への密着取材。まず
市場へ行って、まだ彼らが栽培していない野生のマンゴ
ーを探し出し、どこで収穫したかを聞き出したかと思う
と、現地に案内してもらう。



原生林の中に生えているマンゴーの木が見つかると、ど
うするのかと思うと、キャンベルさんはスルスルと木登
りし、何メートルもある高いところで枝を採取する。




検閲に通るように短く切る。検閲をちゃんと通すんだと
意外に思う。植物園の学術利用だかの例外特別許可でも
あるのかと思ったから。

一目散に空港へ。早ければ早いほど良いそうで、米国に
帰るなり、すぐさま植物園に戻り、接ぎ木方式で栽培。
マンゴーだけでも300種類以上を栽培しているそうだ。

再訪すると、もう伐採されていることもよくあるそうだ。
果物を毎年収穫するよりも、木材として販売したほうが、
一度に高く売れるから。

年々マンゴーの品種も減っているそうで、急いで採取して
いかないと、一度失われた品種はもやは再現されない。


フェアチャイルド熱帯植物園 科学村

別物のバルサミコ酢を知る、やっと。

2014-01-25 | 
地元のスーパー三浦屋。国立店は駅の北口にできて12年くらい。
初の改装を昨年12月にしたんだけど、冷蔵や冷凍ケースが改まり、
回遊性がよくなったんだけど、オリーブ油コーナも充実。

そこに、バルサミコ酢が数種、陳列してあるのに気づく。10年も
のとか20年ものとか、小瓶なのに2000円~4000円以上もする。
イタリア物とはいえ、酢だよ。



これは実態というか、もっとリーゾナブルなバルサミコを教えて
もらおうと、北口のワインショップ、ユンヌ・ペルルへ行く。前
回500円の美味しいオリーブオイルを買ったから、きっと安くて
美味しいバルサミコ酢があるはずって思い。

そしたら、10年物で4500円のものがあるという。えぇ~もっと
高いやん!それは格別に美味しくて、トロリとしてて、と夢見心
地で話してくれる。



初心者にいきなり4500円はないやろうと思い、三浦屋へ引き返す。
ドゥエヴィットーリ社の15年ものが、3150円のところが2880円位
お試し価格だったのをゲット。

美味。たしかに別物。トロリと粘着性が高く、甘みのも香りも豊か。
サラダにも肉魚にもなんでもあう。これまでバルサミコ酢って数百
円のものしか買ったことないし、あまり使っていない。

しまった、これまでこんなウマイものがあるのに知らなかったとは。
もしかしたらイタリアレストランで食べたかもしれないけど、バル
サミコ酢とは思わないで、お店のソースって思ったのかも。



樽で熟成するんだけど、毎年樽を移していくそうだ。エミリア・ロマ
ーニャ州のモデナまたはレッジョ・エミリアで作られ、製法も法律に
のっとった12年物・25年物に対して「アチェート・バルサミコ・トラ
ディツィオナーレ」という名称を政府からもらえるとか。



知らないことばかりだし、奥が深そう。それよりなにより旨いw
写真はドゥエヴィットーリ社のfacebookより。

アイルランド聖職者の写真集

2014-01-24 | photo
知らない写真家はゴマンといるけど、その一人との
出会いの始まりが写真集という場合もある。本を通
じて、彼(や彼女)の世界観に出会い、被写体の世
界がボクの体験の一部になっていく。

JACKIE NICKERSON 『FAITH』との出会いもその一
つ。彼女の世界は恵比寿POSTが入り口だった。昨日
書いた太田好治写真展「MOON」は奥のスペース。

手前のブックコーナーでは、イタリアのデザイン系出
版社Corrainiの楽しい本が特集。Bruno Munariの絵本
で有名になった出版社。絵本を買う。



その一角というか片隅に『FAITH』があって、ひと目
で気に入る。アイルランドのカトリック聖職者たちの
ポートレイトや教会・修道院の写真集。



普段入れない場所に行ってる点、なにより聖職者たち
の素がでている点に惹かれる。

カトリック教会のイメージはテレビ、映画などで蓄積
されているんだろうけど、神聖、荘厳、清貧という感
じ。笑いはないって思う。



アイルランドはカトリック教徒の国だけれど、近年教会
に対する信頼や信仰の形が激変しているそうだ。その
中にあって、内部にいる人達を撮ることにとても興味を
覚えたそうだ。



JACKIE NICKERSON は1960年、アメリカ、ボストン生
まれ。 90年代はファッションの写真家として活躍してい
たそうだけど、 現在はファインアート写真家。

各地の美術館で展示をしたりコレクションになっている。
アフリカ人のポートレイト(処女写真集が『FARM』)も
面白そう。

太田好治「MOON」

2014-01-23 | photo
恵比寿のPOSTへ行ったら、奥のギャラリースペースで、
写真家太田好治さんの月の写真が大きく引き伸ばして、
数点あったんだけど、やられた。



もう終わった「interstice / 2」展(2013年12/21日 -
2014年1/19)だからネタバレというか書いていいと
思うんだけど、実は月の模型写真だったのね。

スタッフの方に教えてもらって、気づいた位だから、よ
く撮れてるというか、実物も凄いんだろう。言われて、
よく見ると、なんか模型っぽく見えてくるw



模型、光、撮影に工夫を重ねると、こういう写真が撮れ
る。映画の撮影はこういうことの連続なんだろうけど、
写真にはそういう先入観がないから、ひっかかったのか
もw

2012年に発表された[NOISE]と今回の[MOON]を収録し
た2冊組の写真集もリリースしてはる。



太田好治さんはライブに通い写真を撮り始めたことがきっ
かけで、アーティストのCDジャケットからポートレイト写
真、ライブ撮影などで評価を得た方。

活躍の場が映画にも広がり『告白』(松たか子さん)、
『悪人』(妻夫木聡さん&深津絵里)など超売れっ子。


生誕140年 下村観山展 続き

2014-01-22 | art
昨日に続き、横浜美術館開催下村観山の大規模展のこと。
文部省により第一回の国費留学生となって英国に渡ったと
書いたけど、正確には日本画家として初の国費留学生に選
ばれ、2年半の英国を中心とした欧州へ行く。明治35年、
29歳の時。

欧州にじかに接して、悩んだり葛藤したのかどうか、図録
からでもよくわからない。でも帰国後発表する作品によって、
「古典の傾倒を全面的に打ち出していった」そうだから、
西洋絵画を取り込みつつ、自らの日本画の創造に立ち向か
ったこと様に感じられる。


《大原御幸》明治41年(1908) 52.0×790.0cm 絵巻物
     「平家物語」などで知られる大原御幸を題材

夏目漱石も33歳の年に文部省よりイギリス留学を命じられ、
2年間ロンドンに滞在したのが、彼の2年前。ノイローゼにか
かって下宿に籠もりっきりになる。

「色々癪に障る事」ばかりが気になった。
 ヨーロッパが癪なら、そこを去ればいい。
 けれども日本にいて日本の癪からどう脱出
 するかというと、そこで西欧の芸術に逃げた
 のでは始まらない。むしろ日本の奥へ行く。

当時の30歳前後の表現者が同じような方向性を目指すのは、
偶然ではないのでは。



大正2年の末、観山は師岡倉天心を通じて知遇を得た実業家・
原三溪の招きにより、横浜本牧へ家族とともに引越す。以降、
三溪の支援のもとで制作をするようになり、二人の交流は観
山が亡くなるまで続く。

原三渓(および遺族)や横浜在住の人たちからの寄贈が多く
なっていくのもこれ以降。もっとも所有していても子孫は知ら
なかったり、わざと隠していたり、まだまだ観山の絵も眠って
いるもの多いそうだ。



岡倉天心の臨終の席で、観山と大観は、天心が創出したけれど
有名無実化していた日本美術院の再興をはかる。観山は文展審
査員を辞して、在野を貫く決意を示す。《白狐》《弱法師》《
春雨》といった大作かつ傑作が生まれている。


≪弱法師≫ 大正4年(1915) 絹本金地着色、六曲屏風一双 各187.5×407.0㎝
謡曲「弱法師」を主題にする作品


天心は終生、観山の創作の軸であったし(観山という名前も
天心の命名という説があるとか)天心の転換期に傑作が生まれ
ている気がする。