昔は、船でしか芸予諸島を巡ることはできませんでしたが、今ではドライブで島を往き来できます。
その分、随分定期船の数が減り、船で移動を思案しては港から船が出ていないことを知り、愕然としました。
結局、しまなみ海道を車で移動することにしました。最初、時間の関係で全部の道を走ることはできないと思っていましたが、そこがみなりんらしく、今治まで強行突破して戻って来ました。
まるで今年の映画「ももへの手紙」のももみたいな女ですね。お父さんに最後もう帰って来なくていいと喧嘩別れして、父親を事故で亡くして、母とふたりで大三島へ身を寄せるももという女の子。映画の最後が山場で、お母さんを助けるために橋を嵐の中走って行きました。まさに、なんとかしてしまおうと言うところが似ています。
しまなみ海道は、六つの島、向島・因島・生口島・大三島・伯方島・大島を10の橋で結んでいます。総長59.4キロ。1999年に開通しました。
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わたしはまず車を飛ばして、大山祇(おおやまずみ)神社へ伺うことにしました。染色家の吉岡幸雄さんがここに鎧甲冑の凄いのがあって・・・と本に書かれていて、大三島は宝の島とも呼ばれるので、是非実物をみないでいられようかと思った次第であります。
「運転手は君だ、助手(車掌)は僕だ」と歌いながら?爽快なドライブでした。
道に沿った風景が素晴らしく、もう少し晴れていたら最高なのに、と思ったほどです。
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上の「大山祇神社」と書いた方は、有名な書家、大三島出身の村上三島氏で、平成14年のものです。もう残念ながら故人になりましたが、朝日新聞社主催の現代書道家の展覧会でお名前を真っ先に覚えた方です。三日坊主に近いのに、わたしの書道への憧れを深くした方でした。
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境内へ進むと、大きな楠野木が御神木としてあり、この大山祇神社を祭っている乎知命(おちのみこと)の御手植えの木で、樹齢2600年になります。
奥の神社は、思った以上にこじんまりとしていましたが、 古びた荘厳さがありました。
当初はこの神社は山の神と鉱山神として信仰があったが、中世に伊予の三島水軍を引きいた河野氏と、神社神職の世襲なさっている越智氏が連携し、瀬戸内へ勢力を伸ばした結果、海神の信仰を強めたため、三島水軍の支援を受けた源氏などの武将が武具・甲冑類を寄進し、多くの国宝や文化財が日本のその武具・甲冑などの宝の8割を占めて保存されています。
義経が奉納した赤い甲冑、斉明天皇奉納の禽獣葡萄鏡などをまじかに拝見できて、感動しました。ほんとうに美しいのです。
この神社に、全国の修学旅行生が集まっていいと思うほど、貴重なものばかりでした。
最近の風潮は、若いうちに海外を見せたほうがいいと修学旅行に海外旅行へ行く高校が多いそうですが、教科書を読んで「借景庭園」って何?とか、神社のどこがいいの?とか、日本ってどういう国か全然知らないのに、日本人という若者が海外で馬鹿にされないか心配になりますから、基本的な日本の知識を得てから海外へ踏み出してほしいような気がします。
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以前、湯島天神へ行き、頭を地面にこすりつけて、やたら頭を下げる中学の生徒が大勢いて、傍にいる教員は何を指導しているんだろうと不思議で内心憤ってしまいました。馬鹿丁寧に頭をただ下げればいいというものでもないからです。後で、正しいお辞儀を習う時、大人になって恥をかくのは子どもなのです。
知らなくて恥をかくのは、自分のような大人一人で十分で、知っている大人は子供に正しく参拝を教えるべきだと思いました。何も信仰まで強制はする必要はないのですが、教会で手を組むのと同じような作法を知るというのも、また教えると言うのも大事なことだと思いました。
国が違えば作法も違う。風俗・習慣も違う。だから気をつけて行動するようにという配慮が必要かなと思いました。
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途中、島を回って走ってみたり、瀬戸田への行って走りましたが、平山郁夫美術館や耕三寺は時間の関係でもう閉まっていました。残念無念。
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最後に一番壮大な眺めをご紹介しましょう。
行ってびっくり。見て凄い!雲の中にいるような空中散歩をした気分になる亀老山展望公園です。
たいへん急勾配の坂を車で上がっていきます。
「ももへの手紙」で、イノシシに追われて展望台へ行きますが、そこの風景のようでしたよ。
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ね、ももが素敵な風景で、ここに来て良かったという風景と似ているでしょう。
後に「とびしま海道」でも素敵な展望を見ましたから、お楽しみに。
歩いているうちに、足がすくんでしまって、非常に高い所に来たんだなと実感します。
映画をご覧になっていない方も、十分写真からその壮大な眺めを堪能できたと思います。
ももを助けた妖怪たちは、この大橋を造った人間たちのように、大きな絆で結ばれていたのです。
あの映画では、とびしま海道の大橋を見たんだと思いますが、橋の意味するものは同じような気がします。
人間には限界があり、人が造ったものは壊れたり、役に立たなかったりすることがありますが、これがなくてはももは島を渡れなかったのです。
人間も、ある意味で創造するのに限度はあるけれど、ひとりの人間ではできないことが大勢の力でできることもあると言うことも教えてくれるような気がします。
自然の脅威の前では無力になりますが、それを乗り越える意志と勇気、自然を敬い、畏敬の念を持ちつつ、その限界を感じる力を持つことも、人間の成長において必要な知識であるはずです。
「バベルの塔」を造ってはならないように、人間の力を過信してはなりません。
しかし、自然と調和し、自然を壊さないように工夫して生かす知恵を学ぶことは大事です。
私は瀬戸内海で、温暖な気候で静かな優しい笑顔を見せてくれた内海に感謝します。
続く・・・
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素晴らしい紀行文に魅せられて最後まで読みました。
福島原発がバベルの塔であったといまさらながら思い出しました。
平山郁夫の絵を見られなかったとは残念。