みなりんの紀行文

写真とともに綴る、旅の思い出を中心としたエッセイ。
主に日本国内を旅して、自分なりに発見したことを書いています。

「春の小石川後楽園の梅の花」

2012年03月20日 00時13分18秒 | まち歩き

今年の3月上旬、小石川後楽園へ行きました。013

今は梅の花が見頃です。

秋の小石川後楽園は、以前ご紹介しましたが、水戸光國が号を「梅里」と名乗るほどであったので、梅の花を愛していたと言われています。

3月11日東日本大震災のため、茨城県の水戸は余震が続き、地元の方は不安を抱いておいでのようです。早く余震が収まることを祈ります。

梅の花にはひとつひとつに名札がついていて、名前と花のイメージが一致するかよく眺めて歩いて鑑賞していました。

中には、小さい樹木で「光國梅」という名前015 の梅があり、多くの人の目を引くほどの人気を博していない地味な存在でした。

もっとはっきり言うと、わたしと傍にいた二人の男性が、黙って眺めただけで、そこにいた多くの女性たちは立ち止まって眺めたり写真撮影したりする人はいなかったのです。

可憐な梅は園内にたくさん植えてあって、「光國梅」という名前の梅は地味で見落としがちであったのです。

私も、最初はそう関心を持つほどでもなくて先へ歩いて行こうとしましたが、ふと薄く書かれた「光國梅」という名札に目が行くと、「どうしてそういう名前がついたのか」と思案し始めました。

後ろを振り向くと、「虎の尾」という名前の梅の木があって、実に「光國梅」の樹木とそっくりなのです。

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ある方のHPにはネットで検索したら、「虎の尾」の名前の由来が書いてあって、「虎の尾」とは「幹の柄が虎の皮の柄にそっくりなため」と記載され、それも一説であるらしく、詳しいことは定かではないとのことでした。

それでは「光國梅」という梅の名前の由来は・・・・と検索しても、図鑑を調べても、私の拙い調べ方では全く記載された本が見当たらないのです。

ジレンマに陥った私は、ふと夜つらつら思案していて、もし、自分の目がそう狂っていなければ、梅には300種類以上の品種があるそうですが、これは兄弟のように似た品種か、あるいは同一ではないかと思いました。

写真をご覧いただくとわかるように、022 梅の気にしては珍しく下のほうから幹が伸びていて、足元が狂えばつまずきそうで、確かに「危険」でしょうね。(笑)

さらに、私の妄想は膨らみ、水戸黄門が梅を眺めて、家臣に「この梅の名は何というのか」と尋ねて、「虎の尾」と申しますと言われ、「虎の尾を踏む」とはどういうことになるかと、『易経』の言葉をたぶんにご存知で、こう述べたのでないかと空想しました。

“よいかな。『虎の尾を踏む』というと、非常に危険なことだと思いがちだが、中国の書『易経』の履の卦(か)に「虎の尾を履(ふ)むも人をくらわず、享(とお)る。」と書かかれてある。

帝位にある方が光り輝くほどの徳がおありでやましいことがなく尊いので、虎の尾を踏みつけても虎にかみつかれる心配はなく、願い事は通るであろう。柔は剛を制すと申す。

かくして、「虎の尾」と言う名前は悪くはあるまい。わたしは気にいった。”

以来、「虎の尾」を別名「光國梅」とも言うの028 だろうかと思案したのですが、写真をご覧になり、みなさんはいかがお考えでしょう。

昔の知識人は、きっとこういう軽口をぽんぽん叩いていたような気がします。

そう思うと楽しいものがあるので、自分としてはいかにも尊王思想を発展させた水戸らしい発想かなと『易経』の言葉を知った時に感じました。

ほかの梅はどうあるのかつくづく眺めていたら、「織姫」という紅梅が咲いていて、それは幹が天に向かって箒のように高く伸びていました。

天にいる姫らしく、花は高嶺の花で手がやすやす触れられないので、興味深く眺めて、また名前の由来を勝手に想像しては、イメージが名前にふさわしく付けられているような気になりました。

だいたい女性に人気の梅の花は垂れ梅で、眼の前によく眺められるので綺麗なのですが、どことなく、だらり帯を下げた花魁のようで、美しいものの、妖しく媚びをもっているような気がしました。

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梅でも、すっきり上を向いて咲いているほうが品位は高く感じます。ただし、織姫のように背が高すぎても、人を寄せつけない感じで、親しみは持てませんでした。

047 以前、小石川植物園で、あるガイドらしき人が「梅はまだ寒い中咲くので、交配をするのに虫が寄ってきやすいように、香りが高いのです。桜の時期になると、もう暖かいので香りが強くなくても自然と虫は寄ってきます」と述べていたので、遠くから聞き耳を立て、なるほどと頷きました。

桜は美しく日本の国花のように親しまれているけれど、梅は寒中花としては「けなげな花」でいいかも知れないと、光國は厳しい環境で生きて来た人らしく、梅を好きな理由が理解できます。

さて、みなさま、今回は資料に乏しかったけれど、映像をお楽しみいただけましたか?

今度はご自分の目で実際にご覧になってはいかがでしょうか。

新しく「光國梅」の名前の由来を紹介してくださる方がいれば大歓迎です。

下手ながら一首          

厳寒に耐えしのびたる梅の花天に届けと匂ひかぐわし

なお、『易経』には高位にある者は051_2 やましいところがなく、分別をもって民心を安定させなくてはならないと書いてありました。

日本のリーダーに大いに期待したい言葉であります。

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夜も更けました。おやすみなさい。