君は出光美術館の高層階から桜田門を眺めながら
ああ、桜田門外の変ってあったわ、日本の大事件、
そう言うね
井伊直弼って悪い人?そう呟きながら、
君はいまさら「花の生涯」を読んでいる
そのとき、そのときを一生懸命生きていたんだ
価値観が幕府か朝廷か揺れて
攘夷を唱える人がいたからね
時代が変われば、評価も変わる
君は井伊直弼が開国派だから
同情したんじゃないか
100パーセント悪人じゃないだろうって
安政の大獄はよく理解していないけれど
あの時代の反体制派だったから
処分する立場によっては苦しいよね
あの人、ひとり悪かったわけじゃないのに
江戸における井伊家の菩提寺として
豪徳寺があった
昔、貧しかった寺に招き猫がいて
殿様を招いて信心を強くさせたらしい
だから猫を祀っている
庭園は牡丹が咲き乱れ
大輪の綺麗な王者の風格
随分立派な寺だね
むこうに井伊直弼の墓がある
子どものお墓も
誰か花を手向けていた
手を合わす
日本の将来を案じていたのでしょう
あなたなりに感じていたのでしょう
今は日本は開国し、
様々な情報が世界各国から流れて来ます
そう祈った
同じ日本人が仲良くできなければ
世界の人とも仲良くなれない
いつか世界はひとつになるだろうか
どうか見守ってください
牡丹がはんなりと薄いベールのような
花びらを大きく開いている
庭園には歴史の争乱を忘れる静寂と
美があった