「四万たむら」という宿へ向かう。
室町時代から600年ほど続く老舗旅館で、たくさんいろいろなお風呂があって、アミューズメントパーク気分になって湯めぐりをした。
玄関口には、神棚があって、神様を祀ってあって、おいでなさいませ、神様もみなさんのことをご覧になっていますよと言う印象だった。
玄関の近くに襖が開いてあり、ずっと和室が奥まであって、古い年月を経た宿である名残を残していた。
番頭さんたちは、日帰り温泉をしたいのですが、というと、親切にまず、釜めしを注文してから湯めぐりをしたほうがいいですよと教えてくれた。
奥のガラスケースには、群馬県中之条町の登坂昭夫さんの天蚕館を2010年8月ごろ見学なさった天皇・皇后両陛下もご覧になったという山繭が陳列されていて、薄い緑色の山繭に見入った。
また、お隣には、根付けコレクションをなさっていた高円宮憲仁親王の、高円宮賞を得た、象牙の根付け「恋文」(群馬県出身の阿部裕幸さんの作品)を拝見。荒波を乗り越えて鯉が文をくわえて、泳ぐ姿だった。
ユーモアがあって、みなさんから慕われたという高円宮様のお人柄も伺われるような作品で、若くして亡くなったことに胸が痛んだ。
「韓国と日本はお友達になりたいと思います」と高円宮様の声がNHKの放送で流されたことがあり、新しい視点で、皇室の在り方をお考えだった様子だったのに・・・。
四万たむらでは、せせらぎの湯が非常に気持ち良く、緑の木々の中の滝を眺めてお湯に浸る気分は最高だった。
また、御夢想の湯は、確かにここでひとり入っていると、木のぬくもりに穏やかさを感じて、まるで仏堂の中で湯に入っているようで、哲学者になりそうだった。
やがて、ここで温泉三昧して、ランチをいただいて、温泉街をぶらぶらと散策した。
閉まっていた店が多かったが、白百合が咲き、川のせせらぎを耳にしていたが、今、「悲しみを言いつくすより唇に歌を歌おう」と言う「千と千尋の神隠し」のテーマソングを思う。
いい夏休みを過ごしてほしいと心から思った。
私は、自分がこうしてのんびりしていられることに弟への感謝の念が湧いた。
宿に戻ると、今日はゆっくりお風呂に入って食事を待った。
家に帰ったようなくつろぎを感じた。
大きなお風呂はたくさん入ったけれど、宿にしていたお風呂はちょうどいい大きさで、混んでいなくて、ゆっくりできたし、仲居さんも打ちとけると、いろいろ配慮してくださって、居心地が良かった。
ここのお湯はなかなか良かったし、自分の別荘みたいな気分に浸れた。
本で調べると、四万温泉は、上信越高原国立公園の標高600メートルにある温泉で、泉質は含石膏弱食塩泉で、胃腸病・神経痛に良いらしい。だから、私の病気に良かったようだ。
新湯には、桓武天皇の800年ごろに征夷大将軍
坂上田村麻呂が蝦夷征討に来てこの地に泊まり、入浴したのが最初という言い伝えがある。
ある人に四万温泉ってどこ?と尋ねられたので、あまり知名度は高くないけれど、静かな温泉街だった。
翌朝、ドライブして、榛名山へ向かう。
天気は快晴。道の途中で写真撮影などをする。
榛名山は、若い頃、デートした記憶があって、楽しい場所だった。
ここの榛名山の頂上にある(訂正)富士山神社は、縁結びの神様。デートの相手は良い人だった。
榛名山を見てからだったか、山道の途中で伊香保の街もよく見晴らしがきいた。
(記憶が曖昧)
竹下夢二は、晩年、榛名湖畔にアトリエを構えたが、結核で亡くなった。
美しい榛名山と湖を眺めて、人が心惹かれる理由を理解することができた。
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