・MasterBayesの原著論文ではヒタキ科ウグイス亜科のSeychelles warblerの親子解析がexampleとなっているが,この鳥の繁殖システムが難解で,フェノタイプ情報の意味がよく分からない。原著論文ではCERVUSとMasterBayesとの比較がされており,まずはCERVUSで親子解析をした論文を読まないと先に進めない気がしてきた。ということで、こいつから紐解いてみるとしよう(ちなみに、今回の読解では、鳥の繁殖システムの知識とかが全くないために、とてつもない勘違いをしている可能性もあります。いつも以上にご注意を・・・)。
Richardson et al. (2001) Parantage assignment and extra-group paternity in a cooperative breeder: the Seychelles warbler (Acrocephalus sechellensis). Mol Ecol 10, 2263-2273.
・Seychelles warblerはインド洋西部に浮かぶセイシェル諸島に固有のヒタキ科ウグイス亜科(合っているのかどうか、自信がないけど・・・)の鳥らしい。29haのCousin島では、一時期絶滅の危機に瀕し、29羽まで減った(Crook 1960)。この島では、1999年からほぼ全個体がモニタリングされ、繁殖状況の調査も行われている。この島には、104の繁殖テリトリー,6ヶ月以上の258の個体が存在し,そのうち96%はリングで個体識別され,DNAサンプルも採取されている。
・この鳥は複雑な繁殖システムを持ち,テリトリー内では一雌一雄の上位のペアprimaryとそれ以外の下位の個体”helper”に分類される。また,PCRベースで性を判別できるシステムが確立されているため,各個体の性はかなり正確に識別できている。この鳥は,上位のprimar雌と下位のhelper雌の両方が共通の巣を持ち,共同してひなを育てることがあるとされているが,その詳細は分かっていなかった。
・この鳥は,1つの巣ではたいてい1シーズンに1羽のひなが孵化する(80%)が,まれに2羽,3羽のひなが孵化することもあるらしい。この研究では,1999年に孵化したすべてのひな59羽(48繁殖テリトリー)からDNAサンプルを採取し,14座のマイクロサテライトマーカーを利用して,CERVUSによる親子解析が行われている。最初に母親を推定し,特定された母親を既知親として父親を推定している。すべてが排除された場合には,外部グループと判定している。なお,論文の中ではCERVUSの詳しい検討がなされているが,今回はまるで興味がないので読んでいない。
・親子解析の結果,59羽中55羽について母親を推定でき,そのうちテリトリー外の雌が母親になることはなかった。テリトリー内では,85%がprimary,15%がhelperであった。つまり,テリトリー内で上位の雌がほとんどのひなの母親だが,15%はそれ以外が母親となっているという結果である。これはこの手の社会性動物の中ではjoint nestingという形式とhelper-at-the-nestという形式の混合型だと判断されるようだ。
・一方,父性解析では,62%がテリトリー内の雄が父親となっていたが,38%がテリトリー外の雄が父親となっていた。テリトリーの内外を問わず,Primaryが圧倒的多数を占め,helperが父親となっていたのはテリトリー内では1羽,テリトリー外では0羽だった。Fig3によれば必ずしも隣のテリトリーだけではなく,500m以上移動していることもあるようだ。
・この論文を通じて,ようやくこの鳥の繁殖システムがおぼろげながら分かってきたような気がする。そうか,だからMasterBayesのマニュアルに出てくるWarblerPのフェノタイプデータの中に,status(上位/下位),Terr(同じテリトリーかどうか)とかが出てくるわけだ。Statusとterrは明らかに繁殖成功に影響を及ぼす要因なので,それを事前確率に含めようとしているわけだ。statusは樹木でいえば開花量のスコアとかに相当するってことですか。それにしても、exampleに使用する生物はもっと簡単なやつにしてくれると助かるんだけど・・・。まあとにかく、理解できたということにして先に進むとしよう。
Richardson et al. (2001) Parantage assignment and extra-group paternity in a cooperative breeder: the Seychelles warbler (Acrocephalus sechellensis). Mol Ecol 10, 2263-2273.
・Seychelles warblerはインド洋西部に浮かぶセイシェル諸島に固有のヒタキ科ウグイス亜科(合っているのかどうか、自信がないけど・・・)の鳥らしい。29haのCousin島では、一時期絶滅の危機に瀕し、29羽まで減った(Crook 1960)。この島では、1999年からほぼ全個体がモニタリングされ、繁殖状況の調査も行われている。この島には、104の繁殖テリトリー,6ヶ月以上の258の個体が存在し,そのうち96%はリングで個体識別され,DNAサンプルも採取されている。
・この鳥は複雑な繁殖システムを持ち,テリトリー内では一雌一雄の上位のペアprimaryとそれ以外の下位の個体”helper”に分類される。また,PCRベースで性を判別できるシステムが確立されているため,各個体の性はかなり正確に識別できている。この鳥は,上位のprimar雌と下位のhelper雌の両方が共通の巣を持ち,共同してひなを育てることがあるとされているが,その詳細は分かっていなかった。
・この鳥は,1つの巣ではたいてい1シーズンに1羽のひなが孵化する(80%)が,まれに2羽,3羽のひなが孵化することもあるらしい。この研究では,1999年に孵化したすべてのひな59羽(48繁殖テリトリー)からDNAサンプルを採取し,14座のマイクロサテライトマーカーを利用して,CERVUSによる親子解析が行われている。最初に母親を推定し,特定された母親を既知親として父親を推定している。すべてが排除された場合には,外部グループと判定している。なお,論文の中ではCERVUSの詳しい検討がなされているが,今回はまるで興味がないので読んでいない。
・親子解析の結果,59羽中55羽について母親を推定でき,そのうちテリトリー外の雌が母親になることはなかった。テリトリー内では,85%がprimary,15%がhelperであった。つまり,テリトリー内で上位の雌がほとんどのひなの母親だが,15%はそれ以外が母親となっているという結果である。これはこの手の社会性動物の中ではjoint nestingという形式とhelper-at-the-nestという形式の混合型だと判断されるようだ。
・一方,父性解析では,62%がテリトリー内の雄が父親となっていたが,38%がテリトリー外の雄が父親となっていた。テリトリーの内外を問わず,Primaryが圧倒的多数を占め,helperが父親となっていたのはテリトリー内では1羽,テリトリー外では0羽だった。Fig3によれば必ずしも隣のテリトリーだけではなく,500m以上移動していることもあるようだ。
・この論文を通じて,ようやくこの鳥の繁殖システムがおぼろげながら分かってきたような気がする。そうか,だからMasterBayesのマニュアルに出てくるWarblerPのフェノタイプデータの中に,status(上位/下位),Terr(同じテリトリーかどうか)とかが出てくるわけだ。Statusとterrは明らかに繁殖成功に影響を及ぼす要因なので,それを事前確率に含めようとしているわけだ。statusは樹木でいえば開花量のスコアとかに相当するってことですか。それにしても、exampleに使用する生物はもっと簡単なやつにしてくれると助かるんだけど・・・。まあとにかく、理解できたということにして先に進むとしよう。