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西東京市・北海道富良野の森林を舞台にした遺伝,育種,生態などに関する研究ノートの一部を紹介します

講義準備、続く

2008-10-27 | 研究ノート
・全学自由研究ゼミの講義準備。机の上には10冊ほどの本が山積みされており、開いては閉じるということの繰り返し。明日に迫っているので、そろそろスライドを固めたいのだが、なかなか・・・。しかし、いくつかの本を読み解くうちに、縄文から現代にかけての森林文化の移り変わりが何となく分かってきた。


(ドングリと文明/ウィリアム・ブライアント・ローガンより)

・ウィリアム・ブライアント・ローガンの「ドングリと文明」という本には、かつてはナラ(ドングリ)に依存した文明が各地で発展したという説が述べられている(ちなみに、この本の”ドングリ食”に関する記述は実にイイ)。面白いのは日本の雑木林に近いシステムであるCoppice(萌芽)林というのがヨーロッパでもあった(現在も細々と残っている)ことだ。

・縄文文化に着目しつつ、なぜ日本にこれほどまでに森林が残ったかという安田喜憲の「森の日本文化」と読み比べる。安田が指摘しているのは大きく分けて2つで、1つは西洋と日本の自然観の違い(日本:自然・森との共生、循環型社会)、もう1つは西洋において森林再生を妨げた家畜の存在ということになりそうだ。しかし、このような森林史は奥深く、勉強すればするほど知らないことが多いことに気づかされる(うー、間に合うのか・・・)。

キノコゼミ@秩父2日目

2008-10-26 | フィールドから
・早起きして渓谷を散策。紅葉と沢の組合せが美しい。マイナスイオンを浴びてリフレッシュ。



・本日はキノコを通じて人や社会をみるというのがテーマ。まずはナメコ生産者のYさんを訪ねる。ナメコの生産は現在、80日間が1サイクルになっている。培養するにつれて、最初は粒にしか見えないナメコが徐々におなじみのナメコへと変貌していく様が興味深い。ナメコの菌床栽培を見るのは、みんな初めての経験だったようだ。



・次に、スーパーベルク影森店でNさんと待ち合わせる。この店舗は店内が明るく、品物もいかにも新鮮そうで、買い物をしたくなる雰囲気に溢れている(自宅近所にも欲しい!)。従業員の食堂にて、Nさんのお話を伺ったのだが、秩父産のキノコの話から食品業界が抱える問題点まで、ワールドワイドに語っていただき、その迫力に圧倒された。野菜やキノコの産地について、”キャベツはここがうまい!”と断言する強さに感服。本当に食べることが好きで、(おそらく)買い付けをする際に自分で食べまくり、いいものを売るというのを徹底してきた「達人」の言葉である。

・最後は、廃ほだ木、原木からキノコ菌床栽培用のおがくずを生産しているA商店を訪問。ここでは、樹種(広葉樹、針葉樹ともに扱っている)や目の粗さによって、20種類もの”おがくず”を生産している。興味深かったのは、クワガタ生産用のおがくず(クヌギ100%!)も、それなりの規模で生産していたこと。オオクワガタの飼育本にもそういえば、菌床で育てるテクニックが書かれていたのを思い出した。



・社長に言われるまま、おがくずを少し掘って触ってみると、想像以上に熱を持っている。見た目とはまた違った面が見えてくる。ここA商店では、廃ほだ木や原木から色んなキノコが豊富に発生している。社長の「採っていいよ」、という一声で急遽、キノコ探しが始まる。シイタケ、ヤマブシタケ、キクラゲ、ヒラタケなど食用キノコが面白いくらい採れた(初日を圧倒してしまった!)。



・しかし、なんと言っても面白かったのは社長のお話。ほとんど漫談のようで、面白い話がどんどん飛び出してくる。社長は生き物も好きで、伝書鳩から”とんび”まで実にいろんな生き物を飼ったらしい。しかし、最初と最後にしきりにおっしゃっていたのは、「若ぇもんが山で木を伐ってくれなきゃ、俺りゃほんとに困るんだよ・・・」という言葉。自然環境ブームや就職難とリンクしない山仕事の実態を突きつけられる。

・本日は3名の人に会い、地域キノコから世界的な食糧問題、山村の問題まで考えさせられた。それにしても、秩父には「人物」がいるものだと改めて実感。学生達の目にはどのように映っただろうか。少し時間が経ってから聞いてみたい。

きのこゼミ@秩父初日

2008-10-25 | フィールドから
・キノコゼミの秩父1日目である。学生11名は時間通りに、西武秩父駅に集合(素晴らしい!)。まずは川又学生宿舎まで移動して昼食。初めて訪れたのだが、なかなかいいところである。昼食後、まずは天然林(ブナ林)へ。安全なところまで異動してから学生達を野に放ち、最も楽しみにしていたであろうキノコ狩り。ところが、不思議なくらいキノコが生えていない。



・こりゃダメだというムードのなか、そこはS先生が見事に紫シメジを見つける。落ち葉から発生する割には大きいという色鮮やかなシメジである。これは一度湯がいて汁をこぼしてから調理する必要があるのだが、翌朝の味噌汁は実にうまかった。



・散々探したが今ひとつ見つからないままに下山。下山途中には猛毒コレラタケ。確かに食べたくなるような見た目だ。



・人工林(カラマツ)に入った途端、ハナイグチなど食用キノコがあちこちで発見される。天然林の方が人工林よりも多いという当方たちの予想に反し、実に豊かなキノコ相であった。やっぱりキノコ狩りは見つからないと盛り上がらない。



・夕食では山採りキノコ、S先生ご自宅の缶詰キノコを加えた秩父名物”おっきりこみ”。”ほうとう”が山を越えると”おっきりこみ”になるらしい。うどんの太さが特徴だが、キノコ風味も加わってさらにうまい。



・夕食後、S先生による毒キノコ講義。毒と一口に言っても、神経性毒、食中毒、細胞を壊死させる毒など、色んな種類の毒があることに感心?。迷信が多いのも毒キノコの特徴のようで、確かに子ども達は派手なものが毒キノコだと思っている。事故例が多いのはツキヨタケ。このキノコの名前の由来は、暗闇で光ることだということで、さっそく2階にみんなで行って、真っ暗闇で目を凝らす。最初は何も見えなかったのだが、ツキヨタケの裏側がうすぼんやりと白っぽく輝くのに感動。しかし都会では、これだけの暗闇を見つけることの方が難しいだろう。

・酒とマージャンもないということで、なぜかトランプすることに。大富豪に混ぜてもらったのだが、八切り(8が出ると強制的に流れる)、縛り(同じマークが出た途端、次からはそのマークで切らなければならない)など、色んなルールが加わっていることに愕然。それにしても、大富豪をやると、個人の性格が分かってなかなか面白い。

全学自由研究ゼミ準備

2008-10-24 | 研究ノート
・28日に迫った全学自由研究ゼミの準備。新たに購入した3冊の本を読みつつ、必要な図や写真をスキャナーで取り込む。ふと思いついて、各本の表面を取り込んでスライドに並べてみると、これがなかなかいい。紆余曲折、ようやく次回のスライドはまとまりつつあるような気がする。

・アオキ交雑論文の修正原稿のチェック。結果までは細部の修正だが、考察の部分が問題。パラグラフの移動、新しいパラグラフの作成、パラグラフの削除などの改造を試みる。明日から秩父でキノコゼミ。週末は、当試験地でも、休日公開や子ども向けイベントがあったりと慌しい秋である。

75林班再生林地はぎ試験地

2008-10-22 | フィールドから
・昨日でサンプリングが終わったので、Mくんとともに標高別試験地に設定したネズミトラップの回収にくっついていく。”高標高のネマガリダケの中ではネズミの密度が高いのでは?”という当方の予測は見事に外れたようで、どこでも満遍なくという感じであった。



・一通り終わったところで、75林班の再生林の地はぎ試験地を見に行く。今年はウダイカンバも豊作のようで、実にたくさんの種子が降り積もっていた。これは期待できそう。



・ここでは、50×40m、50×20mが2箇所ずつ皆伐され、地はぎが行われている。この試験を通じて、地はぎの適正面積が分かるはず、なのだが・・・。



・東山作業所の裏から降りてくると、そこはカラマツ雑種F1の試験地である。久しぶりにみると、ものすごい成長である。植えた当初の曲がりも気にならなくなった。生存率も非常に高そうで、これなら儲かる林業ができそうな気になってくる。育種の力は偉大である。



・最後に、樹木園で標高別の試験地やブナの産地試験地などを見る。Oさんの頑張りで看板が整備されている。いざ自分が見学者になってみると、これらの情報は実に嬉しい(Kさんたちも看板の写真を撮っていた)。苗畑も床替え年が分かるようになっていた(進化しているねえ・・・)。ちなみに、K林長のブナ産地試験地では結局霜害で枯死した個体はいなかったらしい。6月時点では絶対何個体かは枯れると思ったんだけど・・・。



標高別試験地サンプリング

2008-10-21 | フィールドから
・朝一番で事務所に行き,メールを見ると,なんとヒノキ論文が審査完了(受理)したというお知らせ。多分に当方の不注意のせいもあるのだけれど,最初に投稿してから何度辛い目にあったことか・・・。長い道のりだったが,ようやく共著者の方々に嬉しい報告ができた。当方にとっても、筆頭著者となっている論文の受理は久しぶりである。うーむ,嬉しい!

・今日は、サンプリングチームとロガー・データ回収チームに分かれて行動。当方はロガーチーム。霧が晴れないのでまずは前山の下湿地から。いきなり湿地の中で迷う。後で確認したら,ほとんど問題ない地点に辿り着いていたのだが,なぜかGPSが機能せずにうろうろしてしまった。いきなりの時間ロスである。

・水位計ロガーのデータ回収ではいきなり「ポートが開けません」というエラーメッセージが出てきて焦る。しかも,”トラブル・シューティングは全くなし”というサポートの徹底ぶり。結局,パソコン上でポートをUSB接続に変更すれば解決することが分かった。しかし,昨日とは設定がいきなり変わってしまっているところが,まったくもって侮れない機器だ。

・前山2箇所のロガー・データ回収が完了したところで晴天となった。大麓山山頂にチャレンジ。最初の曲がり角でハイマツが出現する。ここでは当然ネマガリダケと思っていたら、Kさんから”クマイも混じっているね”とのコメント。なるほど、よくよく見れば、異なる2つの種類が混在している(裏側の毛の状態も明らかに異なる)。ううむ。さすがササは訳が分からん。



・山頂付近にもトドマツが分布している。やはり葉密度が高そう。ちなみに、シュートの先端がまるまっているのが気にかかる。必ずしも高標高だけで見られる現象ではないようだが、どういう意味があるのか・・・。



・山頂で昼食。見晴らしは最高だが,さすがに風は強い。




・アカエゾマツの針葉もいかにも寒さに耐えているといった風情だが、本当のところはどうなのだろう。よく調べて見る必要がある。



・その後,11林班も回収し,サンプリング班に合流。530mの1区のサンプリングを手伝う。アカエゾマツの林分はカラマツの落葉で実に林床が覆いつくされている。残照の効果もあいまって,オレンジ色が実に美しい。



・平沢を経由して帰還。美瑛にも負けないと当方が勝手に思っている丘の風景。本州から来ると、こういう景色にはぐっとくるんだよねえ。


どきどきロガー回収

2008-10-20 | フィールドから
・羽田空港でIくんと待ち合わせて,朝1番の飛行機で富良野に向かう。朝食を取りながら,指摘をもらったイヌブナ論文についての検討。旭川空港でレンタカーを借りて,富良野へ向かう。久しぶりの運転だが,この道はいつか来た道。あっという間になれる。山部でKさんたちと合流。残念ながらいつものうどん屋はお休みで,豚丼はおあずけ。向かいのドライブインで味噌ラーメンを久しぶりに頂く。



・富良野の混交林では紅葉が始まっているのだが、カラマツがオレンジになるのはもう少し先だろうか・・・。この日は,最も遠い90,13,25,27林班のサイトでのロガーのデータ回収。Hoboの温湿度ロガーについては問題なかったが,湿地の水位計はまたもやドキドキの展開。一瞬、また失敗したかと思ったが、何とかデータ回収に成功。



・全ての作業を完了し、平沢の湿地林を久しぶりに訪れる。いつ来ても、ヤチダモとハンノキが平らな場所にぼこぼこと生えている森林には感動する。湿地林でヤチダモの稚樹は明らかに集中分布しているのだが、その条件を探る(微妙な水位と地形だとにらんでいる)というテーマは面白そうだ。いつか取り組んでみたいテーマである。

ケヤキむさしの

2008-10-19 | フィールドから
・バスケットの試合を見に行く。第1Qは動きが固かったが、それ以降は徐々に調子が出てきたのか、大差で勝利。今回は割と落ち着いて見ていられた。試合終了後、公園でおにぎりを食べる。ふと見ると、ケヤキ「むさしの1号」が植栽されている。改めてみると、枝の角度が極端である。接ぎ木個体だと思うが、ラメートによって角度が微妙に違うような・・・。



・よく見ると、接ぎ木個体のいくつかでタネが着いている。接ぎ木個体間と実生間の枝の角度を調べれば、どの程度遺伝するかどうかが分かりそうである。また新しいアイデアが閃きそうな感じ・・・。



・公園前の小さな寿司屋が繁盛しているのを発見し、カンパチの握りとえび巻きを購入。家に持ち帰って食べたら、これが実にうまかった。注文しなかったけど、アジとアナゴも惹かれるものがあった。小さい店でも侮れないものである。

ピカソ

2008-10-18 | その他あれこれ
国立美術館にピカソ展を見に行く。六本木の東京ミッドタウンのすぐ近くで、外観からして圧倒的である。ピカソというとキュービズムというか、極端にデフォルメされた女性の絵やゲルニカなどが有名だが、最初に目に飛び込んできたのは”青の時代”の代表作「ラ・セレスティーナ」。片目の見えない売春宿の女主人ということなのだが、いきなり胸が揺さぶられるように感じた。

・実はペンという雑誌でピカソ特集をやっていたので、この絵があることは知っていたのだが、現物の迫力は想像以上だった。そのほか、彫刻や立体的な作品にも面白いものがあったし、白黒のペン画の中にも息を飲むような作品がたくさんあった。サントリー美術館のピカソ展も見に行きたくなった。たまにはこうした時間を過ごすのも大事だと感じた週末であった。

会議室事件

2008-10-17 | 研究ノート
・前日に引き続き、自由研究ゼミのスライド作成。第4回のスライドは33枚。15分はビデオとしても150分にはまだ足りない気がする。このスライドを作成するために注文した本がまだ届かん。ううむ。人と森のかかわりを示す例として、クヌギ・コナラの薪炭林とアカマツ林にターゲットを絞ることにした。前者は萌芽更新、後者は実生更新の代表例だ。

・午後から投稿論文執筆講座パート2の読本作成。オンライン投稿時のプロセスをパソコン画面の画像を使って説明。そのほか、審査者から見た視点、修正原稿作成のポイントなど、思いつくままに作成してみる。やはりTexを使うと仕上がりがきれい。

・2時半ごろからYさんとアオキ交雑論文の修正方針を検討。審査者の指摘に答えるため、母樹個体別に父親ハプロタイプが受粉成功率に及ぼす影響を検討してみる。1個体だけ、明らかにハプロタイプによって受粉成功率が異なる。ふーむ、個体別に詳しくみるとまた違った側面が見えてくる。

・この個体について、受粉成功率を花序ごとに検討した結果、2つの花序の値が非常に低く、もう2つの花序はハプロタイプ間で違いがないことが分かった。その理由を調べるために現場に戻ってみると、受粉成功率が低い2つの枝が個体の樹冠上部に突出して位置していることが判明。

・この事実から、これらの枝は強風時に袋と雌花がこすれて受粉成功率が低くなった可能性が見えてきた(もちろん個体によって、ハプロタイプ間の受粉成功率が異なる可能性は捨てきれないわけだけど・・・)。指摘の鋭さに感嘆しつつ、疑問に思ったときには、現場に返る必要があるものだと改めて実感。”事件は会議室で起こっているんじゃない”、訳だもんねえ。