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西東京市・北海道富良野の森林を舞台にした遺伝,育種,生態などに関する研究ノートの一部を紹介します

再生林再生計画.

2006-08-31 | フィールドから
・北海道では1910年代に山火事が頻発し,その後にカンバやナラ類を中心とした広葉樹主体の二次林が再生している(ここでは再生林とよんでいる).本日は,その再生林の施業予定地に大勢の職員が集合し,施業方針の検討を行う.検討箇所付近にはヨーロッパトウヒがかなりの面積にわたって植林されているが,おそらく大部分が不成績に終わり,自然にウダイカンバが更新してきたらしい.もともとウダイカンバが少なかったためであろうが,本数密度は既に30-80本/ha程度に落ち着いてしまっている.

・伐採率をどの程度に設定するか,その算定根拠はどうするか?小さな木を蓄積量算定から抜くべきかなど,あーでもないこーでもないとなかなかに熱い議論が展開される.それにしても,再生林の下層はクマイザサに厚く覆われており,当然,ウダイカンバの次世代は育っていない.ということで,「ウダイカンバ林としては,そろそろ仕立てあがったことだし,再生林を小面積で皆伐し,地がき処理して,ウダイカンバ林を再生させよう」という当方の持論を主張.

・焼松峠というところで,試験的に再生林を皆伐し,その後に地がき処理を行った際のデータ(現在,日本森林学会誌に投稿中)が浸透してきたせいか,割合と好感触.最終的に,25m×50mくらいの単位を8箇所程度,皆伐して地がき(地拵え)して針葉樹を疎植するとともに,ウダイカンバの天然更新を図ろうという方針になる.

・上手くいけば,50年後には50年生のウダイカンバ林が再現されるはずで,将来の収穫の楽しみが増える上に,皆伐時の収穫でもそれなりの収入が期待できるのが,この計画のメリットである.ただし,もちろん不確定要素はあり,更新の失敗によるササ地の広がり,更新したウダイカンバ稚樹のウサギやエゾシカによる食害などは心配である.

・同じ面積だと最適面積がいつまでも分からないので,思い切って50×50mの皆伐もやりたい(1箇所でもいいから・・・)という提案をする.ほとんど,「しょうがないなあ・・・」という感じで一応了承.しかし,「やるからにはちゃんと研究しろよ」,と至極まっとうな指摘が・・・.当方,勢いづいたまま「やります!」と答え,そんなわけで宿題はますます増えていくのであった・・・.

標高差 vs 生存率×平均樹高

2006-08-30 | 研究ノート
・トドマツ標高別の解析を進める.平均樹高については,むしろ低標高の植栽地で標高差が大きくなるほど樹高が低くなる傾向があるが,930m以上ではその関係はクリアではなくなる.生存率そのものが低くなるので,残ったものだけの平均樹高だけを見ていると傾向が見えにくいということなのであろう.生存率とは全く異なる傾向だ.

・Joshi et al. (2001)とMontalvo and Ellstrand (2000)の解析を参考に,生存率と適応度に関する形質を掛け合わせたものと標高差の関係を調べる.Joshi et al. (2001)では個体当たりの花序数を用いていたが,ここではMontalvo and Ellstrand (2000)に従って,適応度に関連する形質として平均樹高を用いる.平均樹高が適応度に関連するかどうかは微妙だが,ここではサイズ依存的に種子生産量が増えるというSato and Hiura (1998) For Ecol Manageを論拠にできるということにしよう.

・反復間で違いがあったのは,試験地自体が風害を受けた730mの植栽地だけであった.ということで,ここでは反復はプールして,母樹ごとの生存率と平均樹高を掛け合わせたものを一つのデータとして扱っている.厳密に言うと問題がありそうだが,樹木の場合には比較的少ない母樹で個体数が多いような試験設計がなされることが多いので,母樹別平均値を使うのは一つの手であろう.

・種子産地と植栽地の標高差をx,生存率×平均樹高をyとして植栽地ごとに回帰分析を行い,回帰直線を一つのグラフにまとめる.このように示すと,植栽地による標高差が適応度の推定値(生存率×平均樹高)に及ぼす影響が傾きとして比較できる,はずである・・・.

・全ての植栽地において,高度に有意な関係がある(ただし,標高730mのみは5%水準).興味深いことに,全ての植栽地において標高差が大きくなるほど生存率×平均樹高が小さくなっている.まさしく,Homeの有利性を示しているのだが,ここまで一貫しているとは想像以上である.回帰直線は,530m以下と730m以上で大きく様子が異なる.y切片の値の大きな違いは,700m以下の標高でトドマツが優占して自生していることに関係しているのであろう.傾きについては,もうちょっと考え見る必要がありそうである・・・.

ゲンゴロウか?ガムシか?

2006-08-29 | その他あれこれ
・本日休業.幼稚園には1人の園児が捕まえたというゲンゴロウらしき昆虫が飼われている.その種類が分からなくて困っていると主任先生から伺う.

・図書館にて,日本のゲンゴロウという本を借りてみる.えらくマニアックな本であるが,非常に詳しく掲載されている.北海道にはゲンゴロウが20種以上もいるらしく,固有種も多いことを初めて知る.

・記憶を頼りに,写真でそれらしい種を探す.エゾヒメゲンゴロウかオオヒメゲンゴロウが怪しい・・・と思っていたら,縮尺を見ると明らかにサイズが違う.サイズ的に,ゲンゴロウの仲間で当てはまりそうなのは,ゲンゴロウ本種かゲンゴロウモドキの仲間だが,背中の模様は随分違うようにも思える.

・散々探した挙句,子供用の図鑑にゲンゴロウとよく似た昆虫にガムシというものもいることに気がついた(知らなかった・・・).一見似ているが,ゲンゴロウとは違ってコガネムシに近いという記事もあり,後ろ足のかたちで区別できるらしい.幼稚園で見た昆虫とは,サイズ的にも概観もぴったりである.早速,明日,確認してみよう.

Local adaptation across Europeの読解

2006-08-28 | 研究ノート
・再び,Joshi et al. 2001 Ecology Letters読解に取り組む,ようやく何をやったのかを理解しつつあるようだ(Fig.1はなかなか難しいが・・・).この論文では,ヨーロッパ全域に分布する草本の普通種3種の相互移植試験を行い,Homeの効果,Homeから植栽地までの距離が適応度に及ぼす影響を評価し,地域適応がどの程度起こっているのかを調べようとしている.トドマツ標高別相互移植試験に設計がよく似ているので,マテメソと結果をしっかりと読み,参考になりそうなところを探す.

・一つのポイントとなるのは,Fecundity(m)を個体当たりの花序数として,有効Fecuntidy(F)を生存確率(p)×Fecundity(m)として求めているところである.生存率と適応度に関連する形質を掛け合わせる方法は,Montalvo & Ellstrand (2000)でも行われている.

・もう一つのポイントは,個体群の増殖率λである.困ったことに,この求め方が分からない.有効Fecundityから算出するのだが,「Leslieマトリックス(?)から得られるdominant eigenvalue(主要な固定値??)」とある.”Leslie”をセイコーの電子辞書で引くと,まずは「レズ」がでてきた.さらにリーダーズプラスはと見ると,「スコットランドの名門」とあり,貴族の歴史がずらずらと・・・.統計に詳しい人ならば常識なのであろう,ということで,Iさんにメールにて問い合わせ.

・このλから選択係数sを求めているのだが,こちらの方はいたってシンプルで,最もλが大きい産地の値λmaxと知りたい産地のλの値の比から算出するだけである.Home vs awayの効果,距離の効果を検出するための基本的な考え方は,分散分析におけるサイトと産地の交互作用を上手く利用している.一般化線形モデルで行っているのだが,生存率についてはやはりロジスティック回帰で二項分布を選択しており,表現などは極めて参考になりそうである.

・トドマツ標高別ではサイトはそれぞれ別に解析していたのだが,サイトと産地の交互作用で行う解析も一般化しやすくて悪くなさそうだ.また,選択係数については,自分の解析にも取り入れてみることも検討したいところだ.しっかし,まずはλの理解からだな・・・


 ということで(?),唐突ですが,参考までにレビューの一部を紹介します(細部については間違っている可能性も高いので,興味を持った方は自分でチェックしてみてください)

Joshi et al. (2001) Local adaptation enhances performance of common plant species. Ecology Letters 4: 536-544.

<マテメソ>
相互移植試験
・ヨーロッパ全域に自生する普通種3種,ムラサキツメクサ,オーチャードグラス, ヘラオオバコ)が研究対象.
・1996年,ヨーロッパの8地域(イギリス2箇所,ドイツ,スイス,アイルランド,スウェーデン,ギリシア,ポルトガル)が種子産地(以下,産地)と植栽地とした.ただし,オーチャードグラスはギリシアに,ヘラオオバコはスウェーデンに分布しないので,2種の産地はこれらを除く7産地である.
・各産地において各種20個体以上から採種し,各植栽地で播種育苗し,180×75cmの5つのプロットを設定した.各プロットには産地ごとに2個体ずつ,3種合計で44個体を植栽(ムラサキツメクサ8産地×2個体,オーチャードグラス7産地×2個体,ヘラオオバコ7産地×2個体).
・1997-1998年,生存,葉の最大長,個体ごとのラメット数,枝数,葉数,花序数,最大花序の長さと直径を測定.ただし,アイルランドとギリシアは1年目のみの計測.
・Fecundity(m)は個体ごとの平均花序数とし,これと生存確率(p)を掛け合わせたもの(m x p)を有効Fecundity(F)として求めた.
・単位期間における適応度の推定値として,Leslieマトリックスから得られた主要な固定値(dominant eigenvalues)を,産地,植栽地,年ごとに計算した.
・主要な固定値は集団の増加率λに一致し,開花個体がなければ0となる.個体群の増加率λを適応度の推定値として用いて,i番目の産地の相対的選択圧siを求めた.Siは最大のλを示した産地に対するi番目の産地のλの比率から計算でき,si=1-(λi / λmax)となる(McGraw and Antonovics 1983).
・選択圧0はある産地が他の産地に比べて,その種にとって最も適応度が高いことを意味する.栄養繁殖だけを行っている場合には,λ=0,s=1となる.ギリシアとアイルランドのサイトはλとsの解析からは除外.

<結果>
・生活史特性に対するサイトと産地,その相互作用の効果は3種全てにおいて大きい.成長形質(葉,枝,ラメットなど)や生存率では大きな環境変異(サイト間変異)が認められた(Table 2).一方,大部分の形質について,ecotypicな遺伝変異(産地間変異)が認められたが,どの種でも特定の産地が大多数のサイトで適応度が高いということはなかった(Table 3).大きな産地とサイトの交互作用は,HomeとAway,距離の効果として検出され,時間の経過によって一定か効果は大きくなる傾向にあった(Table 2).

・ムラサキツメクサでは,地域適応性は成長形質,繁殖形質,生存に最もクリアにHomeの効果が表れており,経過時間とともにその効果が大きくなった.HomeはAwayに比べて32%も長い葉を持ち,花序数が20%多く, 2年目には生存率も9.3%高かった.オーチャードグラスでは,繁殖特性はHomeの方がAwayよりも優れており,花序長は13%大きかった.ヘラオオバコでは,花序数,花序サイズなどの繁殖特性に加えて,葉長などの成長形質もHomeの方が優れていた.

・環境変異と遺伝変異の程度は種間で有意に異なったが(種×サイト, 種×産地の交互作用,Table 4),Awayに対するHomeの有利性と距離の効果(距離の増加に伴い,選択圧が増加すること)は3種で共通していた.当初は,サイト間の気候類似度が距離の主な要因だと考えていたが,有意な関係は認められなかった.

・安定分析(stability analysis,Bell et al. 2000, J. Ecol.など)では,調査した3種ではサイト全域にわたり,選択インデックスが産地間で有意に異なっていることを示された(Fig.1).特に,オーチャードグラスとヘラオオバコでは,ポルトガル,ドイツ,イギリスの1箇所の産地について産地安定性が一貫して認められ,他の産地よりも選択に対して有意に感受性が低いことが示された.

<図表の説明と主な結果>
[Table 1] 8サイト間の地理的距離と気候類似度(1月と7月の平均気温と平均降水量から計算).サイト間距離は235kmから3322km,気候類似係数は34%から99%まで変異がある.

[Table 2] 種ごとにサイト, 産地とサイト x 産地の相互作用(Home, distance,残差),Time x home, Time x distanceの相互作用について,生存,成長形質,繁殖形質(花序数,花序長)の有意確率を記載.生存,成長,繁殖形質ともにサイト間,産地間で高度に有意.サイトと産地の交互作用からなるHomeと距離の効果は種によって異なる.

[Table 3] 個体群の増加率λから得られた産地ごとの選択係数(a.ムラサキツメクサ,b.オーチャードグラス,c.ヘラオオバコ).選択係数が0は他のサイトに比べて,そのサイトが最も成功したサイトであることを示す.ムラサキツメクサは,6サイト中4サイトが自生地の選択係数が0.オーチャードグラスでは3サイトで自生地の選択係数が0.ヘラオオバコは自生地が必ずしも0になっていないが,自生地に距離が近い方が選択係数が低い傾向にある.

[Table 4] 選択インデックスの分散分析結果.Source of variationは種, サイト, 産地, サイト ×産地(Home, 距離,サイト×産地の残差).そのほか,種×サイト, 種×産地, 種×Home,種×距離,種×サイト×産地の残差.結果は,種間・サイト間・産地間,サイト×産地(Homeの効果)で高度に有意.そのほか,サイト×産地(距離の効果)種×サイトや種×産地でも有意.つまり,3種を込みにした解析でも,Home(もしくは距離)の有利性は共通.しかし,種や種とサイトや産地などの相互作用では効果の程度が違う.

[Fig. 1] 3種の産地ごとにみたヨーロッパの8サイトにおける産地安定性.Y軸は選択インデックス,x軸はサイトの質.個々の産地の選択インデックスは,サイトごとの全ての産地の選択インデックスの平均値によって計測されたサイトの質によって回帰された.選択係数0はある産地が与えられたサイトで最も適応度が高かったことを示す.x軸の左から右へサイトの質が減少するように並べてあり,回帰直線の傾きは,各産地のサイト全体におけるパフォーマンスの程度を示し,矢印は各産地が自生地で示した選択インデックスとリンクしている.基本的に右上がりの直線となっており,サイトの質が低いと選択インデックスが高くなる(選択圧が高い)傾向が見れる.オーチャードグラスとヘラオオバコのイギリスの1箇所,ドイツ,ポルトガルでは直線がx軸と平行か,右下がりとなっており,サイトの質に依存しないことが分かる.

(レビューおわり)


ミニバスケのち焼肉

2006-08-27 | その他あれこれ
・小学校のミニバスケの応援に上富良野までバスで出かける.我らがF小バスケットボールクラブは2年前頃までは「頑張れベアーズ」(もはや知っている人の方が少ないか・・・)なみに弱小チームだったのだが,コーチングスタッフの充実などにより,めきめきと力をつけ,勝ったり負けたりと応援しがいのあるチームになった.

・今日は同じ旭川地区の2チームと対戦.いずれも接戦ながら2勝.が,昨日の惜敗が響き,上位リーグへの進出はならなかった.試合後,場所を中富良野のゴルフ&リゾート「オリカ」に移して,温泉に入った後,4時前より焼肉お疲れ様会.温泉と焼肉食べ放題がセットとなっているという,不思議なプランである.

・小高い場所にあるせいか,眺望はなかなかよろしい.十勝岳を望みながら,陽の高いうちから頂くビールは格別である.が,気がつけば服も髪も焼肉のにおいがぷんぷんしており,結局,我が家に帰ってもう一度シャワーを浴びることに・・・.やはり,不思議なプランであった.

全力(?)少年

2006-08-26 | その他あれこれ
・お昼前に子供と河川敷にてサッカー.日差しは強いが天高く,既に秋・・・である.日ごろの運動不足解消にと,意味もなく走り回ってみる.子供は?と見ると,サッカー少年から既に昆虫少年になっており,トンボ,チョウ,バッタを追い掛け回していた.よく見ると,いつの間にか靴も脱いでおり,完全に野生児である.

母子里のアカエゾマツ

2006-08-25 | フィールドから
北海道大学雨龍研究林にYさんを訪問.母子里の森林を見せていただく.もっぱら案内業務ばかりのこの時期に,こうして案内していただく側になるのは新鮮だ.森に入ってまず目に付くのはササの厚さである.ここ母子里では,積雪が2m以上になるとのことで,そのぶんササの高さは富良野とは比較にならない.標高400mくらいでクマイザサからチシマザサに変わると聞いて驚く.富良野では700m付近に境界があるのだが,それだけ厳しい環境なのだろう・・・

・長期モニタリングを行っているサイトでは,アカエゾマツの巨木が目に付く.富良野では,湿地,蛇紋岩帯,高山帯など,他の植生が入ることができないところにひっそりと集団を作っているのだが,ここでは富良野におけるエゾマツの役割(?)をアカエゾマツが果たしているようだ.それにしても,どうしてここにはエゾマツがないのだろう・・・.ミズキ,オニグルミ.ウダイカンバなども欠くと聞き,何か納得できるシナリオがないだろうかとしばし考える(が,なかなかいいアイデアは浮かばない).

・地はぎ処理後の実生定着の様子を見せていただく.地はぎ面積は0.3-0.6ha程度と富良野とほぼ同じ.ダケカンバ,トドマツ,アカエゾマツが目立つ.アカエゾマツが普通に更新していることに少し驚くが,枯死していく割合はやはり高らしい.地がきの方法などについて現場でしばし議論する.

・富良野の地はぎ論文について,相談に乗っていただく.論文を作成するためには,何がその論文の「オリジナリティ」なのかを明確に位置づけることが大事だが,案外本人には見えなくなってしまっていることもある.この論文では,400-750mくらいまで標高別に地はぎ処理を行っているのが一つの面白さであり,凸,平,凹という3つの地形を人為的に設定したというのがもう一つの面白さなのだが,議論するうちに,地はぎする標高によって更新する樹種構成などが異なることが「(世界的にみれば)面白かったのだ!」と整理できる.やはり,その分野で既に論文を書いておられる方のアドバイスには重みがあり,「何事にも先達はあらまほしけれ・・・」と実感したのであった.

からし蓮根とEcology Letter

2006-08-24 | 研究ノート
・火の国,熊本からの森林組合作業班の方など6名研修で林内案内.日ごろ,林業現場で働いておられる方との交流はなかなか楽しい.やはり,というべきか,木材丸太の価格,作業道の入れ方,木材生産の方法などについては,非常に関心が高い.山火事後のウダイカンバ林,マカバの天板生産にも興味を持っていたようだ.九州では,カンバの仲間といえば”ミズメ”といった話にもなる.材の立方単価というものは,普段,木材生産に関わっていない人にとってはまるでピンとこないものだが,この辺はツーカーで話が通じる.

・お茶のみ時に,熊本名物,からし蓮根の正式な食べ方は・・・との話.実は今まで,辛くてそのまま食べるのが大変そうだったので,せっかく詰められたからしを蓮根の穴から押し出して食べていた.が,そんなやり方はむろん邪道である(もちろん,お湯で洗う必要もない・・・).ところで,蓮根の穴に詰めているからしには,小麦粉が混ぜられていることを初めて知る.考えてみると,全てがからしだったら勿体ない上に,さすがに食べられないか・・・.

・戻ってきて,Joshi et al. 2001 Ecology letters, 4: 536-544を読む.が,なかなか頭が切り替えられない.ごく一般的な草本3種,Trifolium pratense, Dactylis glomerata, Plantago lanceolata, 

をヨーロッパの8箇所(イギリス2箇所,ドイツ,スイス,アイルランド,スウェーデン,ギリシャ,ポルトガル)から種子を採取して,相互移植してHomeとAwayの比較を行っている.

・結果としては,3種ともにHomeの方がFitnessが高く,Homeから植栽地までの距離が離れるにつれてFitnessが減少するというHome-site advantage仮説を支持する内容だが,解析の仕方はなかなか凝っているようで,もう少しマジメに読まないと理解できそうにない.Discussionもシンプルだが,深い感じである.

Ecology Lettersという雑誌に掲載されている論文を読むのは,これが初めてである.体裁もカッコいいし,内容的にもハイレベルのようだ.いつか投稿してみたいと思って,Impact Factorを調べると,なんと5.151!Ecologyよりも上ではないか(生態分野では4位).「いつかきっと」と思いつつ,なかなかハードルは高そうである.

種子産地と植栽地の標高差は個体の生存に影響するか?

2006-08-23 | 研究ノート
・最近,MolEcolに掲載されたヤチダモ論文に対する別刷り請求(というよりもPDF請求)がちらほらと来るようになった.これは研究者として,かなり嬉しいことである.論文の中でばっさりと批判したBurczyk本人からもメールがきた.クレームかと思って一瞬ビビったが,モデルを使った花粉散布研究が増えて嬉しいという内容のコメントと彼らの最新論文を読め(そして,今度は引用しなさい!?),との内容であった.この論文では,花粉散布だけでなく,定着した実生への花粉と種子の両方の散布についても扱っているらしい(PDFファイルを送ってもらったのだが,まだちゃんと読んでいない・・・).

Trendyゼミで話題提供するトドマツ標高別試験地のデータ解析に取り組む.測定項目は,生存(枯死),樹高,胸高直径と極めてシンプルだ.しかし,この試験地はなかなかに複雑なデータ構成となっている.まず,種子産地が8標高あり,各標高から5母樹ずつ選んで種子を採取し,15本×2反復の30本ずつのセットを作って,6標高に植栽している.つまり,植栽本数は,2反復×6植栽地標高×8種子産地標高×5母樹×15個体となる.

・まずは,植栽地と種子産地の標高差が生存率に影響を及ぼすかどうかについて調べてみる.植栽地ごとに統計パッケージRを使った一般化線形モデルを使って解析を試みる.yは生存率,xは反復と標高差ということにする.知りたいことは,生存か否かが反復や標高差によって違うかどうか,である.構造は,2元配置の分散分析とほぼ同じで,オプションとして”ロジスティック回帰”,”二項分布”を選んだという感じ.Rのglmではモデルの構造が理解しやすく,私のような統計初心者でもマニュアル片手に一応できる(できたつもりになっている・・・)のがなんと言っても”えらい”ところである.

・しばらく悪戦苦闘して「できた!」と思ったら,410m以降の植栽地の結果が全て一緒になっていた.どうやら,attach,detach指令関係でミスしたらしい.あれこれやっているうちに,どうにか解決.Rでは,この手のデータの取り扱いが初心者にとっては一番の難所だ.結果としては,530m以降で標高差に関わらず生存率に差はでないが,930m以上の厳しい環境下では標高差が生存に影響している.グラフを見ても納得できるのだが,高標高のものを低標高に植えた場合には何とか生きながらえるが,低標高のものを高標高域に植えると枯れやすいということらしい.感覚としては理解できるが,メカニズムについてはよく考察してみる必要がありそうだ.

・730mの試験地以外では反復間で有意な差がなく,約30年もの歳月が経過した試験地が特に問題なく機能していることが分かる.730mの試験地は,台風被害を受けたことが現場でも確認されており,これまた非常にリーズナブル.突き詰めて考えると,まだまだ解析で足りない部分もありそうだが,まずは次の解析へと進むことにしよう.

過去の試験地の発掘作業

2006-08-22 | フィールドから
・過去に設定され,しばらく放置された試験地を復元するのは一苦労である.今回は,1979年に設定されたトドマツ標高別試験地の一つを間伐こととなり,植栽位置図と現地との対応を行うために現場へ急行.

・それにしても,どうして試験地のすぐ横に,同じ樹種で一般造林地を作ってしまうのかね.違う樹種を植えておいてくれると楽なんだが,試験地の端を確定するというのが,この手の掘り起こし作業では一番の大仕事である.

・幸い,きちんとした杭がいくつか見つかって,母樹番号と現地の杭を完全に一致させることができた.2反復×8標高(種子産地)×5母樹×30本=合計2400本からなる試験地だが,妙な被害を受けていることもなく,よく設定できものだと改めて感心する.

・こうして復元できると,いつものことだが,ちゃんと調査しないと「もったいないおばけ」が出そうな気がしてきた.かくして,スケジュールはますますタイトになってしまうわけで,うーむ.