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西東京市・北海道富良野の森林を舞台にした遺伝,育種,生態などに関する研究ノートの一部を紹介します

萌芽枝

2008-07-29 | フィールドから
・午前中、ウダイカンバ繁殖成功論文のRevision letterの修正。修正原稿と見比べつつ、送ってもらった"指摘に対するコメント"を練り直す。審査者の指摘も再検討しながらの作業なので、それなりに重労働(?)だ。審査者からの指摘で、Bacles et al. (2005) Evolutionでは、全種個体密度が花粉散布パターンに影響していたと書かれていたので、改めて読んでみることに・・・。

・この論文は既に読んでいたが、”全種個体密度が花粉散布に及ぼす影響を調べていた”という記憶が全くない。よく読んでみると、論文中に直接検討しているわけではなく、連続林内で行われたジーンフローの研究(Heurtz et al. 2003)と比べると、断片林ではヨーロッパトネリコの花粉散布距離が明らかに長い(Bacles et al. 2005)ということから、森林やランドスケープの構造が花粉散布に影響を与えることが推測できる・・・ということのようだ。



・11時前に完了。さすがに神経を使ったので、屋外に出る。ミスト室の灌水状態がどうにも悪いのでノズルの掃除などを行う。後で技術スタッフに清掃と修繕をお願いしたところ、見事にミストが出るようになった(さすが!)。チューブ内部でかなりアオミドロみたいなものが溜まっていたようである。

・ふらふらと苗畑に出ると、七夕(7月7日)に剪定したクロマツから既に不定芽が出ている!剪定から1ヶ月もしないで不定芽が発生するというのは驚きだ。ただ、全ての個体に出ているわけではなく、茎の径と関係がありそう(太いものがよく発生している?)。

・午後からヒノキ論文の最終チェック。指摘に対するコメントのページや行がずれていないかを調べる。ひととおり作業して一段落。忘れていた8月末〆の原稿に手をつける。本当は講義準備もしたかったのだが、さすがに手が回らなかった。

・富良野のIさんから、いよいよ再生林で地がき作業に入ったという連絡を頂く。焼松峠でちまちまと実生をカウントしていたのが、このように事業的な規模になると感慨深い(というか責任重大だ!)。今回の試験では、今まで感覚的には想定されていた”ちょうどよい地がき面積”を検証できる(はず!)。とりあえず、今年度中に、プロット設定まではきっちりとやっておきたいところである。

Over the rainbow

2008-07-28 | 研究ノート
・昨日の夕方は、妙な天気でお天気雨となった。雷鳴もとどろく中、ふと見ると虹が出ているではないか。



・この虹の向こうに輝ける未来が待っている!・・・と期待したいところだ。変な天気のせいか、すごい夕焼けだった。ちなみに、東京の方が北海道よりも夕焼けがきれいな気がする。空気が澄んでいないからってのがオチなんだろうけど。



・どういうわけか、ここに来て、論文の修正〆切りが集中している。とりあえず、アオキ論文原稿は校閲前の最終チェック。細かい修正を加えて送信。ヒノキの英文校閲が戻ってきたので、修正原稿を調整。特急でお願いしたら、やはり早かった。Revision letterも対応させて、共著者に送信。これで何とか、7月末という期限は守れそうである。

・ウダイカンバ繁殖成功論文もそれなりに大修正となっている。昨日の夕方から、虹を見ながら修正してきたわけだが、今日はイントロと考察を再び改訂。Sork and Smouse 2006 Landscape Ecologyをじっくり読むと、それなりにヒントがある。Kramer et al. 2008 Conservation Biologyも加えることにして、論旨を立て直す。

オーガスタ・キャンプ

2008-07-26 | その他あれこれ
・西武球場で開催されるオーガスタ・キャンプへ。スキマスイッチ、山崎正義、スガシカオなど好きなアーティストが出演するので、予約していたのである。ここから西武球場は意外なほど近かった。駅から球場まではほとんど直結。1時半開演後、しばらくは同じ事務所(?)の著名ではないアーティストが演奏。大勢が出演するのはいいが、幕間が長くて少々だれる。

・休憩をはさんでお待ちかねのスキマスイッチ。いきなり”全力少年”とはテンション上りますなあ・・・。そして、”ガラナ”はコンサート向きで盛り上がる。最後は奏はやはりよかった。そのほか、スガシカオがトークも面白くて、歌も想像以上に良かった。

地下の世界

2008-07-25 | フィールドから
・栃本宿舎は造りも新しく,実に快適。Oさん手作りという"栃餅汁”も香ばしくて美味であった。山里に抱かれていて縁側に座っていると、何ともいえず、落ち着いてくる。秩父版”三丁目の夕焼け”といったところか・・・。アブが多いのには閉口したが,たまにはこんな夜があってもよい。10時までここで待機ということもあって,のんびりと仕事。宿にこもって原稿を書く作家にでもなった気分。



・論文チェック2本を立て続けに行う。Hさんから頂いたシャクナゲ論文にコメントを書いて送信。他人の論文は不思議と見えるのだが,自分の論文になると,どうしてこう“見えなく”なるのだろうか・・・。ヒノキ論文の改訂作業で、ちょうど血縁度の話や二親性近交弱勢の議論もしていたので,タイムリーな論文チェックとなり,こちらも勉強になった。全体の文章の体裁,解析などがしっかりされていると,論文チェックも実に楽である。

・もう一つ,Uくんのウダイカンバ繁殖成功論文の改訂。審査者の指摘に答える形にで、同種個体密度だけでなく,全種個体密度が林分の繁殖成功度に及ぼす影響も調べてみようということになったわけだが,全種個体密度の影響についてはクリアーな関係が見つからないことを定量的に示すことができそうだ。

・10時過ぎにIくんとSさんと合流。と,ここで昼食を頼み忘れたことに気がつく。まだまだ秩父初心者の当方は、栃本から山に入る手前で,弁当が購入できるだろうとタカをくくっていたわけだが、それはとんでもない間違いであったことが発覚。慌てて宿舎に戻り,Oさんお手製の栃本の保存食“つとっこ”を分けていただく。昼食時にIくんとともに頂いたのだが、飽きのこない、いい味であった。



・久しぶりにフィールドに入る。相変わらずの急傾斜だが,林床にササがないので気持ちがいい。今日は蚊も少なく,天気も良好だったので,実に爽快である。Iくんの実生調査に付き合いつつ,森林浴。それにしても,なかなかイヌブナの実生が目に入ってこない。やはりフィールドボケしているな。むしろ,ヤチダモにそっくりな実生がやたらと出現している。カエデとは異なるようだが,尋常ではない密度である。後でSさんに聞くと,アオハダではないかという。やはりこうした実生を探す作業は楽しい!



・一通り,イヌブナ実生にタグを付け替える作業が終わり,移植実験の掘り取りを行う前の予備実験。林内(暗条件)と林外(明条件)からそれぞれ6個体ずつ実生を掘り取り、地上部、地下部の表面積と乾燥重量を測定しようという試み。林内では案外と根が小さく、こんなにも貧弱なものかという感じ。それに対して,林外では根がしっかりと張り、白い菌根も見られる。地上部以上に地下部の印象が違うことに驚かされた。



キノコの世界

2008-07-24 | フィールドから
・秩父のSさんと西武秩父駅で待合せ,キノコ関連の流通・生産の現場を回る。50分ほどかけて、秩父では有名なスーパー・ベルク本部へ。近代化された設備とその規模大きさに度肝を抜かれる。Nさんはベルクのバイヤーだが,地元が秩父ということもあって,Nさんは地元の農家林家のキノコ生産者にもきちんと目を配り,品質のよいキノコについては地元生産者からの仕入れも積極的に行っている。

・素晴らしいことに、それは単なる慈善事業ではなく,「品質がよいものを選んで適正価格で売れば,お客さんが絶対分かってくれる」という信念を持って,仕事に取り組んでおられるのである!。薄利多売で効率ばかりを考えていると勝手に考えていた企業(スーパー)の中に,このように、”地元産業を育成しよう”という気概を持った人物がいることに感銘を受けた。巨大な倉庫には次から次へと青果品が集まり,ベルクの各店舗に配送される。その一つ一つの商品にNさんたちバイヤーの方たちの熱い想いがこもっているのが衝撃的であった。

・次に,エノキやマイタケを生産されているアグリカルチャー・センターのIさんを訪問。こちらは石川電気株式会社という異業種からの参入だそうで,その意外さにこれまたびっくり。エノキの生産現場では,オートメーション化された工程に驚かされる。エノキやマイタケが栽培されている現場をはじめてみたが、おなじみのキノコたちがわんさと生産されているのは感動的であった。オートメーション化されているとはいっても,細かい環境管理や工程の調整には,肌理の細かい“人”による作業が不可欠であることがよく分かった。

・ここでは,秩父にスギのおがくずをキノコ生産者に生産している専門業者さんもいることが分かった。意外なところにビジネスチャンスがあるものである。ところで、栽培に利用した廃培地も最近は捨てられずに、農家では再利用できるということであった。そこには、理想的な地域循環社会の姿が垣間見える。

・続いて,今度はナメコを生産されている角仲林業のYさんを訪ねる。沢沿いに設置された工房の前で,沢に渡る風を感じながらお話を伺う。ここでは,キノコ(ヒラタケ)を始めようとされたときや,ヒラタケからナメコへと転進されたときの社長さんの鮮やかな決断っぷりに感動。そして,こうした地元生産者の”頑張り”を支えているのは結局は、人と人のつながりだったり、信頼だったり、に尽きることに感じ入らざるを得ない。

・それにしても,“野に賢あり”である。今回の訪問では、”教えられてばかり”だったが,こうした賢人とのふれあいは学生にとっても貴重な経験になってくれると期待したい。

メタリックフライ

2008-07-23 | フィールドから
・Y先生が土壌調査に来られるということので、現地立会い。炎天下の中、4-5名で1×1×1mをひたすらに掘り進んでいく。これは重労働である。立ち話の合間に、ふらふらと現場界隈を歩き回っていると、何か輝く虫が・・・。”ハエ”のようだが、こんなにメタリックなヤツは見たことがない。かっちょいい。



・講義用資料としてスキャナーで参考図書の画像を取り込んで保存する作業。最終的に使うかどうかはともかく、10数枚の写真を取り込む。こうした作業をしていると、少しは進んでいる気がして気持ちも安らぐというもの・・・。7月末〆切りの書類提出やら原稿などがあるのだが、明日から1泊で秩父出張。久しぶりのフィールド、楽しみである。

アンパンマン音頭

2008-07-22 | 研究ノート
・職場復帰。8月初旬の富良野行きに向け、電話連絡を取るうちに、Iくんのシャクナゲのことを思い出した。思い出したときにやらないと最近はすぐに忘れてしまう。ということで、信州に行かれたHさんに連絡。相変わらず控えめなトーンながら、シャクナゲについては既にまとめられつつあるそうだ。全くもってさすがである。早速、貴重な情報を送っていただいた。

・”やらなければならないことリスト”を作る。何だか多すぎて、かえって”何から手をつけてよいか分からん状態”になってしまった。とりあえず、10月に新しい講義やゼミが入っている。このまま時の流れに身を任せていると、本当にやばいことになりそうである。新たに講義用の書籍もいくつか入手したことだし、ボチボチと準備をしていく必要がある。

・アル・ゴア著の”不都合な真実”を購入。この本は2800円という価格の割にカラー写真が多く、見ごたえがある。年々後退していく氷河など、ショッキングな写真が並んでおり、やはり一度は見ておいた方がよい本だ。

・夕方から幼稚園のイベント、夕涼み会。子ども達は、色とりどりの浴衣や甚平姿で大張り切りである。強風のために、楽しみにしていた花火がなくなったのは残念だったが、アンパンマン音頭を一緒に踊って楽しかった。

手紙

2008-07-21 | その他あれこれ
・三連休最終日。東京国立博物館でのオルセー美術館コレクション特別展と科学博物館に行く予定にしていたのだが,子どもが微熱を出してしまったので,大人しくしていることになった。楽しみだっただけにちょっと残念。

・ヒノキ論文の修正原稿に関する”お手紙”を修正。一つ一つの指摘に対して丁寧にコメントを作成していく。後で修正する必要が出てくるのだが、とりあえず、現段階での改訂ページと行も入れる。こうした“お手紙”は実はとっても重要で、ヤチダモ論文の時には、この手紙も英文校閲に出したくらい。今回は確率計算で指摘を取り入れた形でうまく改訂できていると思うので,そういう意味では”書きがい”がある。

・最近、迷惑メールの数が激減しているのはいいのだが、妙な不安を感じている。どうも、審査結果メールを見逃して以来、メーラーを信用できなくなっているのだが、本当にちゃんとメールが届いているのか心配である。

親子のためのコンサート

2008-07-20 | その他あれこれ
・こう暑いとプールにいくしかない。子ども用のコバルトブルーの水中眼鏡を購入。張り切る子どもを連れてプールへ。最初、仰向けに”ぷかん”と浮かぶことができないかったのが、力を抜いておなかを出すようにするように教えると、だんだんと浮かべるようになってきた。バタ足も相変わらず力が入っているのだが、こちらも少しは進むようになってきた。

・プールでは、子どもはただ、はしゃいでいるだけのように見えるのだが、いつの間にか、水に慣れるらしい。こうして、だんだんと”浮かぶコツ”のようなものが身についていくといいのだが・・・。こちらの市民プールは、幼稚園児でもちょうどよい深さのコースがある。

・2時から駅前のホールにて、親子向けのクラシック・コンサートに出掛ける。このコンサートでは、なんと、幼稚園で同じクラスのお母さんとお父さんがピアノ、フルート、そしてテノール!として出演されている。会場では、同じクラスの幼稚園児たちがはしゃぎまくっていたのだが、コンサートが始まるとそれなりにおとなしく聞き入っていた(普段知っている○○ちゃんのお母さんがドレスを着てピアノを弾いてる!という驚きもあったみたい)。

・このコンサートは、「子どもと大人が楽しめる」というのがコンセプトになっているだけに、1曲あたりの演奏時間が短く、また、細かく休憩を取るようになっていた。また、クラシックだけど、どこかで聞いたことがある曲だったり、あるいは子ども達が一緒に歌う場面があったりと、細部に至るまで実によく工夫されていた。特に最初の曲は、動物達が次々に集まってきてお祭りをするような内容だったのだけれど、テノールのお父さんのナビゲーションで、あっという間にその世界に引き込まれた。こうして本物の音楽に触れられたのは、子どもにとっては貴重な体験だろう。

自生標高への適応

2008-07-19 | 研究ノート
・3時過ぎ、秩父のSさん主催(?)の有志ゼミに参加&講演するために出動。後楽園、本郷三丁目と乗り継いで、赤門から理学部2号館に入る。かなりレトロな雰囲気の建物の中で、例によって迷いつつ、どうにか会場へと到着。3連休初日ということもあって、聴衆が集まってくれるのか心配だったのだが、15名くらいは来て頂いた。今回は理学部の皆さんも多く、初めてお会いする人が多い中での講演となった。

・頂いたコメントの中で重要なものは、一つは3年生まで低標高で育てる中で、実はセレクションがかかってしまうだろうというものである。そう考えると、過去の文献をもう一度詳細にチェックする必要があるだろう(が、知りたいことのデータがまとめられていて再解析とかは難しかったりするんだよねえ・・・)。一番の理想としては、標高別の種子をもう一度採取して、現地に直播して生残状況を詳細に調べるといいよね、というのが一つの結論である。

・トドマツ種子散布論文のベイズモデルでお世話になったKさんのお友達(?)でもあられる著名なTさんから頂いたコメントも重要である。低標高と高標高では確かに開花フェノロジーがずれるので、なかなか交流しないのは分かるが、すぐ隣の標高域とはフェノロジーもオーバーラップするはずで、それにもかかわらず、どうして遺伝的分化が起こるのかというものである。これについては、農学部のセミナーでも、H先生から同様の質問を頂いていたものだ。

・この件について、関連するのかどうか、まだよく分からないけれど、面白い話をTさんはしてくれた。例えば、とある樹種はある場所以上には北方向にはいかずに止まっている(ブナを思い出していただければ、イメージはできるだろう)。この樹種の北限の小さな集団の少し南には、この集団に比べればやや大きな集団があることになる。そうすると、北限集団で北の厳しい環境下に適応的な遺伝子が生まれても、南の集団からの遺伝子流動が大きいと、交雑によって引き戻されてしまい、何らかの条件が加わると、理論的にはある一定の場所で分布が止まることが予測できるらしい。

・ちょっと正確ではないかもしれないが、今回の標高別の適応は、こうした分布の端っこの問題と少し似ているような気がするということであった。種の分布の限界の問題は既にOIKOSの2005年1月号で特集が組まれるくらいに既存研究があるようなので、一度、じっくりと調べてみたいところだ。そのほか、高標高に植栽した個体のシュート特性とか、着花特性など、これから取り組まなければならない研究に関する色んなヒントを頂いた気がする。やっぱり、鋭い人たちに聞いてもらうと、それだけで勉強になる。時折、こうした刺激を受けないと・・・、日々に追われていてはいけませんなあ。