文身の美しいことを元、文章と言った。人が立つ形の象形の胸部に心の形やXやVの形の印を加えるのである。「章」と言う漢字は入れ墨を入れる辛(はり)の先の部分に墨液の溜まった形の文字である。文身はもともと儀礼的なものであり、朱や墨で書いたものであった。儀礼の後は消された。しかし「彰」と言う文字は入れ墨の辛で皮膚の下に墨を入れる事を示す形の漢字であり、後々まで残すために身体に装飾として施される場合はこの方法が取られた。章のとなりの彡(さん)は文身の美を示す形である。また皮下に辛で入れ墨を入れる事は刑罰にも用いられ、童、妾、憲などはこの辛に従う字である。
岩波新書、白川静著「漢字」より