読書など徒然に

歴史、宗教、言語などの随筆を読み、そのなかで発見した事を書き留めておく自分流の読書メモ。

て(te)のeがaに代わって、た(ta)になることが

2011-11-25 09:05:03 | 漢字
「手」の音はtとeに分解出来るが、日本では古く、そのeとaが入れ替わったり
iとoが入れ替わることが有った事が知られている。
目(me)が目(ma)とも読まれることが有り、木(ki)が木(ko)と読まれる
例が有る。「目のあたり」は「まのあたり」、眼(まなこ)やまなじり、も
そうだろう。木は、こかげ、打ち出の木(こ)づち、なども。
話を「手」に戻すと、「手(て)もつ(保つ)」、「手(た)ずさえる」
手向(たむ)ける、手綱(たづな)などが有る。
何か法則が有りそうだ。対象への働きかけが有るときに音の変化が
現れるのか、わたしには良く分からない。


ちがうよ!

2011-11-03 09:16:59 | 漢字
ビートたけしが司会するテレビのクイズ番組を見ていた。
「平成教育委員会」と言う。その中で漢字の成り立ちについての
問題が有った。この番組では解答を間違うと「ちがうよ」と言う
声が聞こえるようになっている。
田んぼで働くことを示す漢字は?と言う問題で答えは男。
その漢字は、田と力の会意字だが、しかし、それで性別の男を意味
するのではない。力は田圃で使う農具の鍬の形だ。それもクイズの
解説では正しかった。
が、この漢字は男と女と言う場合の男を意味するのではなく農具を管理
する言わば役所を意味する漢字なのである。
爵位に公爵、伯爵などのなかに男爵と言うものが有る。役人の地位
を示している名残である。
漢字の成り立ちを70年以上研究され、勲二等、文化勲章を
受賞された故白川静さんは天国から、そして、白川さんの著書を読まれた
多くの人たちは、その番組に向かって「ちがうよ」と呟いていたのではないだろうか。
もう一つ、「ちがうよ」と言いたくなる漢字の問題が有った。
名と言う漢字の成り立ちである。夕暮れに自分の名を言う事を意味すること
から出来たと言う解答であったが、この番組の解答も間違いである。
正解は白川静の著書やその著書を解説した平易な本が多く出ているので
それを見ていただこう。

漢字「殺」

2011-02-05 09:53:19 | 漢字
漢字「殴」の殳「しゅ」は「殺」にも使われている。ちなみに左側は木に縛るという
意味合い。と或るブログに書いている人がいた。これもちょっと違うのではないかと
思って調べてみた。
左側のメと木の組み合わせに見える部分は、祟りをなす獣の形で、それを殳と言う
長い杖のような戈(ほこ)で打ち、祟りを減殺するのがこの漢字「殺」の元の
意味である。
白川静著「常用字解」平凡社から

漢字「殴」

2011-02-04 10:04:41 | 漢字
「殴」という字の右側は、手が悪いことをする、という
意味があるのだそうだ。とブログに書いている人が居た。
が、違うような気がしたので調べてみた。
この漢字は元は毆に作る。區と殳(しゅ)を組み合わせた形。
區は匸(けい)(秘密の隠された場所のこと)に多くの
サイという祝詞を入れる入れ物を置き、そこで祈った
場所を意味する。
ここで祈るとき、この祝詞を入れた入れ物を殳(つえぼこ。
杖のような長いほこの事)で叩くのである。こうして神に
祈りの実現を強制したのである。
この漢字は、それを意味した文字である。
可能の可も同じ事を意味する。
白川静著「常用字解」平凡社から

殴」という字

2011-01-29 10:27:50 | 漢字
「殴」という字の右側は、手が悪いことをする、という
意味があるのだそうだ。とブログに書いている人が居た。
違うような気がしたので調べてみた。
この漢字は元は毆に作る。區と殳(しゅ)を組み合わせた形。
區は匸(けい)(秘密の隠された場所のこと)に多くの
サイという祝詞を入れる入れ物を置き、そこで祈った
場所を意味する。
ここで祈るとき、この祝詞を入れた入れ物を殳(つえぼこ。
杖のような長いほこの事)で叩くのである。こうして神に
祈りの実現を強制したのである。
この漢字は、それを意味した文字である。
可能の可も同じ事を意味する。
白川静著「常用字解」平凡社から


漢字に関するエピソード

2011-01-26 10:51:29 | 漢字
面白い漢字に関するエピソードがある。

留学生にとって、漢字の勉強は大変難しいものであるら
しい。いろいろな工夫をしている。

「案」という字。女の人が木の上に立って道を示してくれる、と
覚えるのだそうだ。
ついでにこの字を白川静著「常用字解」平凡社で調べてみると、
本来は物を置く台の事でつくえの事である。はじめは食事用のもので脚の
あるものを言い、ないものを槃(たらい)と言った。後に書物を置いて考案、考察
することに使ったので「かんがえる」事を案と言う。


今年の漢字「暑」

2010-12-11 10:26:00 | 漢字
今年の漢字に「暑」が選ばれた。本当に暑い夏だった。
漢字「暑」のもとの字はこの字の下の部分の者の日の上に点が有る。
この文字を篆文まで遡るとこの漢字の者の部分は集落を囲むお土居を示している。
お土居とは土の垣で、その中に、悪邪を払う神への祈りの文を入れた
サイという入れ物、曰(えつ)を埋めた形が者である。
それが集落を守る土の垣で、その垣が日に照らされて暑くなる事を
表した漢字が「暑」である。
白川静著「常用字解」平凡社から

「武」

2010-10-08 13:54:41 | 漢字

NHKの番組「歴史ヒストリア」を見ていた。木戸孝允が主題になっていた。
幕末、桂小五郎(木戸孝允)が20才の頃、江戸へ剣術修行に出た。神道無念流の道場で修業したが、そこで彼の人生を決定づける道場訓に出会ったと言う。その道場訓とは
「武は戈(ほこ)を止むるの義なれば、少しも争心あるべからず。」と言うのである。
これ以後、彼は攘夷派から追われても逃げまくるのである。
ところで、武という漢字は図のように甲骨文字では戈と止の会意文字であり、止は足の象形であり、それは行く、進むの意味である。従って武の本来の意味は武器を止めることではなく、武器を持って進む事を意味するのである。この剣術道場も木戸も誤解したようである。

新字になると

2010-09-29 09:02:54 | 漢字

戦後、「当用漢字表」なるものが発表された。昭和23年だったと記憶しているが、その表によって使用する漢字が減らされ、略字化されて新字が生まれた。が、その旧字が略字化されて新字が生まれたときに、その新字からその漢字の成り立ちが分からなくなってしまった字が多くある。図の「及」と言う漢字もその一つだ。この漢字は図の右端にあるように甲骨文字では人を後ろから支えている形の文字である。これが左端の旧字のように書かれていればまだ漢字の成り立ちを推測できるが現在の図中央のように書かれるとそれは分からなくなってしまう事だろう。扱や級に含まれる及の部分も同様である。

漢字「安」の成り立ち

2010-09-28 13:30:09 | 漢字

漢字「安」はウ冠の宀(べつ)と女の会意の文字。阿辻哲次氏はこの字が女性が家の中で平穏に暮らしていることから「静である」「穏やかである」と言う意味を表す・・・と思っていたそうだ。女性が安らかになるためには、その前にやる事が有った。この字のウ冠の部分はその家の祖先の霊を祭ってある廟(みたまや)の建物を意味し、安はその中に女性が座っている形で、嫁いで来た新婦が廟にお参りし夫の家の祖先の霊を祭り、その家の人になるための儀式をしている事を意味する漢字である。女性はその家霊に守られ安心出来たのである。図の甲骨文字には数箇所に点が描かれているが、女性に酒か水をふりかけお祓いもしたのである。女性を家の中に閉じ込め男が安心したからではなく、女性の方が安心したのである。