GOODLUCK'S WORLD

<共感>を大切に、一人の男のスタンスをニュース・映画・本・音楽を通して綴っていきたい

試写会「ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル」

2011年12月09日 | Weblog
 洋画を鑑賞するときは私はいつも一番後ろの中央辺りの左寄りを選ぶ。字幕を読みながらスクリーン全体を視界に入れるためだ。今回は全席指定の試写会ということもあって、午前中に車で一人梅田に向かい、いつも座る辺りの席を確保した。その後、一旦自宅に帰り、夕方連れ添い引っ張り出し地下鉄を使って梅田に出向いた。

 トム・クルーズの新作「ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル」の試写会は阪急百貨店横のナビオ8Fにある梅田TOHOシネマズで行われた。会場はスクリーン1(西日本最大級の751席)。18:10に開場され、私たちはポップコーンとドリンクセット、照り焼きチキンラップサンドとポテトを買い込み入場した。いつも行く堺のMOVIXと比べても倍くらい大きい会場に驚いた。最後列の為、スクリーンまでの距離がありスクリーンが小さく感じた。

18:30 司会の森川みどりさんがステージに上がり映画紹介を始めた。「関西でこの映画を見るのは皆さんが初めてですよ。私もまだ見ていません」とおっしゃっていた。マスコミ関係者も多数来られていたようだ。私のすぐ横に座った女性もそれらしき人で、来年用の少し大きめの手帳を出してメモ書きの準備をしていた。仕事で映画を観るという気持ちを考え、少し可哀想になってしまった。

          
                            
 さて、MIシリーズは、映像の魔術師と言われたブライアン・デ・パルマ監督、今やアクション映画の巨匠となったジョン・ウー監督、そしてベテランJ・J・エイブラムス監督という実力派監督が支えてきたが、この4作目の新作はピクサーで「Mr.インクレディブル」「レミーのおいしいレストラン」を手がけてきたブラッド・バード監督の初の実写映画。かなりの冒険だったと思うが、成功したように感じた。

 ウィキペディアによると「プロトコル」とは、複数の者が対象となる事項を確実に実行するための手順等について定めたもの。日本語では「規定」「議定書」「儀典」などと意訳される。映画の副題「ゴースト・プロトコル」をどのように解すればいいのか、鑑賞後考えてみた。前回までのシリーズでは仲間の裏切りが多々みられたが、今回は裏切りは皆無で、この点は非常に共感が持てた。映画のテーマは<絆>だと思う。4名の仲間がそれぞれの絆や情を胸に秘めてミッションに向かう。しかし、今回のミッションを知るのはイーサンの仲間4人だけとなったことからこんな題名が付いたのかもしれない。そして<絆>や<情>が薄れ、京都議定書の存在が揺らいできた現代を憂いているのかもしれない。

 私や連れ添いだけの現象かもしれないが、最近アクション映画では時々眠たくなくことがある。先月見たブラピ主演の「マネーボール」のような映画では決してそんなことにはならないが、この映画ではそんな状態に瞬間だが陥ってしまった。大好きな映画「ダークナイト」も実は初めの方で同じ現象に陥ったが、その後は予想を超える展開に心を掴まれてしまった。登場人物たちの意外行動や胸を打つセリフに感動したり、予想を越える彼らの変貌に共感できたからだ。アクションをメインにした映画ではそんなドラマ的展開が乏しくなる。目で追っているだけでストーリーが入ってくる作りになっているからだと思う。
 
           
               
 速読法を身に付けた人は目で追うだけで文章の意味が把握できるが、一般的に本を読むときは文章を目で追いながら頭の中で意味を考え、またイメージしながら内容を把握する。アクション映画にはそんな必要がない。だからこそ、多くの大衆に受け、大ヒットするのだが。

 会場を出ながら「頭を働かせないからアクション映画は眠たくなるのだ」と初めて気がついた。MI:3ではそれまでのフィリップ・シーモア・ホフマンの演技からは予想もできない悪役ぶりに驚いた。アカデミー賞助演男優賞を獲得した俳優を立てていたが、今回悪役を演じたミカエル・ニクヴィスト(スウェーデン製「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」)は、酷い扱いだったように思う。あまりにもセリフやシーンが少なすぎて悪役の人物像が構築できないまま終わってしまった。アクション映画では敵味方の対比こそが、映画の価値を引き上げる。アクションシーンに熱が入りすぎると危険な結果を招く。連れ添いは映画を見終わって「このシリーズはもういい。ボーンシリーズは眠たくならなかったのに…」と残念がった。同じように感じていたようで内心驚いた。30年も一緒に映画を見続けて、感想を言い合っているうちに感性が似通ってくるのかもしれない。

 トム・クルーズが自ら「自分はディスレクシアだ」と 公表した事によって、この障害の存在が広まったが、『ディスレクシア』(失語症・難読症・識字障害・読字障害)とは、2つの文字の違いがわからない、文字や単語の理解まで非常に時間がかかる、文字の並びが歪んで見える、文字自体が二重に見えるなど様々な症状がある。トーマス・エジソン、レオナルド・ダ・ヴィンチ、アルベルト・アインシュタインも同じディスレクシアだったと云われている。そんな障害を持っているにも関わらず、トムはハリウッドのスーパースターに登り詰めた。その頑張りは尋常ではなかったはずだ。ハンディー乗り越えた彼を心から尊敬する。

 三谷幸喜監督が新聞エッセイの中で「ファンというのは、映画や劇に出演する役者の役柄を見に来るのではなく彼らの人間性を見に来る」と語っていたが、私も同感だ。役者たちはそれぞれのスタンスで役柄を演じようとする。同じ台本・同じ監督でも演じる役者によってファンには違って見えてくるはずだ。その違いが人間性の違いだと私は思っている。マット・デイモン主演のボーン・シリーズも、当初ブラッド・ピットでという話があったそうだが、彼が主演だったらあのシリーズはきっと違ったものになっていたのではないか。

          

 トムの出世作が「トップ・ガン」だったことからアクションスターとして歩み始めたが、好きな作品は、「ラスト サムライ」 (2003)、「ザ・エージェント」 (1996)、「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア 」(1994)、「ザ・ファーム 法律事務所」(1993)、「遥かなる大地へ」 (1992)、「カクテル」 (1988)で、展開の中で心の弱さが浮き彫りになってくる彼の演技に共感が持てた。彼の温かそうな人間性を感じるからだ。きっと人に対して優しい性格の持ち主に違いない。多感なの頃の両親の離婚、新興宗教への傾倒が彼の優しさと弱さの人間性を伺わせる。これは私の自論だが、宗教に傾倒する人に決して悪い人はない。
 4作のMIシリーズ比較では、3作目に軍配を挙げる。トム・クルーズ演じるイーサン・ハントが1、2作目と違って与えられたミッション(悪人退治)で、予想を越える反撃を受け、慌てふためき必死になった姿に共感できたからだ。今回の4作目では主たる登場人物たちに共感を受けるとこまではいかなかった、これが敗因だ。連れ添いとは似てきたようだが、人それぞれに感性は違う。私たちにはイマイチでも、日本や世界では大ヒットするような気がする。
 私にとってのアクション映画最高傑作はマット・デイモン主演の「ボーン・アルティメイタム」だが、それを5点満点とすれば、MI:3が4点、新作MI:4は3.5点だったことを最後にご報告しておきます。