龍の庭・3

　娘は、サンドラといいました。魔女とも精霊ではなくて、何か不可思議なオーラを持っているのです。物静かな態度を崩さず大勢の者と集うことが苦手のように、ユノーには思えました。心を見つめていると、空気に混ざり融けこんでしまいそうなペールピンクが覆っています。無垢な少女から娘に転じたからです。

　誰かが近づいても、身体から発せられるオーラが守っているので結界は解けません。サンドラにあるオーラは、ユノーが張ってなのを気づかないでいます。つゆ草は、それを言い当てたのです。サンドラに異変が起きたのは、花々が咲き乱れ蝶や蜂の群れ飛ぶ午後のことです。一目見た瞬間にお互いが惹かれました。

　サンドラの心が華やかなショッキングピンクやマゼンタに、ブライトピンクへと移りました。ユノーは、一瞬の油断からオーラを外して途中に掛けることができません。ユノーの任務は、何があっても優先しなければ天界や人間界が障るからです。サンドラの憂いは見られませんから、ある意味よろこぶことでした。

　サンドラは、一緒に暮らす決意をして子どもを授かりました。小さな家も持てましたし、贅沢ではないけれども歓びの年月。笑い声に満ちた中で、家畜の世話をし子どもの成長をたのしむサンドラには不満さえ思えないのでした。ある日、道に迷う女旅人が現れるまでは。闇の迫る時に、追い出せる訳がありません。

　サンドラが爽やかな朝陽の中で目覚めると、そこには子どもしかいません。サンドラの心が、ブルーから次第にグレーに転じてしまった時ユノーは左手を翳しました。雷が走り、あっという間に二人を貫き通す。サンドラと子どもを何処に？哀しみに暮れるユノーに、魔法使いは告げました。我に任せ・案ずるなと。