2006-0601-yms048
あの方が煙となったその日から
塩釜の名が親しくなったわ 悠山人
○紫式部集、詠む。
○略注=親しい人(夫)の死を嘆いていたら、たまたま東北の名所の絵をいだいた。そこに塩釜の名を見て、と詞書。後半二句に目が留まったので、少し調べてみた。やはり平王クは、ここを詳論する。
¶見し=見た。旺文版古語辞典には、「見る」八義の七番目に「異
性と関係を持つ。夫婦となる。妻とする。」とあり、用例として源
氏・桐壺から、「さやうならむ人をこそみめ。」が載る。桐壺のよう
な、他に比べる人など、決していない、そういう人を妻としたいも
のだ、というわけだ。
¶むつ(睦)まし=後に「睦まじ」。現代では人間関係に使うだけだ
が、この時代は「慕わしい。なつかしい。」の意にも。この歌と同旨
に、源氏・夕顔の用例が同辞典にある。
見し人のけぶりを雲と眺むれば
夕べの空もむつましきかな
また平王クは、さらに葵・須磨・明石などから採出する。
¶塩釜=宮城県塩釜市。都にも、古くから製塩地として知られる。
製塩の煙が葬送に繋がる。
○葬送儀礼について。新古今集のときから、葬礼は火葬だけが何回も登場している。詠者である貴族階級には、早くから火葬が普及していたからだが、大多数の庶民・百姓(ひゃくせい)は土葬であった。一般的な常識ではそれでいいのだろうが、浅学の身としては、葬礼史にもう少し集中して関わってみたい、という気持ちがある。
□紫048:みしひとの けぶりとなりし ゆふべより
なぞむつましき しほがまのうら
□悠048:あのかたが けむりとなった そのひから
しおがまのなが したしくなったわ
あの方が煙となったその日から
塩釜の名が親しくなったわ 悠山人
○紫式部集、詠む。
○略注=親しい人(夫)の死を嘆いていたら、たまたま東北の名所の絵をいだいた。そこに塩釜の名を見て、と詞書。後半二句に目が留まったので、少し調べてみた。やはり平王クは、ここを詳論する。
¶見し=見た。旺文版古語辞典には、「見る」八義の七番目に「異
性と関係を持つ。夫婦となる。妻とする。」とあり、用例として源
氏・桐壺から、「さやうならむ人をこそみめ。」が載る。桐壺のよう
な、他に比べる人など、決していない、そういう人を妻としたいも
のだ、というわけだ。
¶むつ(睦)まし=後に「睦まじ」。現代では人間関係に使うだけだ
が、この時代は「慕わしい。なつかしい。」の意にも。この歌と同旨
に、源氏・夕顔の用例が同辞典にある。
見し人のけぶりを雲と眺むれば
夕べの空もむつましきかな
また平王クは、さらに葵・須磨・明石などから採出する。
¶塩釜=宮城県塩釜市。都にも、古くから製塩地として知られる。
製塩の煙が葬送に繋がる。
○葬送儀礼について。新古今集のときから、葬礼は火葬だけが何回も登場している。詠者である貴族階級には、早くから火葬が普及していたからだが、大多数の庶民・百姓(ひゃくせい)は土葬であった。一般的な常識ではそれでいいのだろうが、浅学の身としては、葬礼史にもう少し集中して関わってみたい、という気持ちがある。
□紫048:みしひとの けぶりとなりし ゆふべより
なぞむつましき しほがまのうら
□悠048:あのかたが けむりとなった そのひから
しおがまのなが したしくなったわ