極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

ネオビジネスマン考 ④ 

2023年06月19日 | 環境リスク本位制


彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救
ったと伝えられる"招き猫"と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備
え。(戦国時代の軍団編成の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした
部隊編のこと)の兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ。


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絶好調!オオタニ&トラウト
Ohtani & Trout Homerun duo of Angels are out of control in June!

エリアから探す高島市

       三尾の海に網引く民のてまもなく 
          立居につけて都恋しも
                       紫式部

※ この歌は「源氏物語」の作者紫式部が、この地を通ったときに
詠んだもの。平安時代の長徳2年(996年)越前の国司となった父藤
原為時から船路にて湖西を通り越前に向かう。途中、高島の三尾崎
の浜辺で、漁をする人々の網を引く見なれぬ光景に、都の生活を恋
しく思い出し詠める。紫式部の若き日を偲んで、白鬚神社の境内に
歌碑を建立。



『源氏物語』の作者および作品を深層で統御しているものは何か?
『源氏物語』を論ずるのは、ひとつの特定の物語、特定の作品を論
ずることではなく、作品そのもので物語、文学という概念を論ずる
ことである。―作品をつらぬく無意識としての“自然”、霊威=物
の怪に対する人々のありよう、また歴史物語『大鏡』や『栄花物語
』とのトポロジカルな同型性に着目し、作品の構造と深層を浮き彫
りにする。著者の方法意識がもっとも鮮明に発揮された、これぞ吉
本『源氏』論と評される古典論の代表作。

吉本 隆明【著】1982年 大和書房
目次
第1部 母型論
第2部 異和論
第3部 厭離論
第4部 環界論
附録 わが『源氏』
------------------------------------------------------------
  つまりわたしたちはここで、物の怪が病いや、おびえや、憑
 依状態の原因とみなされた、異常に過敏な内面性、しかも集合
 的な内脂性に統御されて振舞う登場人物たちの、ある異様な世
 界を想像する必要があるとおもえる。この世界ではどんな魔も
 憤怨も他者に投射することができるし、他者から被害感として
 感受することもできる。その世界の全体が、さらに「前の世」
 から本質的には決定されているかも知れないのだ。
  桐壷帝は悲嘆のうちにも、いつか先帝の第四の内親王が、亡
 くなった桐壷更衣にそっくりだといううわさをきいて入内させ、
 やがて更衣にもまして寵愛するようになる。なぜかといえば「
 前の世」の定めに、いまもからめとられているからだ。この女
 御(藤壷)は銅壷更衣の輪廻による生れかわりと感じられたの
 だ。藤壷の宮が亡くなった桐壷更衣と、容貌や挙措がそっくり
 だからうっとうしいとか、似てはいるか微妙にちがうのがよい
 とかいった、撰りわけの認識、つまり世界の差異が桐壷帝を動
 かしているのではない。ただ生れかおりの理念に叶っているこ
 とが深い寵愛の根拠なのだ。この理念がまた光源氏をどれだけ
 拘束するかをやがてみることになる。帝はかつて桐壷更衣を異
 常なほどはげしく寵愛し、そのあまりほかの女御たちの冷眼や
 嫉妬をすべて無視するほどだった。それが更衣をみすみす死の
 淵へ追いこんでゆくのを知りながら、寵愛を制御することがで
 きなかった。その「前の世」の定めが蘇えるように、藤壷の宮
 を寵愛することになる。帝が、桐壷更衣から生まれた第二皇子
 である光源氏を、ほかの皇子よりことさら可愛がるのも、銅壷
 更衣から放射される「前の世」の定めの圏内に光源氏が存在す
  るからだ。

    わたしたちは冒頭からすでに特異な相似と反復の世界におか
  れ、その世界を流れる無常と因縁にからめとられる気がする
  だがほんとは、たったいまこの物語の世界に入ったばかりなの
  だ。やがていやおうなくこの世界の特異点に遭遇し、そこで起
  るカタストロフィの定型にふれることになる
    幼い光源氏は母である亡き銅壷更衣の面影などおぼえてはい
  ない。だが亡き母にたいへんよく似たひとだと典侍からいわれ
  たので、子供心にあたらしく継母になった藤壷を「恋しい」と
  おもうようになる。そしていつも藤壷の宮のところへ行き、親
  しくなって、その面影をひたすら眺めていたいとかんがえる。
   桐壷帝は光源氏が元服した後もいつも側においておぎたがっ
  た。光源氏のほうは心のなかで、ただ藤壷の姿が類いなくおも
  えて、ああいう人と婚姻したいものだと憧れるようになる。
  だが元服したあとは、もう前のように御廉の内に入れてはもら
  えない。そして音曲の遊びのおりに、琴や笛の音を聴いて心を
  通わせたり、ほのかなその声をきくのを慰めに、内裏住いを好
  ぎだとおもうようになる。
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『わが源氏物語ノート ①』:そもそもひらがなとは
 
 野坂山地

       知りぬらむ行き来にならす塩津山 
        世にふる道はからきものとは 
                       紫式部

※ 塩津山を行く人足よ、そなた達も人生の道はこの峠のように険
  しいと知っているだろうに/紫式部の一行の旅の荷物を人足に
    持たせ、難所の塩津峠を越える時、人足たちが愚痴っているの
    を聞いて詠んだ歌。

 ひらがなは、中国から伝来した漢字から日本で派生したもの。西
暦900年頃の平安時代に、そのまえの奈良時代を中心に使われていた
万葉仮名に代わるものとして、ひらがなが広がる。漢字で表されて
いた文章は画数が多く面倒で、日本人は省略して書くようになる。
それを行書と呼び、その漢字の意味にかかわらず、日本語の1音に
漢字1字をあてて音節を表記するようになります(万葉仮名、奈良
時代)。やがて、より簡単に速くかけるようにと、行書はさらに省
略され(草書体)変化しし定着。漢字は本来の日本語の音節に併せ
てバージョンアップを重ね、ひらがなという副産物を生む。また、
その漢字の意味にかかわらず、日本語の1音に漢字1字をあてて音
節を表記するようになる(万葉仮名、奈良時代)。やがて、より簡
単に速くかけるようにと、行書はさらに省略され(草書体)、それ
がひらがなとして定着 。万葉仮名は画数が多く、その省略形として
ひらがなが生まれ、これは最近の日本語でも省略形が次々生まれて
いることと無関係ではない。たとえば明治期には、それまで略字や
誤字として使われていた漢字が正式な字として昇格した(國→国、
學→学、櫻→桜など)。また、ヤバい、エモい、それな、など「感
情の省略形」とも言うべき言葉も若者によって生み出されている。
ひらがなが長い時の要望に応えた一手であるとし、受け入れられる
のも早かったょうで、平安時代にも、官人が地方へ赴任する、いわ
ゆる転勤があったため、ひらがなが日本各地に普及したのは早かっ
たと言われ、わたしたちが使う日本語は、「簡素化」の歴史の上に
横たわっているのでしょう。
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再エネ革命渦論 138: アフターコロナ時代 337
技術的特異点でエンドレス・サーフィング
  特異点真っ直中
ここ数年の科学技術進展に驚く昨今。今日も気になる事例を摘出。



図.宇宙線ミュー粒子によるナビゲーション© 2021 Hiroyuki Tanaka/
Muographix


世界初、ミュー粒子による地下ナビゲーションに成功
【要点】
1.GPSを使えない地下空間等におけるナビゲーション技術の開発に
 成功
2.GPSに変わる新たなグローバルナビゲーション技術の創出
3.将来、屋内、地下、海中等における自律移動ロボットへの活用
 が期待

6月16日、東京大学国際ミュオグラフィ連携研究機構は、同大学生産
技術研究所、および日本電気株式会社、株式会社テクノランドコー
ポレーション、カターニア大学、ダラム大学、北京大学と共同でGP
Sを使えない地下空間等におけるナビゲーション技術(muPS)の開
発に成功。これまで、muPSの受信機は地上局と有線接続されていた
ためナビゲーションの自由度は大きく制限されていたが、今回、無
線muPS技術(MuWNS: muometric wireless navigation system)の実証に
成功したことで、muPSによるナビゲーションの自由度が大きく向上
した。muPSでは、宇宙線ミュー粒子の強い透過力と物質によらない
飛行速度の普遍性から受信機と地上局との間を隔てる物質に依らず、
受信機と地上局との間の距離を高い精度で決定できる。



図1.MuWNSの原理 ©2021 Hiroyuki Tanaka/Muographix Reference1〜
Reference4が4ヶ所の地上局に対応する。BF及び1Fにおける赤矢印が
今回移動した経路。白丸がナビゲーション結果

muPSについて
宇宙線ミュー粒子は、銀河系における超新星爆発などの高エネルギ
ーイベントによって加速される宇宙線と、地球大気が反応してでき
る素粒子の一つである。宇宙線ミュー粒子は透過力が強く、あらゆ
る人工構造物をほぼ真空中の光速度で貫通することができる。送信
者は基準となる地上局と地下受信機との間の宇宙線ミュー粒子飛行
時間を測定することで、地上局と地下受信機との間の距離を正確に
決定できる。地上局を4ヶ所以上設置することで、地下受信機の位置
(x, y, z)および時間の4変数を導出することができる。宇宙線ミ
ュー粒子は地球上いたる所に同じように降り注ぎ、その速度は屋内、
屋外、地上、地下問わず同じ速度が担保されているので、グローバ
ルにmuPSを実施することが可能である(図1)。従来、muPSでは地上
局と受信機との間をケーブルで結び時刻同期を保証していたが、ケ
ーブルの存在はナビゲーションの自由度を大きく制限していた。今
回、受信機に高精度のクロックを実装することで、地上局=受信機間
の時刻同期をケーブルレスで実現。表1に地階におけるMuWNSのナビ
ゲーション精度と地表におけるGPS/GNSS単独測位)精度とを比較す
る。目標精度(1m)には届かないが、都市内におけるGPS単独測位精
度と比べて高いナビゲーション精度を得ることに成功した。

表1:MuWNSのナビゲーション精度
©2021 Hiroyuki Tanaka/Muographix
MuWNSによるナビゲーション誤差と都内、およびカルガリー市街地
で測定されたGPS/GNSS測位誤差とを比較する

【展望】
目標精度(1m)を達成するためには受信機のクロックの精度を上げ
る必要がある。一方、ポスト5Gに向け昨今ではチップスケール原子
時計(CSAC)(注5)の低価格化が進んでいる。現在、受信機のクロ
ックとして実装しているクオーツをCSACに置き換えることで目標精
度の達成が見込まれる。目標精度が達成できれば、自律移動ロボッ
トへの実装が可能となる。MuWNSによる自律移動ロボットは、屋内、
地下、海中等の環境下で複雑な任務の効率的な遂行を可能とする。
家庭、病院、オフィス、工場、鉱山、海洋調査、港湾等において、
緊急対応、セキュリティなど様々なサービスの自動化を含む広範囲
にわたる応用の可能性を秘めている。
【関連論文】
<雑誌名> iScience
<論 文> First Navigation with Wireless Muometric Navigation System (M-
       uWNS) in Indoor and Underground Environments

<著 者> Hiroyuki K. M. Tanaka, Giuseppe Gallo, Jon Gluyas, Osamu
        Kamoshida, Domenico Lo Presti, Takashi Shimizu, Sara Steige-
                  rwald, Koji. Takano6, Yucheng Yang, Yusuke Yokota (muPS
                 collaboration)




Intel12量子ビット搭載チップ「Tunnel Falls研究者向けに提供
6月15日(米国時間)、12量子ビットを搭載した量子研究用チップ
Tunnel Falls」を公開し、量子研究コミュニティに対して提供する
と発表した。Tunnel Fallsは、Intelが研究者向けに発表した初のシリ
コンスピン量子ビットデバイス。標準的なCMOSロジックの処理プロ
セスと同様のフローで製造が可能で、同社の持つプロセス制御技術
と組み合わせることで、ウェハ全体に対して95%の歩留率を実現で
きるとしている。300mmウェハで製造され、1枚で2万4,000個以上の
量子ドットデバイスを提供できる。
同社では、大量生産用の製造設
備を持たない学術機関に対して、Tunnel Fallsを提供。研究者がす
ぐに実験や調査に取り組めるようにし、量子技術に関する幅広い研
究や技術開発を可能にするという。また、すでにTunnel Fallsをベー
スとした次世代量子チップの開発を進めており、2024年にも発表を
予定している。あわせて、Laboratory for Physical Sciences(LPS)、LPS
Qubit Collaboratory(LQC)、Quantum Information Sciences(QIS)
らと、量
子コンピューティングに関する共同研究を行なうなど、各国の研究
機関と連携して、量子エコシステムの構築を進めていく。
via Gigazine

参考図 光吸収能の高い薄膜を用い、効率の良いエネル}ギー移動
を起こさせることによって、錯体単体に比べ約400倍の強発光を達成
した。
薄膜中の発光機構解明で高効率・強発光

6月19日、九州大学と北海道大学は,三価ユウロピウム(Eu(III))錯体を
用いた薄膜における発光過程を1兆分の1秒の時間分解能で逐次解析す
ることによって,その機構を詳細に解明し,薄膜内の光エネルギー移動
効率100%,錯体単体と比較した発光強度400倍を達成。



ところで、発光性希土類金属錯体は色再現度の高い次世代型有機ELデ
ィスプレーなどの発光材料としての応用が期待されている。これまで,
土類金属自身の欠点である非常に低い光吸収能力を克服するため,光
吸収能力の高い有機配位子をアンテナとして配位させ,アンテナからの
光エネルギー移動を利用することで高効率・強発光を実現してきた。


-----------------------------------------------------------------------------------------
しかし,希土類金属の配位構造の制御は非常に難しく,アンテナに使用
できる配位子の開発は限られている。そこで,実際に有機EL素子に使わ
れる発光層状態であるホスト-ゲスト薄膜に着目。   ホスト分子として高い
光吸収能力を持つ分子を用い,さらにホスト分子間,ホスト-ゲスト分子間
のエネルギー移動を高効率に起こさせることができれば, 極めて効率の
高いアンテナとして利用できると考えた。しかし, そのエネルギー移動機
構含む発光機構の詳細は不明で, ホスト-ゲスト膜の設計法は分かって
いなかった。 研究グループは,ゲスト分子として鮮やかな赤色発光を示す
三価ユウロピウムEu(III)錯体:Eu(hfa)3(TPPO)2を用い,様々なホスト分
子を用いたホスト-ゲスト薄膜を作製した。その結果,ホスト分子としてトリ
アジン誘導体:mT2Tを用いた場合に,錯体の配位子の直接励起より約
400倍強い発光を示すことを見出した。これは,高い光吸収能力を持つ数
多くのホスト分子から,発光体であるゲスト分子へ非常に高い効率でエネ
ルギー移動が起こっていることを示す。 さらに,時間分解発光分光で発
光過程を,過渡吸収分光で  非発光性の過渡種の時間変化を  実時間観
測し,ホスト分子励起後の全てのエネルギー移動経路とその時定数を逐
次的に明らかにした結果,このホスト-ゲスト薄膜では,全てのエネルギー
移動効率が約 100% であることが明らかになった。 またこの結果に基づ
き、アンテナとなるホスト分子の選択指針として、(1) 光励起一重項状態
(S1)-三重項状態(T1)間変換(項間交差)効率の最大化、(2) ホスト分子の
T1と有機配位子のT1間エネルギーマッチングの二点が高い発光効率を実
現するために必須であるということを示した。
【展望】
これまでに、Eu(III) 錯体をEL素子へと応用した例は数多くある一方、実
用化に及ぶ発光効率は達成されていない。 理想的な効率が得られない
要因を明らかにするためには、 その発光機構解明が不可欠です。 希土
類錯体を用いたホスト-ゲスト薄膜だけでなくこの手法は, 一般的な発光
性有機分子を用いた薄膜についても適応可能。 分子レベルで 明らかに
した発光機構をもとに 適切な材料選択を行なうことで,さらなる発光効率
化が期待される。 

※ 発光性希土類金属錯体とは、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ラン
タノイド15 元素の計 17 元素を希土類金属元素といいます。 この希土類
元素を中心として有機分子などの配位子が配位したものを希土類金属錯
体といい、なかでも鮮やかな発光を示す希土類金属錯体を 発光性希土
類金属錯体といいます。例えば、ユウロピウム(Eu)は赤色、テルビウム(
Tb) は緑色といったように、金属イオンに依存した鋭い発光スペクトルを
持つことが知られている。



渡辺 悦司/遠藤 順子/山田 耕作【著】
汚染水海洋放出の争点―トリチウムの危険性
緑風出版(2021/12発売)



福島原発汚染処理水とは

原 題:海洋におけるトリチウムの動態と海生生物への蓄積:
Behavior of Tritium in the Ocean and Marine Organisms
著 者:宮本霧子 公益財団法人海洋生物環境研究所 
掲載誌:海生研研報,第27号,71-80,2022       

         トリチウムの生物への蓄積

  基準となる数値の1つとして,放射性核種がヒトの健康に影響を
与え
る危険度・安全度の程度を表す定数として,線量係数Dose Coe-
ffi cient,単
位Sv / Bq)というものが放射性核種毎に勧告されている。
具体的には,1Bqの放射性核種を体内に取り込んだ以後50年間に亘り
全身へ負荷されると見積もられる内部被ばくの実効線量(預託実効
線量,committed effective dose,単位Sv)の大きさを表す定数である。
線量係数は1990年まで「実効線量当量(effective dose equivalent)」と
呼ばれていたもので,今でも「線量換算係数」,「実効線量係数」
などという言葉も使われている。

 トリチウムの線量係数は137Cs1000分の1と大変小さい。体内に
取り込んだ場合の影響が小さいことが動物実験などで見積もられて
おり,その結果環境中濃度の管理基準における放出可能な限度量が
大きく設定されている。そうなる原因は,トリチウムの放射線のエ
ネルギーが弱いことや半減期が短いこと,また体内に取り込まれた
後の体外への排泄が早いことによる。水や有機物として体内に取り
込まれたトリチウムは水素として体内で代謝され,一部は有機物へ
合成もされるが,呼吸,分解などの体内代謝で水や有機物として排
泄される。有機物になったトリチウムは水と比べれば排泄が遅くな
るので,その観測結果は一時的にしても体内での蓄積現象と解釈さ
れることもある。

  一方「トリチウム原子は化学反応としては基本的に水素原子とし
て同じように振る舞う」と既述したが,実は「基本的でない振る舞
い」もあり,それはトリチウム原子の質量数(原子核にある中性子
の個数)が3で,プロトン水素よりも重いことによる。水を電気分
解すると,電気化学反応の起こり易さの違いにより,水の同位体濃
縮が可能であることを前述したが,同じように有機物の合成化学反
応においてトリチウムの方がプロトン水素よりも化学結合反応を起
こしにくくなることが推定されよう。過去にこの命題を実証するた
め屋内の計画実験が行われてきたが,トリチウム水を生物に取り込
ませる実験であるため,大気中水蒸気との交換によるトリチウム濃
度の変動(主にはトリチウム水の蒸発による減少)を防止し,実験
期間中に一定濃度を保つための機密性の高い実験系を作ることが難
しく,初期の実験報告値はなかなか定まらなかった。また工業的に
トリチウムを取り扱う施設が周辺環境のモニタリングを行う場合に,
野外で採取した生物試料の有機物中トリチウム濃度が高いとの報告
を行って,物議を醸すことも多々あった。しかしモニタリング当事
者が生物試料を分析・測定する場合,分析室が大気水蒸気中トリチ
ウム濃度が高い施設敷地内にあることが多いため,生物試料を常温
に置いているうちに大気中のトリチウム水蒸気を吸収し,有機化合
物の交換し易い位置に化合した水素と置き換わる現象があることも,
今では理解されるようになった。ここでは数十年に亘る幾多の議論
の末に,IAEAが行ったプロジェクトから導かれた統一的であり最終
的ともいえる報告を紹介したい。

      カナダの観測データから

 カナダは中性子減速材と冷却水として重水素を多く含んだ重水を
利用することにより,235Uを濃縮しないウラン燃料を核分裂させる
CANDU(Canadian Deuterium Uranium) 炉を利用している。北米五大
湖の1つであるオンタリオ湖畔には,CANDU型の原子炉が多くあり
米国にも 電気を供給するほどの運転実績があるが,冷却水中に重
水素の中性子捕獲の核反応によりトリチウムが生成するので,周辺
環境のトリチウム濃度レベルは高く,モニタリングの実績も大きく,
またトリチウムの生物影響や線量評価についての研究も盛んである。
 1940年代から首都オタワの西200kmにあるチョークリバー研究所
でCANDU炉の開発を始めたが,サイト内にある直径約1kmのパーチ
湖には,廃棄物埋設地区から長期間トリチウムが流れ込み,湖水や
生態系のトリチウム濃度レベルが高い平衡状態にある従って湖を自
然界にある水槽のように利用して,水生生物のトリチウム取り込み
について観測データが得られた。
 IAEAではチェルノブイリ事故の後,各国が利用する放射性核種
環境移行モデルの斉一性の議論を行うために,1986年以来モデル相
互比較プロジェクトをいくつも行ってきた。最近では福島の事故に
ついても環境移行モデルの構築とパラメータ収集が行われ,世界で
利用できるモデルの高度化と精緻化の議論が続けられている。その
中で2003~2007年に行われたEMRAS(EnvironmentalModeling for Radi-
ation Safety
)プロジェクトでは,パーチ湖で得られた藻類や魚介類
のトリチウム取り込みデータについてモデルの議論がなされた。
 測定データとして,パーチ湖の湖水,湖底堆積物のトリチウム濃
度などが提供され,参加各国が自国のモデルを使って水生植物,淡
水アサリ,淡水魚などのトリチウム濃度を推測して,後に公開され
る実測値と比較して,モデルやパラメータの是非を議論するもので
ある。(IAEA, 2008)。 
 生物体内のトリチウムのうち,体液・細胞水などのトリチウム水
は,TFWT(Tissue Free Water Tritium,組織自由水トリチウム)
と表現することが多い。一方体内の有機物に結合しているトリチウ
ムはOBT(Organically Bound Tritium,有機結合型トリチウム)と
表現される。



 第5図に公開されたパーチ湖の実測値データをまとめて図示した
ものを示す。湖水のHTO濃度は4000~5000Bq/Lで高く,場所的には
ほぼ均一だが多少の季節変化があった。また水生植物のTFWT濃度は,
採取された場所の湖水中HTO濃度とほぼ同じであったが,枝葉が水
上にもある種類の水生植物は大気中の水蒸気も取り込むため,湖水
中HTO濃度よりも低い観測値もあった。水生動物であるアサリと魚
のTFWT濃度は類似しており,生物体全体に均一に分布していた。ま
た水生動物体の各部分のOBT濃度は5%以内で一致しており,採取時
間や場所での変化をほとんど示さずに,湖水のHTO濃度と同レベル
にあった。また湖底堆積物は,TFWTもOBTも低いレベルであること
が分かった。


 第6図に,水生植物と水生動物のTFWT濃度とOBT濃度の観測値の関
係を示したが,OBT濃度/TFWT濃度は0.5~0.8と整理ができ,OBTへ
のトリチウムの濃縮は起きていない。この観測の結果,水生生物の
TFWT濃度は水のHTO濃度と等しくなるが,OBT濃度はTFWT濃度を越え
ることがないばかりか,TFWT濃度より低くなることが示された。な
ぜ低くなるかは,質量数が大きい同位体の方が化学反応を起こしに
くいということから,トリチウムが生化学反応過程における同位体
効果により,OBTになりにくい結果と説明されている。

 パーチ湖の観測結果から下記のことが推定された。水生生物のTF
WT
濃度は,生物の水代謝反応によって,生物が留まる水塊のHTO
度と等しくなる。しかし移動する生物は,移動先の水塊のHTO濃度に
等しくなるまで一定時間かかるので,水塊のHTO濃度と異なるTFWT
濃度を持つ期間がある。それはOBT濃度についても同じことが起こ
り,生物が留まる水塊のHTO濃度との大小関係は流動的である。ただ
し一定時間が過ぎ,平衡状態になるときは水塊のHTO濃度を越える
ことはない。
                                              この項つづく


きらりと光るDIY 電気ドリルでバフ研磨
最近のDIY器機資材にちょっとした日常革命が進行している。最近、
シェ
イドのパンチング・ホール加工でそれないり効果を発揮して、かな
りの強風に耐え、70%遮光と通気ができるようになっての、防災
窓シャッタなどのの塗装を行う予定で下調べ。資材と工具器機が簡
単に入手できることがわかった。

風蕭々と碧いの時代


John Lennon Imagine

 J-POPの系譜を探る2008年代】



ネオビジネスマン考 ④ わたしの周辺は価値ある仕事があふれている。

● 今夜の寸評:(いまを一声に託す)  待ったなし、大季候変動
        例えば、高機動環境グローカル自衛隊の設立とか

※ 思えば、1995年をさかいとして次期事業創生と大規模気候変動対
   策を主要課題の調査研究に入る。
いってみれば、人類の肥大化す
  した欲望を眠らせ慰撫する思索をテーマとする一冊の本を購読し
  たことを思い起こし、相撲でいうところの徳俵ぎりぎりまで追い
  詰められ必死に堪え凌ぐ絵を遊体分離し、覗き込む展開図が頭を
  よぎる。

 

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