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オバマ、健保改革取り組みへ 46 million uninsured people

2009-06-16 | 米国・EU動向
2009年6月16日(火)

いよいよ、オバマ米大統領が、大統領選挙で公約した国民健康保険改革に、本格的に乗り出す。約1兆ドルと予想される医療保険制度改革コストの財源として、今後10年間に高齢者医療保険(Medicare)、低所得者医療保険(Medicaid)その他のプログラムへの支出を3130億ドル追加削減することを提案した。この新たな支出削減により、2月の予算教書で示した6350億ドルの医療保険準備金への拠出への積みあげを図ろうとする意欲的な計画である。

前回の、Bill Clintonの全面的な医療保険制度改革を粉砕したのは、共和党の後ろで強い反対勢力を結集した、医者の団体(American Medical Association)と製薬業界であった。オバマ大統領は、まず医師を味方につけるために、シカゴで行われたAMAの大会に出席して、改革への意欲を、熱ぽく訴えた。「現在全米で、無保険者が、4600万人もいる状態を解消する」のが目的であると説明した上で、一方、医師団体が強く求める、医療事故補償の上限設定については、反対を表明した。

医師団体からは、「強欲な弁護士(voracious trial lawyers)が、医療過誤を食い物にしていて法外な補償を患者に求めさせてくる。だから、安全をとって不必要な検査を行い、他の診療科にも意見を聞き(referrals)、長く入院をさせてしまうので、医療費がうなぎのぼりになるのは当たり前」という声が上がっている。これに対して、大統領は、「それは大問題だとは思うが、本当の医療過誤(malpractice)の犠牲者の補償にも上限(cap)をはめることは公平性を欠く。患者の安全、医師の治療への専念、事故後の公平な裁定を担保する仕組みを考えよう」と訴えた。

ここで、大統領は、「結果がすべてという医療システムを構築したいと」話しかけ、医者たちが、最後に大拍手を送った名言で締めくくったのである:"You did not enter this profession to be bean-counters and paper-pushers. You entered this profession to be healers -- and that's what our health care system should let you be." (Bean-counterとは、一銭一厘の金を数えながら一生を送る会計担当、paper-pusherとは、書類作成と整理をするばかりの事務員。)

ところで、オバマ大統領の、医療制度改革は、民間保険制度に対して、公的な健康保険制度を導入して、競争させることによって、質を向上させ、政府支出と個人負担を軽減しようとするものであり、いわば「官」「民」競合を起こさせるという、今までの民営化路線の逆を行こうとしている。2008年の新自由主義(neo-liberaism)崩壊後の、米国の新たな挑戦である。前回の民主党Bill Clinton元大統領時代に、健康保険改革は、共和党を押したてた医師会・製薬業界の連合軍に粉砕され、その苦汁を飲まされ最も屈辱感を味わった人こそがHilary Clinton現国務長官である。