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オバマ、ナチ収容所訪問 The Ultimate Rebuke

2009-06-06 | 米国・EU動向
2009年6月6日(土)

オバマ大統領は、サウジとエジプトを訪問し、アラブ世界とりわけモスレム教徒との和解と、イスラエルとパレスチナの「二国建設構想」(two-state solution)に基づく平和の道を訴えたあと、ドイツに移動して、ドイツ文化の花開いた地でもあるワイマールに近い、Buchenwaldにある、ナチのユダヤ人強制収容所の跡を訪問した。

オバマ大統領は、メルケル首相と、父をこの収容所で失ったノーベル平和賞受賞者Elie Wieselとともに三人で、追悼記念碑にバラを献花した。その際大統領は、「今日なお、ホロコーストの存在そのものを否定する人々がいるが、この収容所の跡こそが、そのような、存在を否定したり、ホロコーストそのものを矮小化してしまおうとする人への、「究極の反論」 “ultimate rebuke” となる。 私は今日見たことを一生忘れない」と演説した。

オバマ大統領が、この地を選んだ理由はいまひとつあった、この収容所が連合軍によって解放された際に、同大統領の「大叔父」(great uncle)が参加していたのである。こうしたエピソードを積み重ねながら、オバマ大統領は、イスラエルに対する配慮を忘れていないことを、イスラエルのユダヤ人にも、米国内のユダヤ人にメッセージを送っているのである。

このゲーテとシラーというドイツを代表する芸術家の生家が近いBuchenwaldにあるナチ強制収容所で殺されたユダヤ人は、56,000にとされている。
ホロコーストで殺されたユダヤ人の総数は600万人、ユダヤ人以外に劣等民族・障害者・政治犯の烙印を押されて殺された人の数を入れると1,000万人に達するとする説が有力である。

メルケル首相は、この日再発防止への誓いの言葉ともに、“I bow before all the victims.”(すべての犠牲者にこうべをたれてたい)と述べたのである。
一方、オバマ大統領の心には、第二次世界大戦末期に、無防備の町ドレスデンに対して、英米空軍が無差別爆撃を、10万人にも達する市民を殺傷するためにのみ行われたことが、重くのしかかっている。

オバマ大統領は、土曜日は、フランス政府が用意している、北フランスノルマンディーで、行われる上陸作戦の犠牲者の慰霊祭に出席する。彼らは歴史を風化させず歴史から学ぶ姿勢を守り続けている。