ピピのシネマな日々:吟遊旅人のつれづれ

歌って踊れる図書館司書の映画三昧の日々を綴ります。たまに読書日記も。2007年3月以前の映画日記はHPに掲載。

増補版には写真が増えた

2004年07月16日 | 読書
 ようやく『敗北を抱きしめて 増補版』上巻読了。こんなにおもしろい歴史書も珍しい。これは超お奨め品だ。

 bk1にはたくさんの書評がついているので、もういまさらわたしの分は投稿しない。

 この本は翻訳が大変だったろうと思う。日本語文献をよくぞこれだけ読みこなしたとジョン・ダワーに対する畏敬の念を覚えると同時に、日本語文献を英語で引用してある文章を元の日本語に翻訳(というか、戻す)作業はかなり骨が折れたに違いない、と訳者たちにも敬意を表しておきたい。

 なにしろ出典が多いし、入手しにくい文献もけっこうあるだろう。それをいちいち原典にあたって元の文章を見つけ出すなんて、至難の業だ。

 徹底的にサブカルチャー資料をあたって社会史を下から積み上げた著者の労力は大変なものだし、単に資料を大量に渉猟したというだけではなく、歴史家の視点がすぐれている。偏りなく社会各層に目をやり、イデオロギーの対立点は鮮明に描いてみせるし、何より文章が実によみやすくおもしろい。訳もこなれている。

 わたしなんて、読んでいてなんども胸が詰まって涙が出そうにもなった。かといって決して感傷に流れるといった筆致でもないのだ。こういう歴史書も珍しい。
 
 で、下巻を読む前にちょっと寄り道して漫画を読もう。
楳図かずおの『洗礼』。
わたしより先に次男が1,2巻を読んでしまったのだが、「続きを買ってあげようか?」と親切に申し出てやったのに、そっけなく「いらん」だって。怖すぎたのかしらん。



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