日々の恐怖 6月13日 鎌倉(3)
施工管理をしていた俺としては、竣工日が延びると経費が増えてしまう為に困り果て、施主に携帯で連絡した。
施主は工事中、近くに住む親戚のうちに身を寄せていた。
施主自身も部屋の存在すら知らなかったために、非常に驚いていた。
本家のおじいさんに電話して聞いていたが、依然としてなにも判明しなかった。
職人が手をつけないので、俺が一人でそこを解体することになった。
壁を壊し中には入れるようにして、手を合わせてから中にはいった。
まずは箱を取り出し、外に出る。
箱は埃をぬぐうと、御札で厳重に封印してあり、黒い漆塗りの重厚な物だった。
施主に中身を確認してもらう。
「 埋蔵金だったりね。」
などと冗談を言うのだが、明らかにまがまがしいような箱であり、誰も笑っていなかった。
箱を開けると、中には雛人形のような烏帽子をかぶった人形が一体と、紙で巻かれた髪の毛の束があった。
髪の毛の主は、まともな死に方をしていないだろうことは想像に安い。
その頃から俺は、ものすごい後悔をしていた。
“ なんでこんな仕事をうけてしまったのだろう?”
般若の面を慎重にはずし、残りの壁を撤去した。
床の解体に取り掛かる。
床をバールではずして、床下を覗き込む。
床下にはいった時に見た、風呂の基礎の様なものの正体は井戸だった。
古井戸がぽっかりと穴を開けている。
井戸はかれていて、水はなかった。
リングに出てくるような、人が二人はいって作業できるような大きなものではなく、人が一人はいってしゃがむと、ほとんど動けなくなるような大きさだった。
施主に状況を説明すると、井戸中を調査して欲しいとのことだった。
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